2012年春のブランド大特集 VOL.02:[Porter Classic&KICHIZO]

by Mastered編集部

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当編集部が厳選した今シーズン注目のブランドに毎週1ブランドずつご登場いただき、新作アイテムの紹介とデザイナーへのインタビューを5週連続で実施していく“2012年春のブランド大特集”。第2回目となる今回は2007年よりその活動をスタートさせ、“メイドインジャパン”をコンセプトに掲げた独自のもの作りで急速に全国各地でファンを増やしている[ポータークラシック(Porter Classic)]と、同ブランドの手掛ける鞄に特化したプロジェクト[KICHIZO]にご登場頂きます。
吉田克幸氏、吉田晃務氏、吉田玲雄氏の3名が共同でデザインを行っていることで知られる同ブランドですが、今回は晃務氏と玲雄氏のお二人に独占インタビューを実施。旗艦店、ポータークラシック 銀座の位置するインターナショナルアーケードにて行われたインタビューは店舗同様、ピースでハッピーな雰囲気に包まれた笑いの絶えないものとなりました。
それでは早速ですが、日本の技術が詰め込まれた春の新作とともにゆっくりとご覧下さいませ。

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「どんなものを作ってもベースにあるのは「温かみ」なんですよ。物に対する克幸の愛情があるんです。」(吉田玲雄)

— 本日はよろしくお願い致します。これまでにも何度かMasteredではポータークラシックさんのアイテムはご紹介させて頂いているんですが、こういったインタビューにご登場頂くのは初めてですので、まずはこのポータークラシックというブランドをスタートさせたを経緯から伺っていってもよろしいでしょうか?

玲雄:5、6年前にうちの父(克幸氏)が食道がんになってしまいまして。治療に専念するために、それまでずっとやっていた鞄のデザインの仕事を1度そこでやめたんですね。結果手術をして、それが幸いにも良い方向に転んだんですが、少し時間が経つとやっぱり「物作りがしたい」という想いが本人の中で再燃してきたようでして。その想いを僕が聞いて、やるんなら二人で何か新しいことやろうよって提案をした。そこからですね、ポータークラシックが始まったのは。
父は鞄以外にも洋服だったり、本だったり、アクセサリーだったり、色々な分野に興味がある人だから、別に鞄にこだわらなくても面白いことができるんじゃないかなと思って。それで洋服にもチャレンジすることに決めたんです。

— ブランドをスタートしてから今年で5年目を迎えますよね。自分たちで新しくブランドをスタートするというのはまた感覚が違うと思うのですが、実際にやってみて感触はいかがですか?

玲雄:決して簡単では無いですよね。ヒストリーが全く無い、ゼロの状態から始めるのは本当に大変な経験でした。分からないことだらけで、とにかく最初は転びっぱなし。だけど色々な人に助けてもらったし、そういう人たちの力があったからこそ4周年、ショップも無事に3年目を迎えることができましたね。

— 続いて今シーズンのアイテムについてお話を伺えればと思います。まずは『スーパーナイロンシリーズ』の登場が大きなトピックだと思うのですが、これはどういった発想で誕生したものだったのでしょうか?

吉田晃務
1964年東京生まれ。Porter Classic 取締役。
数々のミリオンセラーを世に送り出し続ける鞄業界屈指のヒットメーカー。2010年1月Porter Classic取締役、チーフデザイナーに就任。
2010年5月カバンブランド「KICHIZO by Porter Classic」プロジェクトをスタート。

晃務:さっきの話の続きになりますが、僕は途中からこのブランドに参加してるんです。もともと僕は克幸に憧れてデザインの仕事を始めてから、20年くらいずっと弟子をやっていたんですよ。だから物作りにおいて、克幸の好きな物とか、嫌いな物って自然と分かるんですよね、特に嫌いなものは(笑)。
そういう部分では普通の親方と弟子よりやりやすいのかもしれません。で、そんなこんなで、もう2年ぐらい一緒に服や鞄を作っているんですけど、結局のところ、これといったジャンルがないんですよ、克幸という人間には。例えば、いま僕が着ているこの剣道着のパーカも、一応“和”なんですけど、全然“和”になっていないですよね。アメリカも好きだし、イギリスも好きだし、フランスも好きだし、もちろん日本も好きだし、チャイニーズも好き。これっていうものが無いんですよ。

