Mastered Suit Style:男は黙ってスーツでしょ。

by Mastered編集部

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「紳士服の基本はスーツである。」というのは、誰しもが納得する事実。でも「スーツっていまいち違いが分からない」という方も多いはず。そこで、今更聞けないあんなことやこんなこと、「スーツスタイルの先達」に詳しく聞いてきました!さらには、今、合わせるべきスーツ小物や、スタイリングもあわせてご紹介。読み終わったらきっとスーツが着たくなる?!

Photo:Takuya Murata(#1.Interview,
#2.Style)
Styling:Yasuharu Imai
Hair:Tommy(#2.Style)
Interview&Text:Mastered

#1.Interview
#2.Style
#3.Accessories & Bags

#1.Interview

Q1:自分のスーツスタイルのルーツを教えてください。

小木”Poggy”基史(以下小木):僕が一番最初にスーツを着たのは専門学校の卒業式だったと思うんですが、それまでは「絶対、スーツなんて着ない!」って思ってましたね(笑)。結局その時に着たスーツはその後ほとんど着用しなくて、次にスーツを着たのは26歳ぐらいのとき。エディ・スリマン(HEDI SLIMANE)の[ディオール オム(Dior Homme)]のスーツをセールで買ってみたんですが、あまりにも細すぎてちょっと自分には似合いませんでした…。そこから何年か経って、またスーツを着るようになったきっかけは[トム ブラウン(THOM BROWNE)]ですね。その時はフルモデルチェンジというか全てを変えるような感覚でした。自分のワードローブからは全く外れた物を買う感覚というか。カジュアルの延長線上で着ることの出来るスーツという意味ではトム ブラウンは大きなキッカケになりましたね。そして、自分の中で更に大きかったのが[THE STYLIST JAPAN®]、そして[Mr.BATHING APE® UNITED ARROWS]の存在です。普段は洋服にこだわりがある人でも、ビジネスマンの方にとってスーツは消耗品なので、高い物を買わずにちょっと我慢して安い物を買っている人も多いと思うんです。でもMr.BATHING APE® UNITED ARROWSが面白いのは、休みの日に[ア ベイシング エイプ®(A BATHING APE®)]を着ている人が、オンのときにも自分の好きなオフの物を着ていけるんですよね。それってすごく新しいなと思って。今は、元々はストリートだったブランドからもスーツやジャケットスタイルに合わせることのできるアイテムが多く出るようになってきたので、そういう点ではすごく楽しいなと思います。

Q2:スーツを着るときに気をつけるポイントは?

小木:僕はあえて「スーツを着てる」って思わないようにしています。今日は全身Mr.BATHING APE® UNITED ARROWSで、眼鏡は[F.A.T]、靴は[ジミー チュウ(Jimmy Choo)]なんですが、僕の感覚では全然ストリートなんですよ。あくまでもストリートの延長上というか。「自分の好きな物を着てる」っていう感覚を大事にしています。でもストリートの面白さって、「今こういうものが流行ってるんだな!」って他の人たちが追いかけると、いきなり違うスタイルになるっていうところで。僕は今、ストリートの感覚でスーツを着てる人が少ないからこれをやりたいんですよ。だからそういう人たちが増えてきたら、もしかすると僕はスーツを着なくなるかもしれないです(笑)。

Q3:スーツを着るようになって、何か変わったことはありますか?

小木:付き合う人の幅が広がったというか、それはすごく良かったことだと思いますね。ちゃんとした格好をしてて悪く思う人っていないですし、日本には確かにそういう文化もあるので、良いものを知っている目上の方たちと話せるようになったのは、自分の中でも大きいです。あとは海外に行った時に洋服で判断されることってすごく多いので、そういう点ではスーツを着て良かったと思います。

Q4:今日のスタイルにおけるポイントは?

小木:今って普段スーツを着ている人たちがちょっとカジュアルな、例えば肩パッドが入ってないようなスーツとか、少しリラックスしたジャケットを着るような流れがあるんですが、普段ハードな物、例えば〔グラッドハンド(GLAD HAND)〕とかを着ているような人たちはもっとクラシックな物が好きだと思うんです。何というか自分のおじいちゃんが着ていたとうなスーツとか、そういう雰囲気は僕もすごく好きなので、少しそういう匂いをポイントにしています。

Q5:自分のスーツスタイルにおけるアイコンとなる人物はいらっしゃいますか?

