カンパニー松尾の「華麗なるおっぱい」 劇場版 おうちでキャノンボール 2020 特別編

by Keita Miki

スニーカーや古着と同じく、男ってやつはとにかく「おっぱい」に弱い。
というお馴染みのフレーズから始まり、毎回、我らがハメ撮り隊長ことカンパニー松尾が1人のAV女優にインタビューをしていく本連載『カンパニー松尾の「華麗なるおっぱい」』だが、今回は同人物の代名詞とも言える”テレクラキャノンボール”シリーズの最新作『劇場版 おうちでキャノンボール 2020』の公開を記念した特別編をお届け。
去る3月26日からの1週間限定上映を連日満員札止めの大盛況で終え、4月23日(土)からは過去のテレクラキャノンボールシリーズの特集上映も含めた3週間に渡る追加上映が決定した話題作について、そして、映画と同じくコロナ禍を経た”稀代のハメ撮り監督”の近況について、じっくりと話を訊いた。
※過去の 「華麗なるおっぱい」はこちらから。
※カンパニー松尾 × MasteredのコラボレーションTシャツはこちらからチェック。

Photo:HMJM | Interview、Text、Edit:Keita Miki

「過剰なメッセージは廃して、限られたルールの中でキャノンボールをどこまで出来るのかっていう、それだけのものを作りたかった(カンパニー松尾)

— いつもはAV女優さんに松尾さんがインタビューをしていくんですけど、今回は特別編ということで僕が松尾さんに話を伺います。松尾さん、年齢はいくつになりました?

松尾:今年で57歳。もう立派な年寄りだよね(笑)。

— 色々な意味で老いを実感する瞬間ってありますか?

松尾:ものすごく実感してますよ。40歳を過ぎた頃から体力と精力がガクッと落ちて、50代に入ると、そこから更に一段階落ちるんだよね。55歳を過ぎて、もう流石にここから上がることは無いから。もちろん個人差はあると思うし、職業柄、普通の人よりは頑張ってきたつもりなんだけど、それでも最早プライベートではセックスに全然興味が無いもん。仕事でしかセックスをしてない。逆に言うと、そこで辛うじて奮い立たせている部分があるというか。今はカメラを持たないとセックスが出来ないんじゃないかな。そういう意味ではAV監督っぽくなってきたのかもしれない(笑)。

— けど、今も仕事は楽しくやれてるってことですよね?

松尾:うーん……。昔も今もプライベートであんまりセックスをしないから、若い時から自分のセックスの実態って撮影にしか無かったんだよね。スケジュールに”撮影日”って書いてある日が”=セックスをする日”って感じで。だから、そう考えるとたしかに昔と変わらず楽しいんだけど、とにかく全体的に性欲というか女性にムラっとする気持ちが落ちちゃっていて。撮影する女優さんも段々と年下になってきて、挙句の果てには自分の娘よりも年下の女の子とかも出てきちゃうしさ。AV監督っていう下駄を履いているだけで、下駄をとったら本当に普通のおじさんですよ。しかも、人の良いおじさん(笑)。「今でもビンビン、現役です!」みたいなことは全く無いです。

— 街録chでのインタビューとか、他でも話していることかもしれませんが、AV監督になる以前はどんな人生だったんですか?

松尾:普通に高校を出て、映像の専門学校に行って。MV(ミュージックビデオ)の監督になりたかったんだよね。結局はテレビの制作会社に就職するんだけど、音楽番組を担当することが出来たから、そこで夢は半分叶ったのかも。だけど、その会社がすぐに潰れちゃって。その後はV&Rプランニングに入社する例のくだりに繋がります。

— 近年の松尾さんは、巡り巡ってその”やりたかった仕事”に近づいているようにも思います。

松尾:そうかもしれないね。『劇場版 テレクラキャノンボール 2013』がヒットしたことを起点に、自然発生的にバンド関係の話をいくつか頂いて。相変わらず計画性は0だから、この先どうしようっていうビジョンは全然無いんだけど(笑)。

— やっぱり松尾さんはロックンロールが好きなんですか?

