宇川直宏が語る自らのヒーロー、MASTERS AT WORK

by Atsushi Hasebe

2 / 4
ページ

— なるほど。ちなみに、彼らの音源には、どういう印象がありますか?

宇川:まだMAWを名乗る前の89年にNU GROOVEから『Power House』がリリースされた時は、とにかくアセったよね。『フロアでロングミックスして彩色してよ!』とDJに手渡すかのように、ジャジーなブロークンビーツがループで数曲、ラフスケッチのような形で収録されていたんです。しかし、最近人づてにケニーの年齢を聞いて、さらにアセりましたよ。70年生まれだって、ボクより2歳年下。ということは、あのトラックをリリースした時って、彼、まだ19歳ですよ。いろんな意味で、ボクはとにかくケニー派だったんですよね。ケニーは、震災後の2011年にはSPINNAと共に『DOMMUNE』に出演してくれて、2013年にはソロでもプレイしてもらったし、去年は南インドでも会ったし(笑)。

— ちょうど「どちら派ですか?」という質問をしようと思っていたところでした(笑)。

宇川:今はLOUIE VEGA(ルイ・ヴェガ)派かもしれない(笑)。最初は、ケニーのドープでダビーな魔境に魅了されたけど、Nuyorican Soul名義のルイの世界観も、歳を重ねるとともに味わい深く感じるようになってきて……。アーティストもリスナーもお互いに“渋み”と“円熟味”を増して、深い部分に向かっているな、と。広く音楽全般を愛するピュア・ミュージックラバーとして、ボクのひとつの側面は、これまでMAWのふたりと一緒に歳を取ってきた気がしますね。だから、例えばTHE BLUE HEARTS、そしてTHE HIGH-LOWS、そこからザ・クロマニヨンズへと脱皮していくヒロトとマーシー、彼らと一緒に成長して行く実直なパンクスと同じですよ(笑)。そういう意味ではMAWのふたりは、ボクのヒーローですよね。