Photo:Shota Kikuchi | Styling:Hisataka Takezaki | Hair&Make-up:Masaki Takahashi | Model:Kroi | Text:Yuzo Takeishi | Edit:Atsushi Hasebe、Nobuyuki Shigetake
内田怜央(ボーカル/ギター)、長谷部悠生(ギター)、関将典(ベース)、益田英知(ドラム)、千葉大樹(キーボード)の5人で構成されるKroiは、2018年にファーストシングル”Suck a Lemmon”でデビュー。翌2019年にはファーストEP『Polyester』を発表し、早くも『SUMMER SONIC 2019』に出演。同年12月にはセカンドシングル”Fire Brain”をリリースし、iTunes StoreのR&B/ソウルランキングでトップ10入りを果たすなど、一躍注目を集めた。去る2020年5月にはセカンドEP『hub』をリリースしたばかり。結成からわずか2年。その勢いはとどまるところを知らない。
— 結成の経緯から聞きたいのですが、そもそも内田さんと長谷部さんが同級生だったことがスタートですよね?
内田怜央(以下、内田):中学、高校がいっしょで、そのときはしょうもないコピーを演ってましたね(笑)。文化祭とかでバンドを組んでいたくらいで、別に音楽を演っていなかったら絡んでなかっただろうとは思うけど、次第に好きな音楽が近くなって、結局「いっしょにやっていこうか」みたいな感じになりましたね。
— その後、Instagramで関さんと長谷部さんがつながったということですが。
長谷部悠生(以下、長谷部):演奏をコピーした動画にハッシュタグを付けてInstagramに上げていたらつながって、フォローし合うようになったんです。
関将典(以下、関):SNSでは知っていたけど、実際にどんな人なのかは知らないし、5歳くらい離れているので、当然、絡む機会もなかったんですよ。そうしたらあるとき「ウチのバンドのベースが抜けることになったから弾いてもらえませんか?」っていうDMが届いて。ちょうど、大学が同じだった益田と2人で音楽をやろうって話をしていたときだったから「ドラムもいっしょならいいよ」って返事をしたら、ドラムも正規メンバーがいなかったらしく「じゃあいいね」ってことで。実際に集まって話してみたら、音楽の方向性とか聴いているものもかなり似通っていたので、意気投合したって感じですね。
— 知り合うきっかけになったハッシュタグに付けていたバンドは何だったのですか?
関:自分はそこまでではないんですけど、内田と長谷部の2人はRed Hot Chili Peppers(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)が好きで、自分がたまたま上げたそのコピー動画を見つけてフォローされた感じなので、基本はレッチリなのかな。
— Kroiは内田さんと長谷部さんが高校のときに組んでいたバンドの延長線上にあるイメージですか?
内田:もともとは高校のときに組んでいたメンバーにプラスしてやろうと考えていたんですけど、この2人と出会った時点で、そのときやっていた音楽性じゃなくてもできると思いました。むしろ、本当にやりたかったことができるんじゃないかと思って。そこからシフトチェンジして、新たにKroiっていうバンドを作ろうと考えたんです。
— それまではどういった音楽性のバンドだったのですか?
関:オレと益田は大学の学部が同じっていうだけで、それほど深い仲でもなかったんです。むしろ卒業後に連絡を取るようになって、益田がドラムをやっているのは知っていたから「2人でインストの音楽を作っていけたらいいね」っていうくらいの漠然としたものでした。内田たちは、今もそうなんですけど、そのときにハマっているものを大事にしているので……知り合った頃はサイケロックとか、そういうテイスト?
内田:ん〜。なんかよくわからないロックだった(笑)。でもたぶん、今よりクリエイションは尖ってたかな。
— 千葉さんは『Polyester』に関わったことがきっかけで加入したのですよね?
千葉:そうです。
— キーボードが入ることによるサウンドの広がりや厚みを重視したためですか?
関:メンバーを増やす想定で千葉と絡んだわけではないんです。そもそも、マネージャーの同居人がミックスやマスタリングの作業ができることは知っていたので、『Polyester』を作るときにお願いしてみたら向こうも「やりたい」って言ってくれて。じゃあ、その流れで鍵盤も入れてもらおうかと思って弾いてもらったらめちゃくちゃ上手い。それならちょっとライブも出てみようか(笑)ってことでサポートで何度か出てもらったんです。それまでは音源に合わせて演奏する同期演奏の曲も何曲かあったんですけど、できる限りなくしたいとは結成当初から考えていたんですよ。やるからにはライブ感、生感を伝えたいと思っているので。千葉が入ったことでそれを実現できて、そのスタイルを自分たちも楽しめたので、これはぜひ入ってもらおうと。それに、千葉は音楽以外にも、グラフィックデザインの技術もあって、その面でもウチのバンドで活躍してくれている……もう、入れない手はないというか(笑)。
千葉:お買い得。
関:お買い得(笑)だったなっていう。
— 千葉さんは、Kroi加入前はどういった活動を?