松尾:あんまりハードなものは聴かないですよ。楽器もちょこっと教えてもらったんだけど、中学生で早々に挫折してるしね。今でもそうだけど、ライブハウスで聴く音楽よりも部屋でラジカセで聴く音楽が好きなタイプ。音楽でもAVでも1対1で対峙したいタイプなんだね(笑)。

— 映像に関する入り口は映画よりも音楽なんですね。

松尾:映画なんて全然。『スター・ウォーズ』、『E.T.』、『ロッキー』とか当時流行っていた映画ですら何一つ観ていないし、40歳を過ぎてからですよ、僕が真剣に映画を見始めたのは(笑)。テレビは好きだったけどね。音楽で言えば僕らの世代ではニュー・ウェイヴとか、UKロックとかが流行っていて。The Police、The Jamとか、そういう世代だよね。あとは特別に何かが好きってことも無いし、勉強も運動も平均的で、自分より面白い人も周りにたくさんいたし、適当に過ごしてました。

— 性に対する興味は?

松尾:中学生の時からあったけど、それも人並みかな。橋の下でエロ本拾ったりとか。まぁ、昭和のおじさんの昔話ですよ(笑)。とにかく全部が”人並み”、”普通”の青年でした。

— 映像の世界に行こうと思ったのもなんとなく?

松尾:それだけは明確なきっかけがあります。高校生のときに地元の情報番組で「松田聖子と会える! 高校生インタビュアー募集!」みたいな企画をやってて、ハガキで応募したんだよね。2枚出したよ、ハガキは(笑)。結果、インタビュアーには選ばれなかったんだけど、選考に漏れた一部の応募者も後日、松田聖子が出る音楽番組の舞台裏を覗かせてもらえることになって。その時に人生で初めてテレビ番組の収録の裏側を見て、「この仕事がやってみたい」と思った。その前から地元を出たいっていう考えはあったんで、高校を出てから東京の専門学校にって流れかな。

— ちなみに松尾さんが初めて撮った映像作品はどんなものだったんですか?

松尾:専門学生の時に自主制作で撮ったMV風のやつ。ただ高校時代にカメラをいじったことも無ければ、初めて撮った映像が賞を取ったみたいな天才少年的なエピソードも全く無いから、特に語ることも無いんだけど(笑)。

— AVを初めて撮ったのは?

松尾:22歳でもう撮ってますよ。V&Rプランニングに入社して半年後くらい。

— そこから既に30年以上が経過していますが、今でも松尾さんの撮るAVは唯一無二だと僕は思います。AVに限らず、松尾さんの作品のエッセンスを取り入れているものは沢山あると思いますが、パッケージ全体で見るとやっぱりオンリーワンだなと。

松尾:そう言ってもらえるのは素直に嬉しいです。とにかく僕の場合は環境が良かったんだよね。給料は安かったけど、自由に撮りたいものを撮れた。AVメーカーでも普通は「もっとこうしろ」って会社から言われるものだけど、そういうのは一切無かったし。唯一会社から言われたのは「こだわりを持て」ってこと。絡み(セックスシーン)さえ入っていれば抜く場所は人によって違うから。抜きやすいもの、分かりやすいものを作りましょうってことでは無く、”絡みが入ってる”って制限さえ守れば好きなことが出来た。時代も良かったから、AVが売れたしね。当時はレンタルが主流だったし、今よりも営業の力も大きかったので。パッケージとタイトルのインパクトぐらいかな、気にしてたのは。『男と女のアニマルゲーム』とかさ。なんか昭和っぽいでしょ(笑)。売れるものを考えるんじゃなくて、自分たちのやりたいことをやった上で、それをどう売るかってことを考えられる環境・時代だったんだと思います。当時はユーザーの意見が製作側に届くことも無かったからさ、ある種面白いものを作ったもの勝ちっていうか、”面白いものを作れる”ってことが社内の評価に繋がっている側面もあって。ただ、レンタルからセルが主流になった時にメーカーが購入者アンケートを入れるようになったんだよね。今考えると、それが終わりの始まり(笑)。あの時代のAVが持っていた自由な空気感は淘汰されて、”完璧に抜けるAV”っていうのが絶対的な正義になっちゃった。AVっていうフォーマットを利用して何かを表現しようとしている人たちの居場所が無くなってしまったんだよね。まぁ、そこは時代の流れだから、仕方の無い部分もあるんだけど。

— 松尾さんの作風というか、今の作品のようなスタイルが確立されたのはいつ頃のことですか?

