山、海、10代、植物、初恋。三宅唱監督最新作『ワイルドツアー』が3月30日より劇場公開

by Keita Miki

『Playback』、『THE COCKPIT』など意欲的な作品群を発表し、昨年公開された『きみの鳥はうたえる』も話題を呼んだ映画監督、三宅唱の手がける最新作『ワイルドツアー』が、3月30日(土)より、ユーロスペースほかにて、全国で劇場公開される。

©Yamaguchi Center for Arts and Media(YCAM)

染谷将太が監督を務めた短編映画『ブランク』と同じく山口情報芸術センター・YCAMが実施する映画制作プロジェクト『YCAM Film Factory』の一環として制作された作品の第4弾となる本作。

舞台は山口県山口市。実際にYCAMでおこなっている、採取した植物のDNAを解析し植物図鑑を作るワークショップを物語の出発点におき、そこで出会った10代の若者たちが、山や海へ”新しい種”を求めて探索しながら、自然と共に成長していく物語だ。

出演者は、ほぼ演技経験の無い10代の中高生たちが参加。監督と出演者が一緒になって脚本や演出を考えながら撮影を重ねてきた。フィクション作品でありながら、時に彼ら自身の成長の記録も映し出された、どこにもない珠玉の青春映画となっている。

作品詳細および三宅監督からのコメントもチェックしつつ、今から公開の日を楽しみにしておくとしよう。

映画『ワイルドツアー』

2019年3月30日(土)より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー
出演:伊藤帆乃花、安光隆太郎、栗林大輔 ほか
監督・脚本・撮影・編集:三宅唱
音楽:Hi’Spec
プロデューサー:杉原永純(YCAM)
リサーチ・照明:高原文江(YCAM)
録音:戸根広太郎、安藤充人(YCAM)
整音:弥栄裕樹
メインビジュアル撮影:ホンマタカシ
ワークショップ制作・監修:YCAM
YCAM Film Factory vol.4
2018年/67分/カラー/Stereo/©Yamaguchi Center for Arts and Media(YCAM)
主催:山口市、公益財団法人山口市文化振興財団
後援:山口市教育委員会
助成:平成30年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業
共同開発:YCAM InterLab
企画制作:山口情報芸術センター(YCAM)

YCAM Film Factoryのボス杉原氏から「最終的に映画でなくてもかまわない」という緊張感あるオファーを受けた。「なぜわざわざ映画をつくるのか」というゼロからの問い直しだ。滞在制作中、映画以前からある演劇やダンス、また地域での芸術教育プラグラム、そしてSFのような最先端テクノロジーやバイオラボに囲まれ、なぜ芸術(施設)が人生や社会に必要なのかを日々模索しているYCAMスタッフらと共に、映画の役割を探った。まずは日々のあれこれを記録するビデオダイアリーの手法から出発し、それをインスタレーション作品「ワールドツアー」として再構成しながら、ある時、僕らにはやっぱり物語や劇も必要だと気づいた。それを教えてくれたのは地元の中高生たちだ。21世紀うまれの彼らと山や海や街角でなにかを発見したり、セリフを作ったり、何度も演じたりしながら、ようやく映画を発見できた気がした。 高校受験やら将来やら恋やら、人生の岐路に立って日々真剣に生きている彼らの姿は野生の動植物のように格好いい。リアルとかナチュラルでは収まらない、人間やこの社会の「ワイルド」な部分を捉えたいと思った。ぜひ彼らと「発見のよろこび」を共有してほしい。 三宅唱