Photo:Shota Kikuchi | Styling:Hisataka Takezaki | Hair&Make-up:Masaki Takahashi | Model:Opus Inn | Text:Yuzo Takeishi | Edit:Atsushi Hasebe
2017年、ボーカルのHoriuchi MishioとギターのNagata Makotoによって結成されたOpus Innは、同年12月に1st EP『Time Gone By』をリリース。その1年後には早くも2nd EP『Time Rolls On』を、続く2019年6月には『Time Stand Still』をそれぞれ発表した。いずれも、エレクトロニカを融合しつつ、ゆったりとしたグルーヴが心地よいサウンドを聴かせてくれるのみならず、ジャケットのアートワークには永井博氏のイラストを採用し、新旧ポップミュージックのおいしいところをパッケージングした作品に仕上がっている。この、80’s的でもあり現代的でもある不思議なスタイルは、一体、どのようなバックグラウンドから生まれたのだろう。
— Opus Inn結成の経緯について教えてください。
Horiuchi Mishio(以下Horiuchi):以前はお互いに別々のバンドで活動していたんです。自分はギターとボーカル、Nagataはギターで。その当時、ふたりとも神戸の同じシェアハウスに住んでいて、たまに遊んだりもしていたのですが、たまたま同じ日に自分もNagataもバンドを脱退したんですよ。そのときに「なんかやろうか」みたいな感じで始まったんです。
— 当時、ふたりがやっていたバンドはどういった音楽性でしたか?
Horiuchi:今とは全然違いますね。インディロックとかサイケデリック的な音楽で、結構バンドっぽい音作りでしたね。
Nagata Makoto(以下Nagata):僕の方は真逆。”ポップスの王道”みたいなバンドで、ただギターを弾いていただけでした。
— ユニットを結成して、今のような音楽性に固まった経緯について教えてください。
Nagata:一緒にやり始めたのは2016年。最初はひたすらいろんなジャンルの曲を作っていたんです。特に発表することもなく、遊びの延長線上みたいな感じでしばらくはファンクとかR&B的な楽曲を作っていたのですが、その後に”Grand Illusion”という曲──1st EPにも収録されていますが、それを作ったタイミングで「これ、いけるんちゃうか!?」みたいな感じになったんですよ。それが2017年の最初の頃。そこからですね。エレクトロを融合したサウンドに固まったのは。
— “神戸発”音楽ユニットとなっていますが、Opus Innのサウンドが神戸という土地柄から影響を受けた部分はあると思いますか?
Nagata:神戸ってジャズ喫茶がたくさんあるので、ジャズやR&Bに触れる機会が多かったというのがまずあります。それに、神戸って歩いてすぐのところに海があって、一方では山もあるような、風景がころころ変わっていく場所なので、それが音楽を作るうえではわりと響いている気はしますね。曲を作るときに頭の中に思い浮かべるのは神戸の海だったりもするし。それに、僕は岡山出身なのですが、風景は岡山よりも神戸の方がわかりやすい美しさがありますからね。
Horiuchi:自分は神戸の山の方の生まれで、育ってきたのは街。そういう意味では、神戸の風景からは影響を受けているでしょうね。
— Opus Innというユニット名の由来について教えてください。
Horiuchi:由来は……昔、山下達郎さんのライブに行って、ステージ上にモーテルみたいなセットが組んであったんです。そこに”Opus Inn”って書いてあって(笑)。それをずっと覚えていて、いざ「バンド名、何にしよう?」って話していたときにそれを思い出して。ふたりとも80年代の日本のポップスも好きなので。
— EPは3作品とも、エレクトロでありながら曲間がしっかりと取られていて、曲ごとに余韻を感じさせますが、それはやはり昔のポップスやAORなどへのリスペクトがあるのでしょうか?
Nagata:AORって“アダルト・オリエンテッド・ロック”と、アルバムを通してストーリーになっている“アルバム・オリエンテッド・ロック”っていうふたつの解釈がありますが、どちらかというとアダルト・オリエンテッド・ロックの方──1曲ずつ大人が聴けることを意識して、1曲完結にしています。
— 結成当初から、そういった作風にしようという意識があったのですか?
Horiuchi:結成当初はそういった意識はなかったのですが、Opus Innがバンドの延長線上だからというのはあるかもしれません。実はエレクトロニカとかハウスとかはあまり知らないというか、浅いんです。これまで、曲ごとにインプットされてきたので、アウトプットも1曲で完結したいという思いはありますね。
— 楽曲制作はどのように行なっているのですか?
Nagata:基本的には、最初のビートは僕が作って、そこにHoriuchiがボーカルを乗せて、アレンジしていくという流れです。
— お互いに途中で意見を挟みながら構築しているのですか?