千葉:音楽を本業にしていたわけではないです。昔からピアノをやっていた延長でトラックを作ったりしていましたね。今のマネージャーが別でマネージメントしている他のアーティストの曲をアレンジしたり。でも、バンドでは一度もライブに出たことはなくてKroiが初めて。小学生の頃のピアノ発表会ぶりに(笑)ステージに上がった感じですね。
— バンドをやりたいとは考えていたのですか?
千葉:全然なかったです。
全員:(笑)。
千葉:本当に偶然。
長谷部:アンチ・バンドマン……。
千葉:そうね。あんまりバンドが好きじゃなかったんで。「バンドってダサくないか?」って(笑)。
全員:(笑)。
— 加入しようと思った決め手は?
千葉:Kroiは知っていたんですけど曲は全然聴いていなかったんですよ。たまたま『Polyester』に関わることになったときに改めてちゃんと聴いたら「あ、カッコいいな」って気持ちになって。会ってみたらフィーリングも合ったので、これならいっしょにやっても面白そうだと思って、入らせていただいた感じですね。
— 5月にリリースされた『hub』はこれまでの作品とは印象が変わり、よりヘビーファンクなサウンドになっていますが、こうした曲調になった理由を教えてください。
内田:”Network”という曲を先行で配信して、その曲を入れる前提で『hub』を作り始めたんです。だから”Network”の世界観をちゃんと通しつつ、いろんな側面を見せようと考えたら、ああいったアレンジになったんです。
— 『hub』というタイトルに込めた意味について教えてください。
内田:それは益田さんが。千葉さんと長谷部とマネージャーが住んでいる家にみんなで集まって「EPのタイトルどうする?」って話をしていたんですけど、なかなか煮詰まらなかったんだよね。
関:深夜まで話してたら益田から「1つあるんだよね」って。彼は普段システムエンジニアをやってるんですけど、その方面の知識から掘り出して”hub”っていう言葉を出してくれて。
益田英知(以下、益田):GitHub(ギットハブ)っていう、システムをバージョン管理できるサービスがあるんです。いろんなプログラミング言語をGitHubっていうプラットフォームにまとめられるのが、今回の『hub』に合っているなって。EPの曲にはヒップホップの要素もあればファンクもあり、R&Bとかソウルとかいろんなジャンルが感じられるので、そうした音楽ジャンルを知ることができる中継地点としての作品になればいいと思って、この言葉を提案したんです。
関:それ以外にも、例えばケーブルをまとめるハブだったり、パブのHUBとかもあるじゃないですか。そういった、いろんな人やいろんな方面から集まったものが収束して、また逆に分岐していくみたいな方向性が、今回収録した曲のキャラクターに合っていたし、益田の提案ともガチッとハマりましたよね。
最新作の『hub』はもちろん、Kroiが放つサウンドは「すべての色を混ぜると”黒”になる」という意図を込めたバンド名が示すように、ブラックミュージックを軸とした多様な音楽ジャンルをブレンドしつつも、「ブラックミュージックからの影響」というひと言では決して片付けられない独創性に満ちている。いったい彼らは、どういった音楽をスタンダードと考えながらKroiサウンドを構築しているのだろう。
— この特集はLeeの『101』にちなんで”スタンダード”をテーマにしているのですが、Kroiにとってのスタンダードな音楽とは何ですか?
関:自分たちが結成当初から言っているのが、ジャンルっていう型にハマらないこと。そのときそのときでカッコいいと思うことだったり、自分たちが刺激を受けるものだったりを表現できれば、自分たち”らしさ”が自ずと出てくるっていう考えで活動しています。だから”ジャンルを決めない”っていうのが、自分たちのスタンダードなのかなぁっていうのは思いますね。
内田:”スタンダードを外れることがスタンダード”っていうか。スタンダードであるものを利用して、スタンダードじゃないものを作り出していく。
関:スタンダードがあるからスタンダードじゃないことができるみたいな感じですね。
— つまり、新たなスタンダードを作り出したいという気持ちがあると?