松尾:1991年に最初の『私を女優にしてください』を出したんだけど、既にその時には現状に近いスタイルだったんじゃないかな。初期の『私を女優にしてください』は完全なワンオペでは無かったんだけど、今の作風に近いものになっていると思います。けど、結局あのスタイルも、ある種の現実逃避というか、当時、山下さん(バクシーシ山下)とか社長(安達かおる)とかが激しいことをやり過ぎててさ(笑)。同じ会社だから撮影を手伝うんだけど、もう疲れちゃうのよ。あの人たちは人間的に強いから、俺が「あー、これ1回カメラ止めた方が良いんじゃないかな」とか思う場面でも絶対にカメラを止めないわけ。だからもう、1日現場にいると胃がキリキリしちゃって。自分の撮影だけはそういうのは無しにして、旅にでも出たいなって(笑)。セックス目的の旅なんて最高じゃないですか。だから、あれは僕の心の声、心の奥底から自然と湧き出てきた企画なんです。

— でも、それを30年続けてる訳ですからね。すごいことですよ。

松尾:いつの間にか芸になっちゃったね。

— スタイルを変えていないってことは自分としてもそこに自信があるってことですよね?

松尾:もちろん。あれで「良い」と言ってもらえる人がいる限りは何本でもやりますよ。けど、当時は誰も「良い」と思ってなかったと思う。当時だって当然、単体ものとかドラマものとか、いわゆる”王道AV”が半数以上を占めていたから。ただ、今と違うのは我々みたいなオマケにもちゃんと居場所が用意されていたこと。さっきも言ったけど、レンタルが主流だったからさ、5本AVを借りるうちの2本に入れば良かったんだよね。レンタルだからこそ外しても文句は言われなかったし、その”外した”って感覚をみんなと共有するっていうか。観る側も案外冒険してたと思うんだ。

— なるほど。なんだかとても勉強になった気がしています(笑)。『劇場版 おうちでキャノンボール 2020』の話に移りますが、率直に言って、映画の仕上がりに松尾さんは満足していますか?

松尾:今回は撮った段階で既にすごく面白かったんですよ、自分の中では。例えば『劇場版 テレクラキャノンボール 2013』とかは1週間ずっと撮影をやっていて、最後の方とかは疲労もあって頭がおかしくなってるから”面白い”って感覚はあまり無かったんだけど、今回は2日間、自分自身も楽しみながら撮影が出来ました。

— 正規のキャノンボールは移動距離も長いので、体力的にしんどいですもんね。

松尾:そうそう。みんな死にそうだし、作品全体のことを考える余裕があまり無い。今回も始める前に「画が動かなかったらどうしよう」みたいな不安はあったし、実際やってみて大変な部分もあったけど、2日間が終わった時に変な手ごたえというか、「やって良かった。リモートでも出来たな」っていう達成感があったんです。

— 松尾さんが思い描いていた”おうちでキャノンボール”が撮れたってことですか?

松尾:思い描いていた以上、かな。監督目線で言うと感触はすごく良かったです。逆に言うと今までよりも編集も早く終わっちゃって、いつこれを世に出そうかっていうタイミングを見計らうのが難しかったですね。

— 公開が決まってから再度編集は入れたんですか?