Nagata:そうでもなくて、分業制みたいな感じですね。たまに「こうしたほうがいい、ああしたほうがいい」って言ったりもするんですけど、結果的にそんなに変わらない。「もうちょっと展開が欲しい」って言われたらちょっと付け足すみたいな感じで、むちゃくちゃ口出すような感じではないですね。
— 3作品とも、ジャケットのアートワークに永井博さんのイラストを使われていますが、その理由を教えてください。
Nagata:ふたりとも大瀧詠一さんが好きだからというのはありますね。僕は、はっぴいえんどから入ったのですが、日本にいながらアメリカの音楽を取り入れたような、日本人だからできるサウンドが好きで大瀧さんを聴いている感じですね。
Horiuchi:絵も好きですし、それに憧れなんですよね。永井さんのイラストには街が見えたり、ビーチが見えたりするので、神戸に通じる雰囲気もあると思うんですよね。
— ジャケットは、カセットテープのレーベルをモチーフにしていますね。
Horiuchi:幼少期に親のカセットテープを聴いていて、それが好きだったんです。カセットテープが家にたくさんあって、特に80年代~90年代の音楽が多かったのを覚えてますね。だからむしろ、最近のブームというよりは原体験。もちろん、自分たちの作品をカセットでも出したいっていう思いはありますけどね。
サウンドもアートワークの選び方も、80年代のポップスやAORからの影響を色濃く感じさせる。しかしその一方で、Opus Innにとってのスタンダードは必ずしも80年代のサウンドにとどまらないようだ。ふたりにとってのスタンダードを探ってみると、Opus Innのサウンドは現代的でありながらも、多彩なジャンルのエッセンスが盛り込まれた、ユニークなものであることがよく分かる。
— この特集はLeeの『101』にちなんで“スタンダード”をテーマにしているのですが、ふたりにとってのスタンダードな音楽はどういったものですか?
Nagata:僕はスタンダードって言われたときにジャズしか思い浮かばないですね。ジャズミュージシャンには新しい曲を作る人もいますけど、スタンダード・ナンバーをカバーしてライブで演奏し続ける人も多いですからね。僕自身もスタンダード・ナンバーが好きだし。それと、神戸にいるときからずっとBill Evans(ビル・エヴァンス)が好きなんですよ。”ジャズの入門”って言われるミュージシャンですが、今でもずっと聴き続けられるし、影響を受けたミュージシャンも多い。その中心にいる彼こそがスタンダードなのかなぁって思いますね。
Horiuchi:自分はThe Beatles(ザ・ビートルズ)が中心ですね。小学生の頃から聴き続けていますが、やはりあの4人が作った音楽から派生していったミュージシャンは多いと思うし、それはこの先も変わらなそうですから。
— 『Time Stand Still』に収められている“Still”のMVは、セレクトショップのSTUDIOUSとタイアップしていますが、そういった試みは初めてですよね?
Nagata:今まで、衣装とかは友達に頼んだりすることが多かったんですが、それと比べるとしっかり作り込んでいる感じがしましたね(笑)。
Horiuchi:MVは80’s感を強調した作りだったのですが、その雰囲気に合う服がたまたまあったんです。トレンディな感じだけど現代的な雰囲気のものが。だからタイアップしてみて面白かったというのはすごく思いますね。しかもこのMVはVHSで撮影して画角もわざと4:3にしたりとずいぶんこだわっていたんですが、その監督(lilsom/リルソム)は自分たちよりも歳下で、すごく面白いクリエイター感じでしたね。
— 日常のファッションはどういったスタイルですか?
Horiuchi:古着屋に行くことが多いですね。特に、神戸での友達は古着屋のスタッフが多くて、彼らからよく服をもらってましたね。そのうちに自分でも古着屋で買うようになって。今はその延長線で、ラクな服を着ていることがいちばん多いですね。特に今は、ちょっとワイドなパンツとか、オーバーサイズのTシャツとかがしっくりきますね。
Nagata:僕はほとんどバンドTで過ごしてることが多い。大阪にオフィシャルのバンドTシャツを置いている店があるんですけど、そこに足繁く通って、新しいのが出ていたらそれを買うみたいな(笑)。
— デニムについての思い入れはありますか?
Nagata:父親がデニムを集めていたんですよ。でも穿き古したデニムばかりで、子供の頃は「そういうのがカッコいいのかなぁ」って感じてたんですけど、大人になるにつれて「育てていった結果がこれなんだ」っていうのが分かるようになりましたね。デニムは自分で穿き込んでいくうちに、シワとかダメージとかがその人に合わせて出てくるので、パーソナルな部分が見えてくるアイテムなんだなって。
Horiuchi:自分の親も毎日デニムで、しかも同じものをずっと穿いてましたね。その影響だと思うのですが、自分も同じデニムをずっと穿いてましたね。でも今はビンテージが好き。新品よりも穿き古された感じのほうがいいですね。古着屋で買うこともありますけど、誰かにもらったりとか。「それ、まだ全然穿ける!」みたいな感じで(笑)。終わりがないようなアイテムって好きですね。
— ところで、英詞が多いのはなぜですか?
Horiuchi:トラックに合わせてメロディを入れているんですけど、そのときに日本語が合わないっていうのがいちばんの理由ですね。曲重視……というか、耳に馴染むことを意識すると、英語のほうがハマりやすいんですよ。
— 海外での活動を視野に入れているということではないのですか? 楽曲は海外受けしそうな印象を持ちましたが。
Horiuchi:もちろん、それもあります。外国人の友達は勧めてくれるんですけれど、まだその一歩が踏み出せていないですね。ひとまずEPの3部作はリリースしたので、今後は、もう少し海外の人たちが聴いてくれる音楽を作りたいというのが目標ですね。
— アルバムのリリース予定はありますか?
Nagata:全く分からないですね(笑)。もちろん出したい気持ちはあります。でも、やっぱりアルバムという存在にこだわりがあって、しっかり作り上げたいので、気力も含めて相当時間がかかりそうですね(笑)。
レーベル: Rure Records
ASIN:B07SZGSXVN
JAN:4582500630117
アメリカを代表する老舗デニムブランド、Leeのアイコンであり、最もスタンダードなモデル。
往年のライダースジーンズを現代風にアレンジした日本製の本格モデルは、デニム本来の質実剛健な無骨さを持ちながら、合わせる洋服を選ばない高い汎用性が特徴。
【Lee商品のお問い合わせ先】
Lee Japan
TEL:0120-026-101
http://www.lee-japan.jp