同じように克幸は、コットンもデニムもキャンバスも革も好きなんですけど、意外とナイロンも好きなんです。でも良く考えてみると、ナイロンってとにかく軽くて強度が強くて、軍モノにも使われるくらい便利な素材ですけど、これといった進化が無い。だから、それを進化させたいよねって話を克幸としていて。じゃあ、僕らが次に好きなものは何かって考えたら、もちろん着心地の良さとかもあるけれど、とにかく色が褪せているものが好きだと。それでナイロンでも同じ事が出来ないものかなと実際にやってみたんですが、デニムみたいに上手く色落ちしない。だったら最初から白で作って、それを逆に染める。染めの段階から日本の藍染めみたいに、インディゴでやっていったら良い味が出るんじゃないかなと思いついたんです。で、生地からテストで作っていったんですけど、意外とできちゃったんですよ、これが(笑)。

一番の問題だったのは“堅牢度”っていって要は色落ちに対する強さみたいなものなんですが、それも見事にクリアできて。恐らく、世界初だと思いますよ。鞄は中身を保護するために中に綿を抱かせたんですが、それ以外は全てナイロンで出来ているので軽いし、すごく楽ですよ。ナイロンともコットンとも違う光沢が出たし。色落ちやパッカリングとか、インディゴの味が上手く出ています。僕らは“楽”が好きなんで、今年の夏はあれにTシャツにビーサンで決まりですね。(笑)。

— ものすごくたくさんの苦労が詰まったアイテムなんですね。生地は何回も作り直したんですか?

晃務:もう嫌になるくらい(笑)。
まぁでもどのアイテムもそうですね。簡単には出来ないですよ。だから、協力してくれる材料屋さんとか、しぶとくトライしてくれる協力者の方々は本当に僕らの宝です。

— 3人の中で具体的に役割分担は決まっているんでしょうか?

玲雄:基本は決まっています。あとはそれぞれ助け合ってというか、足りないところを補って。

晃務:企画とかはみんなでやってる感じですね。生地屋さんに手配するのが僕だったり、そういった細かい役割はありますよ。どういう物を作ろうかとか、どういった方向でいこうかといった大枠のところはみんなで考えています。若手の意見も取り入れられるように。

玲雄:そうですね。ショップの子も含めて、若い人の意見は積極的に聞くようにしています。

晃務:克幸自身が好きなんですよ、若い子の意見を聞くのが。

玲雄:よく言ってますよね、「じじいは嫌いだ」って。

一同笑

— その辺りは洋服を見ていても伝わってきますね。ところで服を作る工程って、人やブランドによって全然違いますよね。ポータークラシックの場合はどういった工程で作業を進めていくのでしょうか?

晃務:これも克幸の企画のやり方というのは昔から一貫していて、生地から入る場合もあるし、ボタンだとかファスナーだとかのディテールから入る場合もあるし、ミリタリーだとかテーマから入る場合もあるし、国から入る場合もあるし、毎回、全く入り方が違うんです。ただ自分が気になるもの、いわゆる“ネタ”といいますか、生地1つとっても、この生地とこの生地とこの生地って、そういうネタを自分の引き出しの中にいっぱい持ってるんですよ。同じくディテールもいっぱい持ってるんです。もちろん、縫製とかそういう細かいところも。で、いざ、こういう感じのものを作りたいなぁって時にその引き出しを開けまくるんです。1度見たネタを絶対に忘れない人なんですよ。「10年前にパリのあそこで見た!」とか、しぶとく覚えてるんですよね(笑)。

— 『剣道着シリーズ』然り、今回の『スーパーナイロンシリーズ』然り、全く違う素材を使いながらも、どの商品を見ても、これぞポータークラシック、これぞKICHIZOというのが消費者に見えるのは本当にすごいことですよね。

玲雄:どんなものを作ってもベースにあるのは「温かみ」なんですよ。物に対する克幸の愛情があるんです。何かを流行らせようとか、そういうところからはじめている洋服では無いので。「ほんとにすげえ生地だな」っていう純粋な思いがそこにあるんですよね。

晃務:大量生産みたいな匂いがないですよね、うちは。

— 今までお話頂いた通り、ポータークラシックのアイテムは毎回生地が大きな特徴の1つになっていると思うのですが、3人の中で「この生地は良い」とか、「この生地はあんまりだね」という共通意識というか、コンセンサスはとれているものなのでしょうか?

