Leeの『101』を通して考える、僕らのスタンダード – Lamp –

by Nobuyuki Shigetake and Mastered編集部

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ソウルでのライブは「この時間がもっと続けばいいのに」みたいな感覚があった(染谷大陽)

たしかに、Lampの楽曲からはブラジル音楽からの影響が感じられるが、一方で染谷大陽が語っているとおり、ポピュラーミュージックはもちろん、マンガや日本情緒のある作品など、彼らが触れてきたさまざまな要素が織り交ぜられることで最終的なLampのサウンドは形成されている。このあたりをもう少し探っていくと、彼らにとってのスタンダードな音楽の捉え方が見えてきた。

— Lampが考えるスタンダードな音楽とは、どういったものですか?

染谷:ひとつは、自分が古くから影響を受けてきた、今でもずっと残っている音楽ですね。僕たちの音楽は、ブラジル音楽はもちろん、The BeatlesやSimon & Garfunkel、The Beach Boysといった1960年代の洋楽が基になっていますが、それらは今でも好きですし、自分たちにとってのスタンダードになっていると思います。一方で音楽を発信する側としては、ファーストアルバムの頃からずっと、自分たちがいいと思うものを作り続けていることがスタンダードにつながっているんじゃないかと……。

榊原:好きなものが続いていって、それが結果的に自分たちっぽくなるっていうことじゃない?

永井:若いときは周りが見えていないから「自分たちが世界の中心」とか「これがいいに決まってる!」みたいな感じで音楽をやっていたけれど、歳を取ってくるとそれは「全然価値のないものなんじゃないか?」って思う瞬間があるんです。つまり自分が、スタンダードだと思ってやっていたことが、誰かにとっては無価値なものだったりもするし、逆に分かってくれる人もいる。だから結局は、自分たちが好きなことをやって、結果として自分たちの音楽を好きになってくれる人がいたらいいなっていう感覚ですね。The Beatlesみたいに、いろんな人が「いい」と評価してくれればそれがスタンダードになるのかもしれない。

染谷:音楽を始めたばかりの頃は、CDを聴いてカッコいいと思ったようなものを作りたいと思っていました。でも例えば、Milton Nascimento & Lo Borgesの『Clube Da Esquina』なんて、購入してから良さが分かるまで5年以上かかったんですが、今はほぼ毎週聴いている。そういったリスナーとしての体験から、ここ数年は、自分たちもそんなふうにいいと思われるようなアルバムを出したいと思ってますね。

アクの強いアイテムも、リジッドの101Zで纏め上げれば、大人っぽい印象に。

— この特集はデニムのスタンダードであるLeeの『101』にちなんで”スタンダード”をテーマにしているのですが、普段デニムを穿くことは?

染谷:デニム”以外”を穿く機会がないですね。当たり前の存在になっています。

永井:僕は9割方デニムです。上下デニムのときもあるくらい。

榊原:私は全然……近所に買い物に行くときだけですね。デニムを穿いている女性を見ると憧れるんですけど、自分は勇気がなくてほとんど穿かないので、今日はいい経験ができました。

— 服を選ぶうえでポイントはありますか?

永井:僕は中学生のときにファッション誌を読み漁ってたくらいファッションが好きですね。特に、これは僕だけではなくてメンバー全員、古着が好きなんです。経年した感じとか、時間の変化が感じられるものとか……。真新しすぎると踏み込めないというか、服との距離感が近すぎて着づらいんですよね。ただ、若い頃はダメージのデニムを穿きこなせている自信があったのですが、最近はキレイな古着のほうがいいかな……と思うようになっています(笑)。

染谷:前までは1970年代より前の古着ならOKだったけど、最近は1980年代の古着もいいなぁって思えるようになってきましたね。

榊原:音楽といっしょだね(笑)。

— 「音楽といっしょ」というのは?

榊原:音楽も1980年代の音楽はすごく苦手だったんですけど、最近はとても好きになって……。

永井:僕はちょうど1980年生まれなんです。子どもの頃に1980年代を過ごして、10代の頃に1990年代を体験していると、1980年代カルチャーのトゥーマッチな感じが苦手だったんです。でも、最近ではそれがいい感じに捉えられるようになってきましたね。

染谷:僕らの大学生の頃って、1960年代がブームだったからね。

永井:1960年代と1990年代ってわりとリンクしていて、1960年代っぽい音楽も流行っていたし。だから1980年代はちょっとありえないっていう感じだった。でも、今の若者には1980年代のほうが刺さってますよね。

— 最後に今後の活動予定を教えてください。ホームページを見ると、ソウルでのライブをライブ盤としてリリースする考えがあるようですが?

染谷:ソウルのライブは2018年のツアーの最後のほうでしたが、バンドも成熟していたし、オーディエンスの雰囲気も良かったんです。それまで、個人的にはライブが好きじゃなかったので「早く終わらないかな……」って思っていたくらいなんですが、あの時は演っていて楽しいというか「この時間がもっと続けばいいのに」みたいな感覚があったんです。そのときの音源が残っているので、今はそのリリースを目標に動いています。それ以降はまだ決まっていませんが、なるべく早く新しい作品をリリースしたいですね。

— ライブはいかがですか?

染谷:ライブ活動は今年は全然予定していなくて、制作に集中したいですね。もちろん、いいお話をいただけたら……ちょっと考えなくもないですけどね。