松尾:基本的な構成は同じですよ。新しい映像をケツに加えたりとか、細かくはあるけど。あとは少しだけボリュームをタイトにしたり。それくらい。コロナ禍の出来事だし、神妙なセンテンスを入れるって演出も出来たとは思うんだけど、僕自身、コロナ禍の当事者としてそうはしたくなかったから。過剰なメッセージは廃して、限られたルールの中でキャノンボールをどこまで出来るのかっていう、それだけのものを作りたかった。だから、今も”やってやったぜ”みたいな感覚は全く持っていないし、何か特別なすごいことをやったとも思っていない。いつものやり方で、いま我々に出来る”面白いこと”。2020年5月に出来る面白いことは何かっていう。シンプルな映画です。

— おっしゃる通り、僕自身、この2年間でメッセージ性の強いものに少し辟易している部分もあって。『劇場版 おうちでキャノンボール 2020』は映画館を出た後、「あ~面白かった!」って何も考えずに家に帰れる感覚がすごく良かったです。

松尾:コロナ禍に関係無く、フラットに観られる状況が良いかなと思って。公開時期についてはかなり考えましたね。

— 松尾さんのすごいところは、なんだかんだ、あのタイミングで何かを撮ろうっていうモチベーションが生まれて来るところだと思います。

松尾:コメントとしても出したんだけど、2020年のテレクラキャノンボールをいろんな意味でヤル気が無かったっていうのは本当のことで。『劇場版 テレクラキャノンボール 2013』をそのまま2020年にやることは出来ないなって感覚は、ずっとあったんだよね。それはコンプライアンス的な意味とか、みんなの性に対する意識も含めてね。時代にあわせて何かを変化させないといけないなとは思っていて。そういう意味でも『劇場版 テレクラキャノンボール 2013』のアップデート版にはなっていると思います。

— 「もう年寄りだ」とは言いながら、松尾さんの中にはやっぱり面白い映像を世の中に残したいって気持ちがまだまだ残っているってことですよね。

松尾:う~ん、そこでストレートに「はい」と言わないところが僕の天邪鬼なところなんだけど(笑)。でも、やっぱりそれは根本にはあるんじゃないかな。それがいつでも出来る環境をずっと維持しているし、維持したいってことだけなのかもしれない。

— 劇中、新メンバーの黒田悠斗さんがとにかく最高で、良いエッセンスになっていると思いますが、黒田さんを選んだのは松尾さんですか?

松尾:そうそう。黒田は2000年代から監督もやっているんだけど、その作品も観てるし、男優としても当然知っていて、あいつのちょっとおかしな部分も分かってたから(笑)。本人もHMJMのことを好きでいてくれて、自然と思い浮かびましたね。あとは単純にAV監督で新しくメンバーに入れたい人がいなかったっていうのもあるかな。優秀なAV監督は近年でもたくさん世に出てきているんだろうけど、ワンオペで映像が撮れる監督ってそもそも今の時代は少ないんですよね。ここ最近のAVメーカーは”ハメ撮り”を良きものとして捉えていないですから。AV業界の中で既に”ハメ撮り”は通常メニューに入っていないんですよ。あくまで変化球という認識で。

— 2010年代はテクノロジーの進化が顕著でしたが、松尾さんが使う機材に変化はありました?

松尾:いやいや、そこは全然追いつけていないですよ。ハメ撮りって画質の良さで追っかけるのは無理があって。だから、AV業界の中でも端の方なんですよ、僕のやってることは。全然最先端では無い(笑)。

— とはいえ『劇場版 テレクラキャノンボール 2013』にはじまり、『劇場版 BiS キャノンボール 2014』、『劇場版 どついたるねんライブ』、『劇場版 アイドルキャノンボール 2017』などなど、2010年代は松尾さんにとってもかなり変化のあった10年間ですよね。

松尾:面白い10年間でしたね。逆にそれまではAVひとすじだったから(笑)。自分の思い描いていた方向では無いけどね。どちらかと言うと”生涯、いちAV監督”でいたかったし、「映画なんか興味ねぇぞ!」っていうスタンスでいたかった。けど、自分の年齢もあるし、業界の変化もあるから。今でもAVが一番面白いと思ってるし、そこはこの先も変わることは無いけど、どんな形であれHMJMが続いているってことはありがたいことですよ、本当に。個人的な目標としてはAV監督をどこまで続けられるのかってことにチャレンジしたいし、ダメになったらスパッと辞めるつもりだけど、それまではしぶとく端っこの方でやっていこうかなと思っています。

— 個人的には、市井の人を撮らせたら松尾さんに勝る人はいないと思っています。最近はNetflixとかで海外のドキュメンタリー作品も気軽に観られるようになりましたが、松尾さんは他の人が撮ったドキュメンタリーって観たりしますか?