玲雄:うーん、やっぱり血がね…

一同笑

晃務:それはでもとれてるよね。

玲雄:やっぱり長続きするもの、残るもの、スタンダードな物っていうのが我々が一番惹かれる物ですね。

— ポータークラシックは“メイドインジャパン”をコンセプトに掲げていますが、やはり震災は物作りのうえでも大きなターニングポイントになったのでしょうか?

晃務:僕は実際に現地に足を運んで見て来ましたが、本当に言葉に出来ないくらいショックでしたね。うちみたいな小さな会社だと、なかなか大きなことは出来ないんですが、小さくてもいいから、なるべく工場に仕事を出してあげたいって気持ちでいっぱいです。

玲雄:ちょっとでも“メイドイン東北”のアイテムをね。ワイシャツが3月に出る予定なんですが、今後も出来る範囲で支えていきたいですね。

晃務:続けてあげたいですよね。復興っていう作業は10年とか、そういう長いスパンで行われるわけじゃないですか? だからその間、仕事をちょっとでもいいから出し続けてあげたい。

玲雄:“メイドインジャパン”はうちからしたら当たり前なんですよね。国内にこれだけ素晴らしい技術があって、素晴らしい工場があって。それで他の国より100円高い、1,000円高いだとか、我々はそういうところにこだわっていないんです。

晃務:何か理由があるのかもしれないけれど、作り手としてどういう工場で、どういうミシンで、どういう人が縫うのかってことを見ないのはおかしいじゃないですか。あとは修理ができないんですよね、海外製品は。特に鞄は壊れることが多いですし、洋服も僕らは色が褪せても一生着てほしいと思ってますけど、やっぱりコットンだから段々とすり切れてきたり。でも日本製なら直せるんです。材料も日本製、工場も日本でやってるから「1ヶ月お時間いただけますか?」って言えば直るじゃないですか。その辺も含めて、使い捨てになってしまうような海外製のものにはちょっと賛成出来ないですね。手配する時の微妙なコミュニケーションというのも、同じ日本人だからとれる訳じゃないですか。コピーみたいに「これと同じ物作って」って言うなら関係ないですけど、
「もうちょっとこう丸くならないかな」とか、「もうちょっとこう…じわっとした感じに…」っていう言い方も日本人だからこそ通じるわけで。

玲雄:サンプルを頼んで、全然違うものがあがっちゃったりすることって結構あるんですよ。で、そういう時、克幸と俺は露骨に顔に出ちゃうんですけど、うまいんですよ(晃務は)、それが。

一同笑

玲雄:それですごく助かってはいるんですけどね(笑)。

— 実際に鞄とかを修理のために、店頭にお客さんが持ち込むケースっていうのはあるんですか?

晃務:あります、あります。もちろん100%対応します。

— 先ほど「メイドインジャパンは当たり前」という話が玲雄さんからありましたが、玲雄さんは海外でもたくさんの物を見ていらっしゃいますよね。海外の物と比較しての日本製品の魅力というのはどんなところですか?

吉田玲雄
1975年東京生まれ。Porter Classic 取締役。1993年高校を卒業後渡米。ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコの大学で映画と写真を専攻。写真家ラリー・サルタンやビート詩人マイケル・マクルーアのもとで学ぶ。2003年サンフランシスコ・アート・インスティテュート大学院卒業。2006年ハワイ島ホノカア村で過ごした自身の経験談、『ホノカアボーイ』刊行。2009年映画化され全国東宝系でロードショー。2010年7月世界初HOBOカルチャーをテーマにした写真集『The HOBO STYLE』を発表。

