2012年春のブランド大特集 VOL.01:[Needles]

by Mastered編集部

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昨年末より続いたセールもいよいよ終盤戦を迎え、既に春夏が立ち上がったブランドもちらほら。こうなってくると冬のセールでの買い物のことなどすっかり忘れ、春夏はどんな服を買おうか、どんな格好をしようか、と頭が一杯になってしまいますよね。という訳で突然ですが、Masteredでは昨シーズンも実施し、大好評を博したブランド大特集を本日より5週連続で実施! 当編集部が厳選した今シーズン注目のブランドに毎週1ブランドずつご登場いただき、新作アイテムの紹介とデザイナーへのインタビューを掲載していきます。
そして、本企画の栄えある第1弾としてご登場いただくのは、渋谷の老舗セレクトショップ「ネペンテス(NEPENTHES)」の創業者であり、業界内にも数多くのファンを持つ清水慶三氏と、自身がデザインを手掛けるブランド[ニードルズ(Needles)]。
“Rebuild To The Last”というテーマを掲げ、リメイクライン『Rebuild by Needles』の登場も大きなトピックとなったその最新コレクションを清水氏へのインタビューと共にじっくりと紐解いていきます。それでは皆様、春夏シーズンの予算をしっかりと計算しつつ、お楽しみ下さい。

Photo: Takuya Murata
Interview&Text:EYESCREAM.jp

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「年代的に自分の意識がいわゆる“ディスカバリージャパン”なのだと思います。」

— 今シーズンの大きなトピックとして、まずは新登場のリメイクライン、『Rebuild by Needles』の存在があるかと思います。これはどういった経緯で誕生したものだったのでしょうか?

清水:もともと自分自身が着る物をリメイクするのが好きなので、いずれはやりたいと思っていました。レディース店のライラ(LYLA)ではオープン当初からリメイクアイテムを作っていましたし、ネペンテス ニューヨーク(Nepenthes New York)のオープンの際にも展開しました。ニードルズでもずっとリリースのタイミングを考えていたのですが、今回は震災の影響もあり、“日本の再構築”という意味も込めて出すことを決めました。Rebuildという言葉には、再構築するという意味合いがあるので。

— Rebuild by Needlesのアイテムを見ていくと1点1点、非常に手間がかかっていて驚きました。製作のうえでかなり苦労したのではないでしょうか? また生産は日本で行っているのでしょうか?

清水:ベースにしているのはアメリカのデッドストックや古着ですが、生産は全て日本で行っています。カスタムメイドのような形になるので、縫製工場の人はとても苦労されたと思います。

— Rebuild by Needlesというプロジェクト自体は今後も継続して展開される予定ですか?

清水:そうですね、しばらくは継続してやっていきたいと思っています。

— 今シーズンのテーマは“Rebuild To The Last”。先ほど東日本大震災のお話がありましたが、このテーマに込めた想いのようなものがありましたら差し支えない範囲でお教えいただけますでしょうか?

清水:色々な意味合いにとれるテーマかと思いますが、壊れたもの、着られないものを再構築するという意味合いが強いです。

— 春夏のラインナップの中で清水さんが特に気に入っているアイテムがあれば教えて下さい。

清水:全部気に入ってるので、個別のアイテムを挙げるのは難しいですが、“ロングスリーブ・シャツ×ショーツ”という組み合わせが特に気に入っています。

— 今シーズンのプロダクトには“泥染め“が施されたアイテムも多く見受けられました。これには何か特別な理由があったのでしょうか?

清水:自分の世代的にタイダイや染めもの全般が好きで、日本の伝統的な染めにも以前から興味がありました。数ある染めの中から今回“泥染め”を使ったのは、今シーズンをイメージしている時期に東日本大震災があったことが大きく影響しています。自然と白と黒をテーマカラーに選んだ結果、奄美大島の泥染めを選んでいました。

— なるほど。天然の染めや素材を使ったアイテムの魅力はどういったところにあるとお考えでしょうか?