内田:そうですね。しかも、そのスタンスをやめないっていう……。だからね、オレらもいつハードロックとか演り始めるかわからないし。
関:急にメタルとか演ってるかもしれない(笑)。
— でも、そういった可能性もなきにしもあらずだと?
関:どの音楽ジャンル……音楽に限らないですけれど、いいものだからこそ生きている、死んでいないカルチャーになっているわけじゃないですか。服でも何でも同じだと思いますが、好きな人が一定数いるわけですからね。だから音楽の良さはそれぞれのジャンルに必ずあって、それを自分たちが把握してカッコいいと思ったら演りたくなるし、演ると思うんですよね。そういった方向性がブレずに、今後も活動していくんだと思います。
— では、今はR&Bだったり、ファンクだったりというジャンルが好きだから、こういったサウンドになっているのですか?
内田:まぁ、でもオレらは全員、そこが好きなジャンルなので。
— それはメンバー全員共通ですか?
内田:そうですね。そのエッセンスが消えたらスゴいけどね(笑)。
千葉:消した曲も作ってみる?
内田:そのときは大いに注目していただいて(笑)。
— その可能性も楽しみにしつつ、普段のファッションについて話を聞きたいのですが、ステージと日常のファッションは意識して変えますか?
内田:最初はわりと考えてたけど、もう全然考えなくなっちゃったよね。お互いに「コイツはこういう服が好きだから」みたいなのもわかってるし。別にキャラクターがかぶるわけじゃないし、別にかぶってもいいかなっていう感じになってきているので。だから日常と同じ感じでステージに出てますね。
関:ライブでお客さんに「こうノらないとダメだよ」っていうのは絶対に言いたくなくて、好きなように楽しんでほしいので「だからオレたちも」っていう感覚はありますね。バンドが自由気ままに演っていればお客さんも自由にノれるし、聴けるかなって。それに、バンドが服を楽しんでいるところも、お客さんにとってプラスになっているかなと思うんです。
— それぞれ、服の好みはどういった感じですか?
長谷部:益田さんはずっとKroiのTシャツ着てる。
内田:益田さんだけ自分たちのバンドTシャツを着る習性があって、それはどうにかしなきゃいけないんじゃないかっていう……。
益田:広報担当ですよ。
関:それこそ千葉はおもしろいプリントのTシャツを着たりもするよね。
千葉:そうですね。変わったのが好き。悠生はアメカジ?
長谷部:古着が好きですね。
関:自分はミリタリーのデッドストックが好きなので、茶色とか緑とか、暗い感じのカラーが基本的には多いですね。原色とかはあんまり着ない。
内田:オレはグラフィック大好き。
関:気持ち悪い写真とかグラフィックが入ってるファッション、めっちゃ好きだもんね(笑)。
— 色も派手なほうが好きですか?
内田:そうですね。1つ1つのアイテムが好きであまりコーディネートを気にしないんですよ。だから最終的に外に出たらヤバい人……みたいなときはよくあります。
益田:オレは普段スケボーとかもやるので、スケーターファッションのカルチャーとかは格好良いなと思います。
関:益田はわりとストリート系が多い。ラッパーとかB-BOYも感じるような太めのパンツだったり、オーバーサイズのホッケーシャツを着てたりとか。
— デニムを穿くことは?
関:穿きます。
千葉:めっちゃ穿きます。
関:Leeって、いろんな年代の人が穿いているイメージがありますね。やっぱり、スタンダードっていうか。
— 今日『101』を穿いてみていかがでしたか?
長谷部:ストレートは何にでも合わせられますからね。あのシルエットが一番。
関:シューズもトップスも、何にでも合わせやすいですよね。
長谷部:ストレートで自分に合うのを探すのって難しいけれど、ピタッと合うのを見つけたときはすごくうれしい。
— 先ほど「スタンダードから外れることがスタンダード」という話がありましたが、個々の音楽の趣味はどんなものですか?
内田:益田さんはガッツリだよね?
益田:ブルースが好きなんですよ。なかでもJohnny Winter(ジョニー・ウィンター)が好きで……ドラマーじゃねぇのかよっていう。
内田:(笑)。
関:ドラマーなのにJohnny Winterと同じ、ヴィンテージのファイヤーバードを買うっていう。
— Johnny Winterにハマったきっかけは何ですか?