玲雄:やっぱり、ベースにあるのは先祖代々ずっとやってきた鞄ですよね。それを見て育ってきてるから、わかりやすい。外に行ってみると明らかになることはいっぱいあるし、剣道着だって海外の蚤の市で見て、克幸が感動したことがきっかけな訳ですし。日本だったらたぶん気づいていないんじゃないかな。あとはあれ、ワールドカップとか、そういう時に日本人ならやっぱり日本応援しちゃうでしょ? 要はあの気持ちなんですよ。だから、ああいう気持ちがあるのに普段は全身海外のメゾンブランドを着てる人とか、俺信用できなくて(笑)。

— 親子で洋服作りをしてる方ってなかなかいないと思うんですが、玲雄さんから見て、仕事をしている時の克幸さんというのはどういう方ですか?

玲雄:純粋にすごいなと思いますね。さっき話した引き出しの多さはもちろん、あぁそう考えてたんだって感心することがたくさんあります。ただやっぱり、若い子が好きっていう気持ちを持ってるから、一緒に仕事をしていても意見を聞いてきますよね。僕もつい言い方がきつくなってしまう時もあるけど、不思議とぶつからないんです。それが良い感じに収まるというか。まぁぶつかる余裕がないんですけどね、スタッフも少ないし(笑)。
あとはやっぱり、サボってないですね。常に、映画を見ても、飯食ってても、仕事のことを考えてる。

— プライベートでもお仕事の話をされたりするんでしょうか?

玲雄:どこにアイディアが落ちているかわからないので。例えば、孫が七五三に来て「あっ!」てなることもあるし。一緒に仕事して会社をやってるんですけど、スイッチがオフの時がないですね。

— 仕事とプライベートに境界線が無いわけですね

玲雄:そうですね、ないよね?

晃務:ないね。僕が弟子になったとき、まず最初に言われたのってそれなんですよ。「24時間考えてろ」って。もちろん最初は言われてもそんなことできなくて。6、7年は掛かったかな? でも見事にそうなっちゃいましたよね。この前克幸と、久しぶりに映画でも見に行こうかって話になって、2人で戦争映画を見たんですよ。久々に軍モノを見たんだけど、昔と比べると、当然今の装備ってすごいじゃないですか? だから、その装備に感動しちゃって(笑)。
映画を見ても2人ともそういう目で見ちゃうんですよね。映画館を出た後に、「晃務、あれメモった?あの戦闘シーンの」って。

一同笑

晃務:全く同じところを見てるっていう。あぁ、やっぱり気づいてた? みたいな(笑)。
まぁ逆に言うと映画に集中できてないんですけどね。

— インスピレーションは日々の生活の様々な場所から受けているんですね。話は戻りますが、ポータークラシックの掲げる“メイドインジャパン”の究極形というのが今回の種からコットンを作った、一連のシリーズなのかなという印象を受けました。あれは以前から仕込んでいたんですか?

晃務:そうですね、KICHIZOのデビュー作というのがテキサスのオーガニックコットンを使ったアイテムなんですが、その時にオーガニックコットンの勉強をしたんです。で、分かったことが、結局大事なのは“土”なんですよね。微生物とか薬品が土を殺しちゃう訳ですよ。その土が元に戻るまでにかなりの時間が掛かる。だから土をちょっとでも保護した方がいいってことが分かったんですよ。そんな勉強をしてたら、それを実際にやってる人が栃木県にいるっていうんです。日本で和綿なんて作っても、商売にならないですから本当に驚きましたね。そこにある人の紹介で行ったんですが、そしたら結構気があっちゃって、そこのおじさんと(笑)。
その後、向こうもお店に来てくれて、うちがやってる姿勢を認めてくれまして。じゃあ、一緒に何かやりましょうってことで、種まきに行ってね。収穫して。全部メイドインジャパンで原料から出来ちゃったんです。
今の若い人たちは、洋服が農業から出来てるなんて思ってないでしょうからね。そういう意味でも今回は面白かったんじゃないかな。これはもう毎年続けていきますよ。ワインじゃないですけど、何も肥料を与えないコットンなんで、年によって全然違うんですよ。長かったり短かったり、手触りも。だから同じ土地でそれをずっと続けていくのも面白いなって。

WAMEN by Porter Classic from EYESCREAM_TV on Vimeo.

