Mastered Suit Style:男は黙ってスーツでしょ。

by Mastered編集部

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Q1:自分のスーツスタイルのルーツを教えてください。

落合将一(以下落合):学生時代は一般の学生と同じようにほとんどスーツを着たことはありませんでした。伊勢丹に入社して、スーツ売場に配属されてからですかね、本格的に勉強するようになったのは。ちょうど、いわゆる“クラシコイタリア”といわれるテイストのものが注目をされ、例えば[リングヂャケット(RING JACKET)]だとか、フランコ・プリンツィバァリー(FRANCO PRINZIVALLI)]というようなブランドを伊勢丹でも扱うようになった時期で、こだわりの物作りと、その着心地に強く惹かれたのを覚えています。ですので、しばらくはクラシコテイストのスーツを好んで着ていましたし、今でもよく着ています。でも仕事柄、ブリティッシュやら、アメトラやら、色々と試行錯誤してきたのも正直なところですね。最近では、クラシック一辺倒ではなくて、自分のような華奢な体型でもきれいに着られて、もうちょっとモダンな雰囲気のスーツを着たいということで、今日着ている[インフォリオプラス(Infolio+)]や、[アタッチメント(ATTACHMENT)]とリングヂャケットがコラボレーションした、[クリエイターズカット ウィズ アタッチメント(CREATORS CUT with ATTACHMENT)]というブランドなど、モード感がありながらも、ビジネスでも着られるスーツを好んで着ていますね。

Q2:スーツを着るときに気をつけるポイントは?

落合:落合:やはり体型にあったサイズのものを着る、ということが最低限のポイントではないでしょうか。例えば首にきれいに吸い付くフィット感があるとか、肩がきれいに収まってまっているかとか、胸幅や前身に適度なゆとりがあるか、など。あと、パンツも結構重要で、シルエットがきれいに出ているか、クリースラインがきちんとセンターに落ちているかなど、というのも1つのポイントだとは思います。

Q3:スーツを着るようになって、何か変わったことはありますか?

落合:落合:細かいディティールや、その違いが気になり始めたということでしょうか。スーツってパッと見ではその違いがわかりにくいアイテムなんですよね。デザインや色も、一般的にはあまり奇抜なものが出てくるわけではないですから。でも実はよく見ると、毎シーズン、ミリ単位での変化があって、5年前のスーツを引っ張り出してきて、着てみようとするとやっぱりどこか違和感が出る。もちろんそれを超越したクラシックなスーツというのも存在しますが、そういった変遷というか、シーズンごとのわずかな変化を感じ取れるようになったのが、この仕事をして変わった部分ですかね。シーズンごとに見ると本当に僅かな変化ですが、5年も経つと素人目に見ても違いがわかるくらい、すごく大きな変化になっているんです。でもその僅かな変化が、ファッションなんですよね。

Q4:今日のスタイルにおけるポイントは?

落合:今日着ているスーツは、自分でパターンオーダーしたものなのですが、先ほどもお話したように華奢な体型なので、それに合わせてすっきりと見えるような着こなしを心がけました。シャツやタイも含めて、ややモード感のあるコンパクトな着こなしですね。ただ、靴は[エドワードグリーン(Edward Green)]のストレートチップを合わせ、チーフをTVホールドで挿すなど、クラシックなものを取り入れてバランスを取りました。常にモード感だけではなく、クラシックも意識して、モダンな着こなしというものを心がけていますね。

Q5:自分のスーツスタイルにおけるアイコンとなる人物はいらっしゃいますか?

落合:〔バタク(batak)〕というテーラーがあるんですが、そこの中寺さん(※編集部注:バタックの代表取締役であり、モデリストの中寺広吉氏のこと)の着こなしには一番影響を受けていますね。いつもクラシックなスリーピーススーツをお召しになっているんですが、大人の正統なスーツの着こなしというのを体現されていて、非常に勉強になりました。今でもバタクは、好きなブランドの一つです。

Q6:スーツを選ぶときのポイントを教えてください。

落合:Q2と同様に最終的にはサイジングが大切だと思いますが、まずは色々なものを試してみるということですかね。店員さんからのプレッシャーを受けながらも、気にせず試着しまくるということですね(笑)。あとは「この人格好良いな」と思えるスタッフに接客してもらうことですね。スーツってどんなに勉強したとしても、一人では買えないものですから。

Q7:昨年の震災以降、夏場のビジネススタイル=クールビズも変わってきたように感じられますが、クールビズについてはどのように考えていますか?