松尾:周りから薦められたものはちょくちょく観るようにしてますよ。海外のドキュメンタリーってテンポとスピードがとにかく早くて、すごく面白いんだよね。例えばCNNが作るドキュメンタリーとかって、日本のそれとはテンポとスピードが全然違う。どんどん人が出てきて、色んな人が入れ替わり立ち代りでガンガン喋る。ドキュメンタリーだけじゃないけど、スケール感とか情報量とか、そういう部分ではどうしたって海外の作品には勝てないよね。

— 『劇場版 BiS キャノンボール 2014』、『劇場版 アイドルキャノンボール 2017』はそもそも被写体がアイドルでしたけど、改めて振り返ってみていかがですか?

松尾:『劇場版 BiS キャノンボール 2014』は、やって良かったと思ってますよ。逆に『劇場版 アイドルキャノンボール 2017』は2年くらい関連の仕事をやった後に撮ったから、少し勝手が違ったのかも。やっぱり何も知らない人と一発勝負の方が普段の仕事に近くて。AV監督として一期一会で今までやってきてるから、人間関係を構築してから撮るっていうのはなかなか難しいんだよね。

— 今後も一般作を継続的に撮りたいという気持ちはありますか?

松尾:いや、それは無いかな。そこはAVと一般作品とで明確な線引き、境界線があって良いと思ってるし、その境界線や差別はあって当然だと思うので。色々なリスクと引き換えにAV業界の人たちは普通よりも高い報酬を得ている訳で、その境界線すら撤廃されてしまったら我々の生きる道は無い。普通の人がAV女優とかAV監督に何の偏見も持たなくなってしまったら、単純に仕事の単価が下がってしまうんですよね。そもそも僕は道の真ん中に出て行くとすぐ車に轢かれるタイプだし、路肩の排水溝の方があってるんだよ(笑)。だから、このポジションで良いかな。排水溝の方が面白いし。

— そうは言っても一般作のオファーも年々増えてきているでしょうし、オファーを全て請けている訳では無いですよね。松尾さんの撮る、撮らないの基準ってどこにあるのでしょう。

松尾:大前提として出来ることと出来ないことはあるよね。「ドラマを撮ってください」って言われても作れないので(笑)。あとは結局のところ、頼まれ仕事は人と人との付き合い・繋がりって部分で請けていることが多いのかも。頼んでくれた人に対して面白いお返しが出来そうだったら撮るし、そうでなければ撮らない。何事も人間関係あっての上で、って気はします。

— AV以外でのお金の稼ぎ方って考えたりしますか?

松尾:本当に何も考えてない(笑)。

— 今はPornhubとかFC2とかで素人のカップルが自分たちのハメ撮りを配信して、月に何百万も稼いでいる時代な訳で。勿体無いですよ、松尾さん(笑)!。

松尾:だからさ、そういうところが”おじさん”たる所以なんだよね。分かっちゃいるけど、全然やる気が起きない(笑)。そもそも真剣にそういうことを考えていたら、もっと早く何かやってると思うよ。お金を稼ぎたいだけだったら、既に正規のAVってカテゴリーにはいないと思う。上手く言えないけど、今でもAVでお金を稼いでいるって感覚はあまり無くて。ずっと”狭いラーメン屋”を理想としているっていうか。

— どういうことですか(笑)。

松尾:狭くて、小さくて、ちょっと風変わりな店主がいるラーメン屋。看板が派手だったり、時代にあわせて色々やってるよねってお店じゃなくて、相変わらずのメニューで何の告知もしてないけど、いつも必ず何人かお客さんがいるよねっていうラーメン屋を理想としてるから。最低限の暖簾と小さなお店を維持していくっていうところに自分なりの美学というか、魅力を感じてるんだと思う。大きいお店を経営する勇気が無いだけなのかもしれないけど(笑)。でも、それで良いかなって。もともと自分に自信がある人間では無いですから。

— オンラインサロンとかはどうですか?

