ストリートでダンスや音楽をパフォーマンスする人もいるけど、服を着ることもそれと同じで、自分という人間を表現するための手段なんだと思う。
まず一人目はパリを拠点に活動するNabile Quenum。「ジャケットを無くしました」という意味のユニークなネーミングが付けられた彼のブログ「J’ai Perdu Ma Veste」では、色とりどりの自由で個性的な活き活きとしたファッションが切り取られている。自らも被写体として写真を撮られるほど純粋にファッションを楽しむ彼だからこそ“今の感覚”を撮ることができるのかもしれない。
— ブログを始めたきっかけは?
Nabile Quenum(以下、Nabile):ずっとファッションとそれに関わる人や写真に興味があったんだ。だからそれを表現する場としてブログを始めたことは、ごく自然なことだったよ。
— なぜストリートで写真を撮り始めたんですか?
Nabile:自然な成り行きだったんだ。3年前にパリでストリートスタイルを撮り始めたんだけど、当時は今みたいなスタイルではなくて、ウィリー・ロニやロベール・ドアノーのスタイルのような、街中のリアルな光景としてのファッションを撮っていたんだ。毎日パリ中を歩いて写真を撮っていた。ある日ベルシーという町にいて、いつものように写真を撮っていたら5分も経たない間にスタイリッシュな人で辺りが埋め尽くされてしまったんだ。それで夢中になって写真を撮っていたら、なんとリック・オウェンスのショーが始まって。ありがたいことにショーを見させてくれたんだ。その時の興奮が忘れられなくて、それからずっと写真を撮り続けているよ。
— 自身のブログを通して何を表現したいと思っていますか?
Nabile:服を着ることで見えてくるその人の内面を、写真を通して見せて行きたい。その魅力というのは、服のデザインと着る人の個性がミックスされたものなんだ。実際に服が動く姿を見るとそのデザイナーの意図が見えてくるけど、着る人の持つ雰囲気や個性とミックスされることで更なる魅力が出てきて………。そういったものの魅力が強ければ強いほど、思わず「ワオ!」と叫んでしまうんだ(笑)。
— 写真を撮ろう!と思わず手が動いてしまうような被写体ってどんな人ですか?
Nabile:こういうタイプの人に惹かれる、というものがあるわけではないんだ。定義できるものではないからね。歩き方やストリートでの身のこなし方、行き方や服との関わり方も全て表れるし。例えて言うなら・・・たくさんいるけど、Julie Pelipas、Soo Joo Park、Laetitia Paul、日本人だと、秋元梢や栗原類も魅力的だと思うよ。
— フォトグラファーから見て、どんなファッションが面白いと思いますか?
Nabile:トレンドをフォローせずに独自のスタイルを貫くブランドに興味があるね。たとえば[KTZ(ケーティーゼット)]みたいなブランドは面白いと思う。ずっと前から好きなブランドだったから、ショーに参加できる機会があったのは嬉しかったよ。もちろんフォトグラファーという立場上、あらゆるブランドやファッションを見ているけどね。
— 「ストリート」という言葉の定義は人それぞれだと思うのですが、あなたにとって「ストリート」とはどんなものですか?
Nabile:僕にとって「ストリート」とは、自分のしたいように自分自身を表現できる場所ということかな。ダンスや音楽をパフォーマンスする人もいるけど、服を着ることもそれと同じで、人に向けて自分という人間を見せるという表現手段なんだと思う。
All photos on this page credit to “J’ai Perdu Ma Veste”.
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