Photo:Shota Kikuchi | Styling:Hisataka Takezaki | Hair&Make-up:Reina(TRS) | Model:ravenknee | Text:Yuzo Takeishi | Edit:Atsushi Hasebe
2017年12月に活動をスタートするや、すぐさま自主制作シングル”daydreaming”を発表。翌2018年は4月に”1st EP”、8月にはデジタルシングル”OVERDOSE”をリリースし、その間にはサマーソニックへの出演も果たすなど立て続けにアクションを起こしているravenknee。そして11月21日には活動開始からわずか1年足らずで、ラストラムからデビューEPも発売された。メンバー5人が揃ってのインタビューは初めてだという今回、まずはバンドの成り立ちから話を聞いていこう。
—バンド結成の経緯について教えてください。
松本祥(以下、祥):僕は以前、バンドでギターを担当していたのですが、次第に自分で作曲したり歌ったりできるバンドを作りたいと考えるようになっていったんです。その後、対バンやライブハウスで出会って「カッコいい!」と思ったメンバーに声をかけて音源を聴いてもらったら、みんな「いい」って言ってくれて。そうして結成したのがravenkneeです。
—ravenkneeのサウンドは、当時組んでいたバンドとは違う方向性ですか?
祥:以前はギターロックやインディロックだったり、シティポップだったりといろいろやっていましたね。ravenkneeのサウンドはその頃とは違った感じになっていると思います。
—メンバーのみなさんは、そのサウンドに共感されたのですか?
全員:そうですね。
松本一輝(以下、松本):以前からギタープレイやリバーブの量感で、彼(祥)が北欧系の音楽が好きなんだろうということは分かっていたんです。送られてきたデモも北欧系のアルペジオから始まっていたので「やっぱりこういう感じなんだな」と思ったんですけど、途中、いちばん盛り上がる部分で急にドラムが四つ打ちで入ってきて、しかもすごくカッコいいアルペジオも重なっていたんですよ。聴いた瞬間、驚きましたね。自分もいろいろと音楽を聴いてきたつもりでしたが、そのときは彼の音楽がものすごく新しく感じて「身近にこんなヤバい曲を作るやつがいるんだ!」って感動しました。
山口勇人(以下、山口):僕は最初、エレクトロのサウンドが入る前のデモ音源を聴かせてもらったんですが、声と歌に透明感があって、すごくいいって思いました。いっしょにバンドをやったら楽しいだろうなって。
安田照嘉(以下、安田):弾き語りでループを使ったり、アコースティックギターを叩く音を重ねたりしながらひとりでライブを演ってるのを観たのですが、それを観た瞬間「このバンドでいっしょにやりたい」って思いましたね。
祥:なんか褒めちぎられて気持ちいいですね(笑)。
東克幸(以下、東):僕は前にいたバンドが出口のない迷路に入っていた頃で……。そういう時期にデモを聴かせてもらって、自分がやりたかった方向をさらに広げられると感じたので「いっしょにやらせてよ」って言いました。
—ravenkneeというバンド名にはどんな意味があるのですか?
祥:バンド名は存在しない言葉にしたいと思っていたんです。検索しても僕らのバンド名しか出てこない、唯一無二の単語にしたかった。それにRadiohead(レディオヘッド)が好きで、彼らのようなジャンルに囚われない音楽をやりたかったので、Radioheadのように”RA”で始まる言葉がいいだろうと。僕の父の苗字がRavenhall(レイヴェンホール)なのですが、RAで始まるし、”raven”……カラス……なんかカッコよくない? みたいな(笑)。”raven”につなげる言葉は、カラスには存在しない”ヒザ”を付けてravenkneeというバンド名にしたんです。だから特にバンド名から音楽性を表現しているわけではないんですよ。
—2017年の12月に活動をスタートして、シングルや自主制作EPのリリース、サマソニへの出演とコンスタントに活動している印象ですが、これは意図した動きですか?
祥:今はレーベルがラストラムになり、制作に協力していただけるようになりましたが、基本的にはメンバー全員が音楽制作ソフトを使いこなせるし、エンジニアの経験があるメンバーもいるので、自分たちでミックスができてしまうんです。僕は過去にいろんなバンドをやりましたが、バンドがつまずく原因って、結成しても音源がなかなか出せないことなんですよ。だから最初はそうした問題を自分たちで打開するべく、音源を自分たちだけで作ってスピード感を出していこうという思いがあった。SNSを見ている人たちにも「結成したと思ったら、もう音源が出たんだ!?」と思わせたかったので、とにかくスピード感は意識しましたね。
—先ほどRadioheadの名前が出ましたが、みなさんはどういったジャンルやアーティストが好きなのですか?
松本:祥と似ている部分も多いのですが、違いがあるとしたら自分は1930年代とか1940年代のジャズ系の音楽がいちばん好きなところですね。
安田:僕は最近ヒップホップが好きですね。なかでもスリップビートとか、ちょっとズレてる感じのものが。だから今後はそういった要素も楽曲に入れられればいいと思っています。
東:自分は1930年代から1940年代くらいのブルースとか、The Band(ザ・バンド)とか。電子音だとニューウェーブ……Kraftwerk(クラフトワーク)とか、Yellow Magic Orchestra(イエロー・マジック・オーケストラ)とかが好きですね。
山口:もともと、Sonic Youth(ソニック・ユース)とかグランジとかUSパンクとかが好きで、20歳を過ぎてからThe Chemical Brothers(ケミカル・ブラザーズ)みたいな高揚感のあるエレクトロを聴くようになったんです。いちばん好きなのはThe Prodigy(ザ・プロディジー)。そこからどんどんレイヴミュージックに傾倒するようになりました。
祥:今公開している楽曲は全部僕が作っているんですが、シューゲイザーとエレクトロとかポストロックとか、さらにJ-POPっぽい要素を混ぜたりして、何か目新しいものができないか模索しています。イギリスのKYTE(カイト)とかDaughter(ドーター)とかはSigur Rós(シガー・ロス)に影響を受けているらしいんですが、そういった北欧ルーツのUKシューゲイザーは好きですし、ODESZA(オデッザ)を初めて聴いたときは衝撃を受けて、トラックメイクとかシンセの音づくりを自分でもやりたいって目覚めたほど。そこからエレクトロの要素を加えていくようになったんです。メンバー全員、被っている部分も多いのですが、特別に好きなジャンルは少しずつ異なるので、今後は個々が作ったデモを全員で仕上げた楽曲も公開していきたいと思っています。
—今リリースされている音源を聴いてもバラエティ豊かですが、今後はさらに音楽性が広がりそうですね。
安田:バラエティ感はあるのですが、祥くんの歌で最終的にravenkneeのサウンドになるというのはやっぱりスゴいですね。その分、ほかのメンバーは好き勝手できますから(笑)。
—先日リリースされた『PHASES』にはどんな意味が込められているのですか?
祥:月には満ち欠けによる月相(=phase)がありますが、今回の楽曲もテイストはバラバラでいろんな面を感じさせる内容になっているので、そこから”PHASES”というタイトルにしました。そのアートワークも、CDではレーベル面に陰を描き、トレイ下には月のイラストをプリントして”PHASE”を表現しています。
—こうしたアートワークや音源、そしてMVまで、トータルでアートとして捉えているような印象を持ちましたが、今後もこうしたアプローチは続けていく予定ですか?
祥:それは貫いていきたいですね。”1st EP”でもただCDをリリースするだけではなくポーチをケースにしてみたのですが、それも、今はサブスクリプションが主流の時代なのでフィジカルを出すことにちゃんと意味を持たせたいと思ったからなんです。