— 現在、海外のお店と取引はされているのでしょうか?

玲雄:香港で少しやっていますね。でも一気にやらずに、本当に良い関係でやれるお店とだけやろうと思って。

— 海外でもかなり受けが良いんじゃないかと個人的には思うのですが

玲雄:フランスとかヨーロッパは、いつかやりたいですよね。

晃務:海外に行くとものすごい頻度で声を掛けられますね。セレクトショップとか、いろいろ回ると、必ずマネージャーがすっ飛んできて「それどこの?」なんて言われて。

玲雄:「ファンです」っていうのもありましたね。日本の雑誌を見て既に知ってたみたい。

— まぁでも実際の展開はもう少し時間をかけて?

玲雄:そうですね、やっぱり信頼関係とかね。そういうのはしっかりしてから取引をしたいかな。

— なるほど。少し話は変わりますが、鞄って今はブランドも価格帯も多種多様で、消費者の選択肢がすごく広いものじゃないですか? KICHIZOではたくさんあるバッグの中からお客さんに選んでもらう付加価値はどのように付けているんでしょうか?

晃務:僕はあまり付加価値って考えないんですよね。付加価値より真価の方が良いんじゃないかなと思うんです。海外ブランドの鞄が何十万とかで売ってますけど、僕から見たらあれも嘘で。もちろん、すごく安くてすぐ壊れちゃう鞄も嘘で。当たり前に作って、当たり前の値段になったっていうのがKICHIZOの鞄なんですよね。はじめからこの価格帯を狙って作ろうってなると、材料の範囲も狭まるし、もっと安い金具を使わなきゃならないとか、色々あるじゃないですか。それもどうかと思うし、まあ関税とかもあるんでしょうけど、高いブランド物がなんでこんな値段になるんだろう、って悔しい思いをしたことはありますよね。だから、好きな素材で、好きなデザインで、好きな縫製で作ったらこの値段になりましたっていう。“普通”の積み重ねですね。

玲雄:一緒に鞄屋に行くと面白いですよ。他社の鞄を解説してくれるんですけど、うちのやってることは全然違う。

晃務:他社と比べると一発でわかるんですよね。でも他社と並べて表には出せないじゃないですか。ここがこう違うんですよ、って(笑)。

— そこはやっぱり選ぶ側の目が試されるところでもありますよね。晃務さんが考える“良い鞄の条件”というのはどんなものなのでしょうか?

晃務:普通に耐久性だとか、軽さだとか大切な要素はたくさんあるんですけど、そうだなあ…でもやっぱり「お客さんが喜んでくれる鞄」じゃないですかね。僕はあまり作り手側の自己満足みたいなものが好きじゃなくて。この年になってもまだまだ勉強ばかりなんで、謙虚な気持ちでやっていくしかないですよね。玲雄はどんなものが良い鞄だと思う?

玲雄:飽きない鞄だね。飽きちゃう鞄っていっぱいあるんですよ。本当に飽きちゃうの、愛情を持てなくて。

晃務:克幸も僕らも変わった物を作る気はないんですよ、特に鞄となると。三角の鞄とかまん丸の鞄とか、形で相手をびっくりさせるような、そういう鞄って飽きちゃうんですよね、使いにくいですもん。だからいつもベーシックなものを作ろうとするんですけど、実はさっき話したナイロンのシリーズも世の中に無い。そういった意味では変わってるのかもしれないですけどね。で最後に“定番”であることですよね。[リーバイス®(Levi’s®)]の501とかすごいと思いますもん。世界の大定番じゃないですか。国も関係ないし、年齢も関係ない。そこに持っていきたいですよね。

— 最後に今後の目標というか、ブランドの理想像を語っていただいてもよろしいでしょうか。

玲雄:世代を超えてわくわくできるような、感動がある場所にしたいですよね。本当に洋服を着て気持ち良いだったり、そういう感動。克幸の言葉を借りるなら愛情とか、そういうことが伝わるようなブランドにしたいですね。ピースなブランドに。

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