清水:“人の手のぬくもり”と“やさしさ”ではないでしょうか。

— 染めものに限らず、毎シーズン、ニードルズでは“和“を感じるアイテムがリリースされていますよね。今回はその傾向が特に強かったようにも思うのですが…

清水:なんでしょうね…年代的に自分の意識がいわゆる”ディスカバリージャパン”なのだと思います。

— ニードルズの定番というと、他には“柄もの”も特徴的ですよね。清水さん個人的にははどんな柄がお好きなんですか?

清水:基本的に嫌いな柄はありません(笑)。
でも、タイダイ柄とアニマル柄は変わらず、ずっと好きですね。

— 一方でニードルズのプロダクトやネペンテスというお店を語る際、“アメリカ“というキーワードも欠かせないものかと思います。清水さんの考えるアメリカの一番の魅力はどんなところでしょうか?

清水:たしかに自分自身アメリカは大好きですし、大きなキーワードです。あえて一言で魅力を言うのなら、自由、“FREEDOM”でしょうか。

— ネペンテスからは大器さん([エンジニアド ガーメンツ(Engineered Garments)]のデザイナー、鈴木大器氏)や宮下さん([タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloIst.)]のデザイナー、宮下貴裕氏)をはじめ、様々なデザイナーの方が巣立っていっています。特に意識はされていないのかもしれませんが、人材育成のうえで何か気を配っていることやご自身の中での決まりごとのようなものがもしありましたらお教え頂けますか?

清水慶三
1958年生まれ。山梨県出身。某社に入社後、渋谷に名店「レッドウッド」をオープン。バイイングの経験を積んだ後、独立し、1986年に自身のブランド、ニードルズをスタート。1988年にはネペンテスを創業し、以降20年以上に渡り、国内外のファッションシーンを牽引し続けている。ニードルズはもちろん、ネペンテスで展開されている様々なブランドのディレクションも手掛けており、ドメスティック、インポート、古着、和物、カルチャーに至るまで、その見識は多岐に渡る。

清水:残念ながらお察しの通り、特に何もありません(笑)。
ただ、そういった人間は一緒に仕事をするとすぐに分かります。

— ネペンテスがオープンした頃とは渋谷の街も大きく変わっています。清水さんの眼に今の渋谷の街はどのように映っていますか? 当時の魅力は現代でも失われていないでしょうか?

清水:自分がレッドウッド(RED WOOD)やネペンテスを作った頃は男子の街でしたが、今の渋谷は女子の街だと思います。どこまでを渋谷とするかという議論にもなりますが、ハチ公前からセンター街、パルコ辺りの中心地にはもう昔のような魅力はないですね。けれど、それ以外の場所にはまだたくさんの魅力があると思います。

— ネペンテス ニューヨークをオープンさせてから1年以上が経過しました。海外メディアにも連日大きく取り上げられ、評価も高いかと思うのですが、2店舗目を、というお気持ちはありますか?

清水:今は特にないですね。でも自分の場合、何かひらめきがあれば急に出店するかも知れません。具体的に場所を言えば、アメリカならばロサンゼルスか、サンフランシスコ。あとはやはりロンドン、パリも魅力的ですね。

— 海外のブランドも含めて今注目しているデザイナー、ブランドなどがありましたら教えてください。

清水:海外のブランドだと、シーズンによって面白いと思うデザイナー、ブランドは色々とありますが、いつも注目していて、変わらず好きなのは[ドリス ヴァン ノッテン(Dries Van Noten)]です。エンジニアドガーメンツもですね。日本ではやはりソロイスト、[サスクワァッチファブリックス(SASQUATCHfabrix.)]が面白いです。

— 最後の質問になりますが、読者の方の中にはネペンテスをキッカケにファッションを好きになったり、清水さんに憧れて洋服を作り始めた人、ショップをはじめた人も数多くいらっしゃるかと思います。もし可能でしたら、そういった方達に向けて何かメッセージやアドバイスを頂いてもよろしいでしょうか。

清水:特に何も言えませんが、みなさん、自分が好きな洋服を個性的に楽しんで、自分を貫いてもらえればと思います。

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