松尾:他の人に以前にやれって言われたんだけど、やらないかな。それをやっている自分が嫌だ(笑)。商業目的じゃなく、面白いことをやれるなら良いけどね。それでお金を稼ごうって気は全く無いです。なんだろうね、経営的な視点を持ちたくないのかな。予算とか見積もりとか、お金を使う時の計算はすごい早いんだけど、お金を稼ぐ計算は苦手なのかも。お金を使うのは好きだけど、増やすことには興味が無いんだね(笑)。

— じゃあ、次の10年も松尾さんは変わらずにマイペースで?

松尾:そうだね。コツコツと。ラーメン屋の頑固親父みたいに出来たら良いな。

— では、最後に松尾さんにも劇中に出てきた”この質問”を。コロナ禍が終わったら何をしたいですか?

松尾:コロナうんぬんよりも、今抱えている某一般作品の編集が結構大変で。それが終わったら、僕も海に行きたいな。

劇場版 おうちでキャノンボール 2020

2022年4月23日(土)~5月13日(金)新宿 K’s cinemaにて公開 ※連日21時より。4月30日以降のタイムテーブルは未定
監督:カンパニー松尾
出演:カンパニー松尾、バクシーシ山下、梁井一、嵐山みちる、黒田悠斗
2022年/日本/109分/カラー
企画・制作・配給:有限会社ハマジム
©2022 hamajim,co.ltd

■『テレクラキャノンボール』シリーズ特集上映
4月23日(土)『劇場版 テレクラキャノンボール 2013』(上映時間:132分)
4月24日(日)『劇場版 BiS キャノンボール 2014』(上映時間:120分)
4月25日(月)『劇場版 アイドルキャノンボール 2017』(上映時間:135分)
4月26日(火)『劇場版 テレクラキャノンボール 2013』(上映時間:132分)
4月27日(水)『劇場版 BiS キャノンボール 2014』(上映時間:120分)
4月28日(木)『劇場版 アイドルキャノンボール 2017』(上映時間:135分)
※連日18時30分より

お金がないとか、こんなご時世とか、いろんな意味でもうヤル気がなかったんですよ、公言してた2020年のテレクラキャノンボールは。そしたらパンデミックになって、オリンピックが延期になって、緊急事態宣言が出て、AVもストップして、まあゆっくりするかと思ってたら、声がかかったんですね、4月に。
「こんな時期だから撮れる企画ないですか?」って。
そしたらパッと思いついたんです、2020年5月しか撮れないテレクラキャノンボールを。それからは早かったですね、リモート会議2回して、レースを2日。舞台は東京、SNSや出会い系を使って、ソーシャルディスタンシングを守った非接触のフルリモートナンパレースです。(何のことだかさっぱりわからないと思いますが)
7年ぶりのテレクラキャノンボールです。メンバーは、人生いろいろあって変わりました。今回、新たな刺客が現れます。実際のレース中は、メンバー誰とも会ってません。それでも面白いのが撮れました。あの2020年5月の東京と、その地上を飛び交う交信と地下を行き交う人々の営みです。それに何の意味があるかはわからないので、みなさまの目でお確かめください。
ヤルかヤラナイかの人生も、コロナですっかり変わりました。最後、「コロナが終わったら海に行きたい」と、出演者のひとりが言いました。そんな感じの映画です。
興味ある方は気軽に見に来て下さい。ただし、お忍びで。人目をはばかり、スクリーンでお会いしましょう。
2022年春、カンパニー松尾。