落合:お客さまにとっても、イセタンメンズにとっても非常にチャンスだと思っています。ファッションを楽しめるし、色々とご提案できるわけですから。イセタンメンズとしては、二軸提案しようと思っていて、一つは「スーツの好きな方」に向けた提案。クールビズだからどうということではなく、ファッションとしての夏のスーツは、しっかりとご提案していこうよという方向性ですね。もちろん毎日スーツというわけではなく、要はメリハリ、使い分けだと思うんです。ポロシャツで仕事をする日もあれば、ビシッとスーツを着る日もある。何か罰ゲームのようにスーツを着るのではなく、ポジティブに夏のスーツを楽しんで頂ければ嬉しいなと。ですから、上質さであるとか、天然素材の持つ昔ながらの快適性といった部分は大切にし、麻のスーツってこうだよね、とか、やっぱり夏はフレスコだよね、というクラシックな部分は残していきたいと考えています。そしてもう一方の軸は、ジャケットを含めたシャツ、パンツというものを大幅に強化し、着こなしの幅をご提案していこうということです。ちょうどこの春、メンズ館4階のビジネスウェアのフロアを改装し、ジャケパンスタイルゾーンを作りました。ここでは、今まであまりビジネスのフロアでは提案してこなかったポロシャツであるとか、半袖シャツであるとか、きれいな色目のコットンパンツなど、バリエーションの幅を大きく広げています。従来は、ネイビーのジャケットに、グレーのウールパンツ、B.Dシャツくらいのものでしたが、昨年あたりからパンツの売上の中でも、コットンパンツのシェアがグッと上がってきていて。パンツがコットンになると、自然とトップスもきれいなドレスシャツではなく、鹿の子素材や、オックスフォードなどのちょっと素材感のあるようなものに変わり、付随してベルトや靴や靴下も変わってくるなど、ビジネスシーンにおけるファッションの幅が非常に変化をしてきています。イセタンメンズではお客さまと一緒になって、その幅を楽しみたいと考えています。

Q8:スーツを学ぶとき、参考にすべきものは?

落合:実際一番勉強になるのは、店頭で商品を見て、色々なブランドのスーツに袖を通してみることですね。あとは『シャレード』とか、昔の映画もよく見ました。最近だとTVドラマの『運命の人』で本木雅弘さんがスリーピースのスーツをお召しになっているので、スリーピースを着たいというお客さまからのお問い合わせをよく頂きますが、そういった部分からスーツの着こなしを学ぶのも重要なことだと思います。

Q9:スーツを上手く着こなすコツはありますか?

落合:難しい質問ですね。色々なブランドやスタイルを試してみて、時には失敗をしながら、最終的には自分の体型的特徴や、好みにあったスタイルやブランドを見つけることですかね。あとは、トータルでのバランスをうまくまとめることですね。袖や着丈や股下の長さだとか、そのスーツに合ったシャツとタイの選び方だとか。そういう意味でも先ほどもお話しましたが、カッコいい店員さんから、接客をされるのが近道かも知れないですね。

Q10:最後に、あなたにとってスーツとは?

落合:男のファッションの軸だと思います。スーツって様々な場面で活躍するもので、フォーマルもしかり、仕事もしかり、休みの日に着ることもあるかもしれない。男の服装にとってはなくてはならないアイテムですよね。今までは、フォーマルな場面や仕事の場面にそれを押し込めてしまっていることが多かったと思いますが、でもスーツって本来そういうだけのものではなく、男の礼節を表現するものであり、実に色々なシーンで活躍するものなんです。今、どこのお店でもスーツ売場は減ってきていますが、メンズ館と称している以上、メンズの着こなしの一本筋の通ったところにスーツ売場はあるべきだと思っています。

プロフィール

落合将一(おちあいまさかず)

伊勢丹メンズ館4階、ビジネスウェアのバイヤー。入社以来、一貫してビジネスウェアの
セクションを担当。2009年より現職。

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