2019年LAクラフトビールの旅 前編

by Yu Onoda and Keita Miki

日本でも注目度が高まり続けているクラフトビールの世界。作り手であるブルワリーが日夜生み出す新たなテイストはもちろんのこと、そのコンセプトや商品デザイン、マーチャンダイズやブルワリー併設の試飲が出来るタップルームの内装に至るまで、こだわりは徹底しており、その個性は多種多様にして、ファッションやアート、音楽との親和性も高く、一度ハマると素晴らしい世界が果てしなく広がる。
そんな飽くなきクラフトビール・フリークの要望に応えるべく、2019年3月に東京は都立大学駅にオープンしたセレクトショップ、The Slop Shop。トレンドが目まぐるしく移り変わり、進化を続ける世界のクラフトビール・シーンからハンドピックした100種類以上のビールを取り揃える同店が、最新にして極上の一本を求めて、クラフトビールの最前線であるアメリカにあって、新世代ブルワリーが続々と誕生している西海岸ロサンゼルスで視察、買い付けを敢行。
そこで1週間の酩酊クレイジージャーニーから無事に帰還した同店スタッフの村越剛人と大曽根智之の2人に無類の酔客から感度の高いカルチャー関係者まで、広く注目されているロサンゼルスの最新クラフトビール事情を聞きました。前編、後編2回に渡るレポートの前半パートにあたる今回は、街の再開発が進むLAインナーシティ編。真夏の午後に味わう最高の一杯を想像しながらお楽しみください。

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— まずは3月に都立大学駅にオープンしたショップ、The Slop Shopについてご説明をお願いします。

大曽根:一言で言えば、クラフトビールに特化した酒屋です。販売している100種類以上のボトルや缶、5種類の生ビールは角打ちのように店内で試飲が出来ます。お店のコンセプトは、”Liquid Gems(液体の宝石)”。読んで字のごとく、扱っているクラフトビールは決して安いものではないんですけど、満足感が得られるものを取り揃えています。品揃えとしては、世界中の最新クラフトビールとベルギーやドイツといったヨーロッパ各国の伝統的なビールの2本柱ですね。

— 世界中には無数のビールがあるわけで、The Slop Shopでは、その時々のいいものを厳選したクラフトビールのセレクトショップというわけですね。そのセレクトの基準だったり、コンセプトというのは?

大曽根:ただ単に流行っているから扱うということはなかったりするので、意図している部分はもちろん、無意識的にも自分たちの好みが反映されてますね。例えば、麦茶のごとくイギリスのパブでダラダラ飲めるイングリッシュ系やラガーのような地味なものとか。

村越:それは僕のなかでの流行りですね。

— 色んなタイプのビールを飲んできて、何周か回って、トラディショナルなビールに辿り着いた、みたいな(笑)?

大曽根:そうそう。面白いのが、個人的な好みを店頭で大々的に打ち出しているわけではないのに、そういうものが店頭でよく動いたりするんです。僕らはこのお店を始める以前、クラフトビールの輸入卸の会社で働いていたんですけど、その時の経験上、一般的に知名度が高い”IPA”スタイルのビールと比べると、酸っぱいビールとして知られる”サワーエール”や酸味と塩味が特徴の”ゴーゼ”スタイルのビールのような変わり種は動きが鈍いとされているんですけど、うちのお店は何故かそういうビールがよく売れるんです。