小木:色々と海外にも行かせてもらっているんですが、例えばラポ・エルカン(Lapo Edovard Elkann)。[フィアット(FIAT)]のジャンニ・アニェッリ(Gianni Agnelli)(※編集部注:フィアットの元名誉会長。ユヴェントスの名誉会長としても知られる。)の孫なんですけど、おじいちゃんが着ていたクラシックなスーツを有名なテーラーで自分の体型にお直しして着ているんです。しかもクラシックなスタイルを思いっきり着崩すんですよ。足下がスニーカーだったりとか。そういう人もかっこいいですし、バーカーブラックのミラー兄弟みたいな、ああいうクラシックな匂いを新しい解釈でシンプルに着るスタイルも好きです。もちろん、うちの鴨志田(康人)だったり栗野(宏文)だったりも尊敬しています。でも今一番好きな人と言われると信濃屋の白井さん(※編集部注:白井俊夫。信濃屋取締役仕入担当。)ですね。信濃屋は日本が誇る老舗で、横浜の馬車道ってところにあるんですが。クラシックなスタイルをバシッと着てる大人の人って、今あまりいないじゃないですか? 逆に年上の方が上手く着崩して、面白い格好をしてるっていうのは良く見るんですが、クラシックなものをクラシックにバシッと着ている人はなかなかいないんです。だから、日本の人で僕が一番かっこいいと思うのはやっぱり白井さんです。

Q6:スーツを選ぶときのポイントを教えてください。

小木:最初は僕も派手な物を好んで買っていたんですけど、そうするとコーディネイトがなかなか難しいんですよね。なので、まずはストライプ、グレー、ネイビーといったシンプルなものを買ってみて、そこから自分にはどの色が似合うのかってことを自分なりに研究していくのが一番良いと思います。お店で試着してみるのも大事なことですね。後は個人的なポイントですが、僕はなるべくトラッドに見えるものを選びますね。中途半端だとやっぱり面白くないので、自然と今はクラシックな感じの物に惹かれます。

Q7:昨年の震災以降、夏場のビジネススタイル=クールビズも変わってきたように感じられますが、クールビズについてはどのように考えていますか?

小木:僕は結構チャンスだなと思っています。少し前まではスーツを着ていると「なに?今日なんかあんの?」とか、「サラリーマンみたい」って良く言われたんですけど、逆にどんどん普段スーツを着ている人がスーツを着なくなるってことは本当にファッションとして着る人以外、スーツを着なくなっていくんじゃないかなと思っていて。1920年代には白いフランネルのスリーピースのスーツを、クーラーもない真夏に着ていたみたいですし、そういうのを見ても「ああ、夏もスーツ着たいなあ」って思いました。なんというか、結局ひねくれてるんですよね(笑)。

Q8:スーツを学ぶとき、参考にすべきものは?

小木:今の着こなしを見たいんだったら”The Sartorialist”とかを見るのも良いと思いますし、歴史を知りたいのだったら『スーツの百科事典』はオススメですね。映画で言えば「炎のランナー」しかり、昔の映画から参考になることは多いのではないでしょうか。

Q9:スーツを上手く着こなすコツはありますか?

小木:これはもう単純に回数しかないですね。極論を言えばどこのブランドのスーツでもいいんです。僕もまだスーツに“着られている”状態ですし、“着られていない”感覚になるまでにはひたすら回数を重ねるしか無いんですよね。シチュエーションについても同じことが言えます。着ていく場所によっても違いますし、「ああ、ここにこれを着ていくのはちょっとダメだった…」っていうような失敗も含めて、回数をこなすしかないんです。本当にもう何も言えないですね、それ以外は(笑)。

Q10:最後に、あなたにとってスーツとは?

小木::スーツとは…。何ですかね…あまり考えたことは無いですが、結婚みたいなものですかね。カジュアルにもある程度のルールはあるとはいえ、基本的には何でもありじゃないですか。でも結婚するとやっぱりルールだとか決まりだとか、ある程度の制限が生まれます。でもその制限の中でどう自分の個性を出すかっていう、そういう面白さはあるかもしれないですよね。今は選択肢がたくさんあるので、スーツを着て逆にその選択肢を絞ることによって、面白さがもっと広がる可能性はあるように思います。

プロフィール

小木 “Poggy” 基史(こぎ もとふみ)

ユナイテッドアローズのメンズプレス職を経て、同社の社内ベンチャー制度で提案した「Liquor,woman&tears」をオープンする。現在、ユナイテッドアローズ バイヤー、ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館ディレクター。1976年生まれ。

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