私の選んだ腕時計。荻原桃子(UN3D.):Seiko Lukia『SSQV032』

by Mastered編集部

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私の選んだ腕時計。伊藤壮一郎(soe):Seiko Presage『SARX035』

時計選びは、父のスタイルがベースにある

—はじめに、伊藤さんがこのSeiko Presage『SARX035』を手に取ったきっかけを教えてください。

伊藤:父が、このSeiko Presageのようにフェイスが大きいタイプの時計を昔から着けているのを見ていたんで、このようなデザインに愛着はあったんです。ただ今までは、フェイスが大きいモデルは自分にはあんまり合わないかなと思っていたので、小さなスクエアフェイスのものを選ぶことが多かったんですが、これから歳を取っていくことを考えると、こういうスタイルの時計も面白いかなと思いまして。

—お父様のスタイルがベースにあったのですね。では、時計を選ぶ際に、重視することはあったりしますか。

伊藤:プロダクトの背景となる部分ももちろん気になるんですが、その時計を着けている人のスタイルが魅力的に映って、そのものに惹かれることが多いかもしれません。例えば映画の中で、イーサン・ホークが適当に着ている女性物のコートが妙に格好良いとか。その人の所作やタバコの吸い方とかそういう佇まいがあって、その人の着けている物が価値のあるものに見えることが多いです。

Seikoのロングセラーシリーズである機械式腕時計、Seiko Presage。なかでも艶のある黒文字盤やシャープでソリッドなフォルムが特徴の『SARX035』は、腕元で上品に存在感を主張してくれるモデルだ。シンプルな3針でデイリーウオッチに求められるクリーンな雰囲気がありながらも、りゅうずに刻まれた「S」の文字やケース側面などの処理が細かく、モダンな佇まいを後押ししてくれている。

—具体的にどんな人たちに影響を受けてきたのですか。

伊藤:10代の頃から身近で見ていた、山本耀司さんや細野晴臣さんのスタイルにはすごく影響を受けましたね。彼らの良い意味で適当な感じやチグハグ感はちゃんと計算されたものに僕には見えて、その雰囲気や醸し出す佇まいがすごくかっこよかったんですよ。時計も一緒で、このSeiko Presageのように上品な時計をラフなスタイルのハズしとして使うと面白いと思ったんです。トータルで見ればバランスが取れているけど、ちょっと訳がわからない感じが粋に感じます。

—伊藤さんは昔から時計をする習慣があったのですか。

伊藤:学生の時は、父がしていたヴィンテージをもらったりして着けていましたね。でも毎日着けるようにになったのは30歳を過ぎてからです。今は、自分の趣向やアイデンティティがわりとはっきりしてきて、自分のスタイルが定着してきましたが、若い時はもっと分かり易く遊び心が効いたスタイルとか、ファッションに冒険心があったかもしれません。ヨーロッパで流行っている日本では売っていないデジタルウオッチを大学の教授がしているのを見て、自分もそれを探して買ったりしていました。