Photo:Shota Kikuchi | Styling:Hisataka Takezaki | Hair&Make-up:Masaki Takahashi | Model:Lamp | Text:Yuzo Takeishi | Edit:Atsushi Hasebe、Nobuyuki Shigetake
2000年、染谷大陽(ギター)、永井祐介(ボーカル、ギター、ベース、キーボード)、榊原香保里(ボーカル、フルート)の3人によって結成されたLampは、2003年に『そよ風アパートメント201』をリリースして以降、これまでに6枚のアルバムを発表してきた。そして2018年5月には7枚目となる『彼女の時計』をリリース。同アルバムのレコ発ライブは即完売となり、同年8月から9月に行われた日本国内とアジアでのツアーも好評のうちに幕を閉じるなど、約4年ぶりに活動を本格始動させた彼らに、今、心地よい追い風が吹いている。
— 『彼女の時計』は実に4年ぶりのアルバムとなりましたが、これだけの時間を費やした理由について教えてください。
染谷大陽(以下、染谷):費やした……というよりは「かかっちゃった」という感覚のほうが近いですね。本当はもう少し短いスパンで作品を出したいと考えているんですが、2000年から活動して何枚も作っているとハードルが高くなって、その分時間もかかってしまうんです。「前よりもいいものを作りたい」という気持ちで制作していると、なかなか自分の中でOKが出なくて……。
— ”前よりもいいもの”とのことですが、具体的には?
染谷:人のことを考えるのではなく、自分が聴いていいと思えるかどうか、自分が感動できるかが基準になっています。でも、そこがいちばん難しい関門で、「これじゃあダメだ」を繰り返してますね。
— 途中、メンバーから意見を出すことはありますか?
榊原香保里(以下、榊原):作った人が納得するまで何も言いませんね。だから「早くしろ!」なんて絶対に言わないです(笑)。
— 曲作りの体制について教えてください。
染谷:僕と永井がそれぞれ曲を持ち寄って、作ったほうがアレンジやディレクションも含めて最後まで担当する形でずっとやっています。永井はここ何作か、宅録中心で制作しているみたいですね。
永井祐介(以下、永井):最近のミュージシャンはほとんどそうだと思うんですけど、わりと家でできる作業が増えていて、ドラムとか以外は家で、ずっとやり直したりしていますね。音楽に求めるものは人それぞれ違うと思いますが、僕も音楽を作るときには、自分が聴いて感動できるかどうかが大きなポイントになっています。
— 東京・恵比寿でのレコ発ライブやアジアツアーもありましたが、こうしたライブを通じて新譜に対する手応えはありましたか?
染谷:新譜に対しては瞬発力というか、一聴してすごくいいと感じられる音楽だとは思っていないんです。むしろ、家のそこらへんにずっとあるアルバムの1枚で、でも何年か経って聴いてみたら「あ、なんかこれ、すごくいいね」って思えるものを作ったつもり。”スルメ”じゃないですが、派手さとは無縁の音楽だと思っていたので、リリースから何ヶ月も経ちましたが、その気持ちは今も変わっていないですね。
榊原:アルバムを出したっていう印象が、いちばん薄かったかも……。
— それは、結成当初からこれまでの心境の変化も関係するのでしょうか?
染谷:それはあると思います。音楽を始めた当初は、自分たちの存在をアピールしたいというような気持ちはありましたけど、最近は、自分が今聴いている音楽と同じように、誰かが長く愛して聴いてくれるような1枚を作りたいという気持ちになっていますね。
永井:僕らは、長く聴いてもらえるような音楽を作っているつもりなんです。正直なことを言うと「もうちょっと話題になってほしい」っていうのはありますけど(笑)、でも、まぁ長く聴いてもらえればいいかな、と。
— Lampの楽曲はブラジル音楽やAORの要素を感じさせつつも、最終的には”Lampの音”に仕上がっているのが印象的です。
染谷:たしかにブラジル音楽からの影響はありますが、制作が進行していく過程で曲の構成やメロディと対峙していると、もう、その取っ掛かりになった音楽からは完全に気持ちが離れるんですよね。むしろ制作途中では、自分が好きなマンガや日本情緒のあるもの、The BeatlesやSimon & Garfunkelみたいな洋楽のエッセンスも入ってくるので、最終的にブラジル音楽とは違うものになっていくのだと思います。
— また、過去のアルバムと比べると、最新作はより都会的なニュアンスが強まっている感じがします。
染谷:長年活動しているうちに音楽を作るのが上手くなり、大人っぽい部分も出てきたことで洗練された印象になっているのだと思います。
永井:それに、以前は外で録音をしていたので、最後は焦って不本意な形でリリースせざるを得ないことも多かったのですが、最近は宅録にシフトしてきたこともあって、今回は「これでOK!」という気持ちで出せましたね。
— ところで、新作がリリースされるまでの間、2015年にはボタニカル・ハウスというレーベルを立ち上げています。こちらをスタートした経緯について教えてください。
染谷:Lampと音楽性は違うけれど、自分が聴いて好きになった何人かのアーティストに「ちゃんとリリースしようよ」って声をかけていたんですが、それを自分がやることになったのがレーベルを始めた大きな理由です。それに、以前はスタッフとのミーティングが上手く進まない時もあって「それなら自分たちで考えて、好きなことをやったほうが気持ちもラク」っていうのもあったので。だからアーティストを選ぶ基準もすごくシンプルで、自分で聴いて「いいな」と思ったら声をかけていますね。
— 例えば、所属アーティストの「公衆道徳」はどのようにして見つけたのですか?
染谷:Lampを聴いている韓国の女性ファンが、気に入ったCDを3枚くらい送ってくれたんです。聴いてみたらそのうちの1枚の公衆道徳がすごく良かったので、そこからコンタクトを取った感じですね。