益田:YouTubeを見ていたら”Key to the Highway”のライブ映像が流れたんですけど、がなり声にビビッときた感じですね。そこから、ブルースの自由さとか、感情を音で表現できるところに魅力を感じて聴きまくりました。
内田:それを、ドラムのプレイに?
益田:活か……す。
内田:活かして?
益田:……ます(笑)。
関:ドラマーなのにInstagramにギター弾いてる動画しか上げてないんですよ。
益田:しかも好きすぎて、リゾネーターギターも買っちゃって(笑)。
千葉:子どもの頃に聴いていた音楽って、一番グッとくるとは最近思いますね。NHKでかかっていた曲を聴くと泣きたくなるじゃないですか。
長谷部:昨日話してたのは……”はたらくくるま”?
千葉:「”はたらくくるま”がスタンダードですね」って言うの? さすがにヤバくない?
全員:(笑)。
— みなさんの世代でその手の音楽っていうと?
千葉:『おかあさんといっしょ』とか。この前、すごくオシャレな曲があってビックリしたんだよ! 童謡って攻めてるじゃないですか。ビートとか……童謡のビート。それにスタンダードと言えばMichael Jackson(マイケル・ジャクソン)。他のアーティストだと影響を感じる人がわかるんですけど、彼の曲っていろんなところから取り入れた結果あの形になっているので「マイケルっぽい」っていうのがないですよね。
長谷部:自分が音楽を演るきっかけになったのはレッチリですね。ギターのJohn Frusciante(ジョン・フルシアンテ)がすごく好きで……でも、ブルースなんですかね。それと、踊れる音楽なのかなぁ……。
内田:全部違うじゃん(笑)。
長谷部:ミクスチャーが自分のスタンダードかなと思います(笑)。
関:大学のときに楽器屋で働いていて、そこの上司からダンボールいっぱいのCDを借りたんですよ。ファンクとかR&B、ディスコの音源が入ってて、そこで開眼した感じはありますね。パッションだったり、今のポップスを聴いても感じられないようないなたい音とか。そのときの衝撃は今もずっと続いていて、自分のプレイスタイルに影響していますよね。さすがにスパンコールの衣装とかは着ないですけど、そういった姿はカッコいいと思うし、音楽的にも自分のスタンダードになっていますね。
内田:生きかたとして大事にしているのは、”クロスオーバー × 閃き”みたいなところ。学生のとき、アートクロスオーバーっていう授業があったんですけど、美術の教師がその授業で「アートは完全にオリジナルなものは生まれない」って言ってたんですよ。「今、オリジナルとして出されていくものは、昔の音楽と昔の音楽とか、昔の芸術の様式とかを掛け合わせてできたもの」っていうのを聞いて、それからは、クロスオーバーっていうもの、先人たちのやっていたことをしっかり成長させていくことを大事にしようと思ってますね。だから、ルーツがあるものが好き。服でも、音楽でも、ルーツをしっかりとごちゃ混ぜにして、自分のなかで吸収していくのがいいんじゃないかな。
— 以前とは環境がガラッと変わってバンドの活動に影響も出ていると思いますが、今後やろうと考えていることはありますか?
関:そもそもコロナだからって萎えてはいないんですよ。今だからできることもいろいろあると思っているので。今だからできるコンテンツを配信したり、お客さんの楽しませ方を考えたり……。8月以降には配信ライブも考えていますが、それも、できる限り普通じゃない、他とは差をつけた新しい方法でやりたいと模索しています。合間合間には音源を出したり、MVも制作したり、この期間に周りとどれだけ差をつけられるかが重要になるんじゃないかと。足踏みしているアーティストもいると思うけど、できることはいくらでもありますから。今は創意工夫が楽しいですね。「こうしてみようか」っていうアイデアがいっぱいあるので。
配信:https://linkco.re/TB2b3UQt
CD:https://kroi.stores.jp/items/5eb6be9d55fa031abd6358b0
価格:1,800円(税込)
■収録曲
01.Mr.Foundation
02.Interlude
03.Bug
04.Network
05.Shincha
06.Mr.Foundation(Instrumental)※CD ONLY
07.Bug(Instrumental)※CD ONLY
08.Network(Instrumental)※CD ONLY
09.Shincha(Instrumental)※CD ONLY
アメリカを代表する老舗デニムブランド、Leeのアイコンであり、最もスタンダードなモデル。往年のライダースジーンズを現代風にアレンジした日本製の本格モデルは、デニム本来の質実剛健な無骨さを持ちながら、合わせる洋服を選ばない高い汎用性が特徴。
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