宇川直宏が語る自らのヒーロー、MASTERS AT WORK

by Atsushi Hasebe

クラブミュージックを語るには欠かせないビッグネーム中のビックネーム、MASTERS AT WORKの来日パーティーが昨年に引き続き 、本年もここ日本で開催される。 10年振りに実現した昨年の来日公演は、専門メディアでも2016年のベストパーティーに選出され、関係者やファンの間でも同様の声を多く聞く。 ライブストリーミングチャンネルである『DOMMUNE』の宇川直宏もその1人。 クラブ黎明期からシーンを見続けてきた彼が、なぜそこまでMASTERS AT WORKに魅了されるのか? その魅力について大いに語ってもらった。

Photo:Yasuhiro Hiruma、Text:Hideshi Kaneko、Edit:Atsushi Hasebe

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MASTERS AT WORK
ラテンやアフリカン、ジャズやダンスクラシックを背景に持つLOUIE VEGA (左)、ヒップホップやレゲエなどストリートミュージックがアイデンティティーのKENNY DOPE(右)。この2人によるユニットがMASTERS AT WORKである。両者の持ち味が合わさることに生まれるパフォーマンスは、今や世界的に見ても年に数えるほどしかない貴重な瞬間と言えるであろう。

これまでMAWのふたりと一緒に歳を取ってきた気がしますね。だから、例えばTHE BLUE HEARTS、そしてTHE HIGH-LOWS、そこからザ・クロマニヨンズへと脱皮していくヒロトとマーシー、彼らと一緒に成長して行く実直なパンクスと同じですよ(笑)。

— MASTERS AT WORK(以下、MAW)との出会いについて教えてください。

宇川:初めてMAWを体験したのは、1996年のサンフランシスコ。当時、ボクはサンフランシスコに移住したばかりで、“モニカ・ルインスキー事件前”のクリントン政権下のアメリカで、MAWのふたりが合体したパーティーを体験できるという恩恵を、有り難く浴びさせていただきましたね。もうトランスフォーマーのスクランブル合体ロボのように(笑)、単独では不可能な“ディープな馬力”を発揮していましたよ。単独ならば93年に芝浦GOLDで実現したKENNY DOPE(ケニー・ドープ)の初来日から参加していて、その時の彼のDJには度肝を抜かれました。当時、僕は21歳。95年にMAW Recordsが立ち上がるまでの90年代初頭の彼らはCutting Recordsから、今で言うところのEDIT的な方法論で、何にでも活かせるプラモデルの部品のようなトラックを2ケ月に1枚くらいのペースでリリースしていて……。タイトルでいうと『Jump On It』や『The Ha Dance』のような、まさにDJのための謎のトラック。ケニーの初来日は、そんな部品を一夜かけてどうやって組み立てれば、それまで見たことのない超絶なスーパー・ハウス・ロボットが立ち現れるのか? という、いわゆるガラージュ的な世界観とはまた違う壮大な男のロマンを感じました。