— ただ、木村さんがこれまでの作品で表現してきた近未来的な作風の対極にある素朴な作品世界には驚かされました。
木村太一:周りもそう感じたらしくて、「今回、木村太一が初めてコケるんじゃないか?」と思われていたみたいです(笑)。でも、撮影を進めていくうちに「なるほど!」ということになっていって、当初は”太一の夏休み”と揶揄されていたのに、気づいたら、”俺らの夏休み”ということになっていった(笑)。まぁ、でも、面白い題材というのは、これまでの経験してきたことや身近に転がっているものなんですよ。あまりに身近すぎて目に留まらなかったりするものを見つめ直す作業は、これまで発表してきた作品でも繰り返し実践してきたつもりですし、今回はこれまでの作品の対極にあるようで、冒頭と最後に盛り込んだアブストラクトな表現から僕とSeihoくんらしさも感じてもらえるんじゃないかと思いますね。
— 冒頭と最後のアブストラクトな映像と日本の田舎の風景のコントラストは作品における重要なポイントですよね。
木村太一:生音と電子音についてのSeihoくんの考え方を分かりやすくなくてもいいから、抽象的にでも伝わったらいいな、と。もし、作品の舞台が都会だったら、そのコントラストはそこまではっきりしたものにはならなかったと思うんですけど、田舎を舞台にしているからこそ、アブストラクトな映像によって、観る人の視点は現代にチューニングされるんですよね。あと、ぶっちゃけると、ジャケットのコンセプトについては、Seihoくんから撮影途中に聞かされたんですけど(笑)。すごく素敵だなと思ったのは、僕がやろうとしていたこと、Seihoくんがやろうとしていたこと、Levi’s®さんがやろうとしていたことが無意識のうちに同じ方向に向かっていたということ。そういう瞬間こそがもの作りにおける醍醐味だと思いますし、そのことが分かった瞬間、このプロジェクトは上手くいくと確信しましたね。