Lee『101』とPolaris – ”光”を放ち続けるデビュー20周年のアーティストが語るスタンダード –

by Nobuyuki Shigetake

新進気鋭なラグジュアリー・ストリートの波やインディペンデントブランド、そしてメディアに上がるスタイルサンプルの数々など、さまざまな価値観の混在するなかに身を置く僕らは、たまに何を基準に服を選べばいいかわからなくなることがある。それは服だけでなく、音楽や食べ物においても同様だ。
本特集では、Lee(リー)が開発したデニムの元祖モデル『101』を、スタンダードと所縁のある多様なミュージシャンに着こなしてもらうとともに、”スタンダード”について、彼らなりの記憶を辿りながら再考。
今回は、2020年に結成20周年を迎えるロックバンド、Polaris(ポラリス)のオオヤユウスケが登場。この節目に先駆けて2019年12月にリリースしたEP”光”では、かつてのPolarisを想起させる10分超のナンバーを収録。しかも全篇を通じて聴かれる、”光が射す”ような穏やかで温かみのあるサウンドは、アニバーサリーのイントロダクションにふさわしい内容となっている。
このEPの制作背景や自身のバックグラウンドについて話を聞くと、どうやらPolarisサウンドのスタンダードは、彼自身の音楽に対する”スタンス”が大きく影響しているようだ。
※本特集内に掲載されている商品価格は、全て税抜価格となります。

Photo:Shota Kikuchi | Styling:Hisataka Takezaki | Hair&Make-up:Masaki Takahashi | Model:Polaris | Text:Yuzo Takeishi | Edit:Atsushi Hasebe、Nobuyuki Shigetake

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EP”光”が、変化の始まりになればいい

2000年、オオヤユウスケ(ボーカル、ギター)と、フィッシュマンズのメンバーでもある柏原譲(ベース)によって結成されたPolaris。浮遊感のあるダウンテンポなサウンドを持ち味としながら、翌2001年にミニアルバム『Polaris』でデビューし、その後は数々の野外フェスティバルにも出演することで支持を獲得していった。2007年夏頃に突如活動を休止するものの、2012年、シングル”光る音”で6年ぶりに活動を再開。以後、着実に作品を発表し続け、ついに2020年、結成から20年を迎えることとなった。

— 結成20周年については、いつ頃から意識し始めましたか?

オオヤユウスケ(以下、オオヤ):結構前から意識していました。10周年のときは活動を休止していたし、15周年のときは再始動してそれほど時間が経っていなかったので、さすがに周年を謳うのもおかしい気がしたので何もしなかったんです。そして、気がついたら20周年が近づいていて「そんなに長いことやってきたんだな」っていうのを改めて感じました。数年前に事務所を移籍した頃から20周年をイメージし始めて、2019年はその助走になるような活動をしていましたね。

オオヤユウスケ
幼少期からクラシック音楽を学び、チェロ、ピアノ、ギター、電子楽器などを習得。中学時代より作曲を開始。大学卒業後、1997年にLaB LIFe名義でバンドとしてプロデビュー。2000年に柏原譲とPolarisを結成。2005年にはハナレグミの永積崇、クラムボンの原田郁子とohana(オハナ)を結成。翌年にアルバム『オハナ百景』リリース。2007年以降はソロ活動も始め、2010年にソロプロジェクト、SPENCERをスタート。翌年にアルバム『SPENCER』をリリース。ソロでは、数多くのアーティストとの共演、ヨーロッパやアジアなど海外公演も多数行う。

— 20周年への布石ということで”光”をリリースしましたが、この制作を考えたのはいつ頃ですか?

オオヤ:ここしばらくは3人編成でライブをやっていたんですけど、Polarisの楽曲って鍵盤が入ったり、弦が入ったりするアレンジがあるので、3ピースだとどうしても演れない曲が出てくるんですよ。そこで2019年の夏からjizue(ジズー)の片木希依ちゃんにキーボードで入ってもらって、過去の曲も掘り起こしながらアレンジを進めていたのですが、せっかくならそのメンバーで新曲を作ってみようと考えたのが大きなきっかけですね。

— ということは、今後のライブでは過去の曲も新しいアレンジで演奏されるのですか?

オオヤ:そうですね。時間も経っているので、同じことをやるのは無理……というか、懐古的になっても仕方がないので、今までの楽曲を今の感覚で聴いてもらえるようにしようと。それにライブって、つい同じような楽曲を選んで、セットリストが決まってきちゃうところもあるので、それも一度リセットして……っていう作業をこの半年くらい続けています。

AMERICAN RIDERS 101Z(LM5101-400) 12,000円(Lee Japan TEL:0120-026-101)、O -のフリースプルオーバー 24,000円(OVERRIVER TEL:03-6434-9494)、EYEVAN 7285のメガネ 40,000円(EYEVAN 7285 TOKYO TEL:03-3409-7285)、ptarmiganのシューズ 29,000円(face co.ltd TEL:03-5738-1872)

— そうした作業を行うなかでの今回のEPですが、音作りなど、これまでと変わったと感じる点はありますか?

オオヤ:変化の始まりになればいいと思っています。新しいドラマー(川上優)は僕らより若い世代ですが、3人でしばらく活動しているうちに1つのバンドの形になって、そこに希依ちゃんも加わった。せっかくそういうメンバーで作るんだから、そのメンバーでやる意味のある内容にしようという感じですね。でも最初は、新曲を作って11月のライブで披露するだけのつもりだったんですけど、「せっかくなら録音しちゃおうか」という話になってCD化したんです。

— この”光”をベースにして、2020年にアルバムをリリースすると思うのですが、方向性は決まっているのでしょうか?

オオヤ:曲作りを行っている最中なので、まだイメージの段階です。ただ、今回のメンバーでライブをやったり、実際に音を合わせてみたりすると「こういうことをやってみたい」とか、自然にアイデアが出てくるんですよ。だからノスタルジックな20年目のアルバムではなく、未来を大切にした内容になるでしょうね。

— タイトルトラックの”光”は、ひさしぶりに10分を超える曲になりましたね。

オオヤ:たしかにひさしぶりですね。2018年に出した『天体』の楽曲は結構コンパクトだったし、ライブでも、昔の長尺曲をあえてコンパクトなサイズにしてメドレーっぽく演奏していましたから。でも、2019年4月のツアーで“光る音”を演ったとき、「ちょっと濁っていたり、ダークな雰囲気だったり、明快すぎるメッセージは存在しない曲もPolarisの大事な部分なのかも」と感じたんです。それで、新曲を作るんだったら一度コンパクトにまとめるのをやめて、くどい曲を作ろうかと(笑)。

— これまでも”光と影”や”光と音”など、節目節目で”光”という言葉が使われていますが、これは意識しているのですか?

オオヤ:音楽でも歌詞でも、表現って明るい部分もあれば暗い部分もあって、いろんな伝え方があると思うんです。”光”ってその両面を含んだ言葉だと思うし、一方では重要なタイミングで出している曲なので”ここから始まる”イメージもある。それに、アルバムの楽曲は意味を持たせすぎると聴いたときに重くなるけど、今回はEPなので、あえてテーマを設けて作った感じです。長尺にしてみようとか、Polarisらしいダウンテンポの楽曲にしようとか、コンセプトありきで作り始めました。やっぱり、”光”という言葉が入った楽曲が出るタイミングって節目なんですよね。Polarisを結成したときに作ったのが”光と影”ですが、バンドの結成は自分にとって衝撃的だったし、再始動したときには”光る音”を出しましたから。だから”光”って、自分のなかでの指針なんだと思いますね。