宇川直宏が語る自らのヒーロー、MASTERS AT WORK

by Atsushi Hasebe

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— 2016年のベストパーティーに前回のMAWの来日公演を挙げていましたが、その理由は?

宇川:僕のようなGOLD時代からの筋金入りのお客さんから、ヒップホップコミュニティーを経由してきた人たち、ガンガンとトラックメイキングしている若い世代、そしてパリピからお母さんへと変貌を遂げた女性たちに連れられて来た子ども達までいて、明らかに世代を超えて共有している暖かいハウス磁場をすごく感じまして……。常時泣きそうでした。重要なのは、パーティーの原点であるファミリーの概念。David Mancuso(デイビット・マンキューソ)のロフトは、マイノリティーを歓待して文化を生んだけど、去年のMAWにもその息吹を感じたんです。パーティーをオーガナイズしているPrimitiveの10周年ということもあって、さまざまな身の上の人が、音楽を通じて深い連帯を果たす。そんなピュアダンスミュージックを体感した、というのが理由のひとつ。あとは、その世界観にageHaというアミューズメント的な空間がピッタリハマったってこともありますね。だから、あの日はボクらのヒーローであるMAWの”リゾート・テーマパーク”で狂うほど遊んだという感じでした(笑)。日々、荒んだノイズや実験的なテクノばかりを浴びていると、ハウス/ガラージュの源泉であるソウルの領域や、そこに流れる愛に満ち溢れた波動。それらをチャージするためのフロアを身体が求めている、というのは常にあって、その効能を感じると細胞たちが活性化されてうごめきはじめ、身も心も踊り出す。そんな愛すべきパーティーでした。

MAW名義でのパフォーマンスは単純なバック・トゥ・バックではない。7台のCDJに2台のミキサーを横一列に並べて、同時に楽曲を紡ぐスタイルは長いキャリアを共にしてきた、この2人ならではのスタイルとも言える。

— 今年のMAWに期待している部分を教えてください。

宇川:もちろん、求めているのは、さらにディープなテーマパークですよ。彼ら2人の7台のCDJと2台のミキサーを駆使したプレイの中で、体感したことのないグルーヴに身を委ねる。そこで絶妙に生まる”ゆらぎ”と、それをサポートする音と光によって生み出される新しいハウスリゾート、ディープ・アミューズメントを体感したいですよね。いやー、本当に28年間MAWを愛してきてよかった!