Photo:Shota Kikuchi | Styling:Hisataka Takezaki | Hair&Make-up:Akihiro Motooka | Model:Moeka Shiotsuka(HitsujiBungaku)、Shuta Hasunuma | Text:Yuzo Takeishi | Edit:Atsushi Hasebe、Nobuyuki Shigetake
蓮沼執太はソロ活動のみならず、蓮沼執太フィルやフルフィルを組織し、2020年8月には蓮沼執太フルフィル名義でのアルバム『フルフォニー|FULLPHONY』をリリース。一方の塩塚モエカは、羊文学でボーカルとギターを務めるかたわらソロ活動も展開。羊文学としては2020年12月に2ndアルバム『POWERS』を、今年3月には配信シングル”ラッキー”をリリースしたばかりだ。そんな塩塚をフィーチャーした、蓮沼執太フィルによる配信シングル”HOLIDAY”は、映画監督の瀬田なつきが手がけた、ちょっぴり不思議なストーリーのMVも含めて、話題を呼んでいる。
— 蓮沼さんが1stアルバム『Shuta Hasunuma』を発売してから15年で──。
蓮沼執太(以下、蓮沼):あ、それ、この前の取材でも言われました(笑)。
— そして、羊文学は結成10年、活動を始めてからは9年になるそうです。
蓮沼:そんなに経つの?
塩塚モエカ(以下、塩塚):そうなんですね……考えてなかったです。
蓮沼:僕も考えてなかったですね。というのも音楽活動自体、ふわ〜っと始めているので、長く続けようとか一旗揚げようっていう気持ちはなくて、気づいたら15年が経っていたという感じです。
塩塚:私は、10年といってもその間にメンバーが変わってるし、高校時代のコピーバンドみたいなところから数えての10年なので、むしろ「ようやく、ちゃんとスタートできた」みたいな……まだ、最初の地点にいる感じですね。
— 蓮沼さんは昨年、フルフィル名義でアルバムをリリースされましたが、編成を次第に大きくしていったのは、表現したい音楽を具現する手段と考えていいでしょうか?
蓮沼:そうですね。根本的には人が多くなればできることも増える。そのなかで新しいものが作れたらいいなって思っているところがあるので、やはり表現の探求の1つだと思います。
— 活動を始めた当初は、こうした展開は考えていましたか?
蓮沼:いやいや。そもそも僕が15年前に作っていた音楽は、レコーダーを回して、電子音をパソコンで作って些細なメロディーを付けてひとつにする! みたいに1人の作業だったので、今回のようなコラボレーションや、ましてや何十人の編成なんて、想像もしてなかったですよ。
塩塚:なんで、今みたいになったんですか?
蓮沼:自分でもよく分からないんだよねぇ。ただもちろん、今もソロで音楽を作る機会はたくさんあって、コロナ禍の昨今はむしろずっとソロで作っていました。劇伴とかを作るときも1人ですからね。
— 昨年12月に配信された”HOLIDAY”はNEWoMANのクリスマスキャンペーン用に書き下ろした楽曲ということですが、塩塚さんをゲストボーカルに起用された経緯について教えてください。
蓮沼:羊文学を聴いていて、もちろん塩塚さんが好きだったので。
— 以前から交流はあったのですか?
蓮沼:いや、レコーディングのときに「初めまして」でした。僕、対バンが少ないんですね。少ないっていうか、ほとんどないんです。大きい人数でライブをしていると転換の大変さなどもあって、対バンをすることが物理的に難しいんです。そうなるとバンドとして知り合うことも少なくて……。
— アプローチがあったときはいかがでしたか?
塩塚:2年間くらいラジオをやっていたんですけど、番組のなかで中村佳穂さんが参加されていた蓮沼さんの曲が流れて、そのときに「この人たちとやってみたい!」って思ったんです。だから私、いつもはメールの返信がすごく遅いんですけど、2秒くらいで返しました(笑)。めっちゃテンション上がりましたね。
— ”HOLIDAY”はMVも含めて穏やかな雰囲気に仕上がっていますが、この楽曲にはどういった思いを込めたのですか?
蓮沼:新宿が舞台だったので、まずは新宿の情景を入れたかったのと、”2人”とか”人”がテーマにはなっているのですが、男女とか性別とか国籍とか、そういうことを抜きにした2人っていう、抽象的な物語が進められるといいなぁと考えていました。でも、曲を作っていくなかで「僕が歌うような曲じゃないなぁ」って思って……。
— 当初はご自身で歌うことを想定していたのですか?
蓮沼:「歌の曲を作ってほしい」というオーダーだったんです。歌がないアンビエントのようなアプローチもできたのですが、コロナの影響もあって、暗い音楽よりも単純に明るい曲がいいなぁと思って作っていたので、その過程で塩塚さんに歌ってもらいたいと思ったのが経緯ですね。
— そうした楽曲の背景は、塩塚さんに伝えたうえで歌ってもらったのですか?
蓮沼:全然伝えてないですよね?
塩塚:初めて聞きました(笑)。
— 歌うときに意識したことはありますか?
塩塚:普段はバンドと弾き語りをやっていて、バンドのサウンドはロックだから強めな感じで、逆に弾き語りは声も小さくて自分の世界にいるような雰囲気なんですけど、今回はいろんな人の音が鳴ってるし、曲調も外に開けているような感じだったので、普段とは全く違いました。それに、バンドで歌っていると頭で考えることが多いのですが、”HOLIDAY”はすごく大きい世界が見えたので、心で進んでいくような感じでしたね。とにかくレコーディングが楽しかったんですよ。
— この1曲だけではなく、再び共演する可能性は?
蓮沼:もちろん、機会があったらいっしょにやりたいですよ。ただ、今日会うのもまだ2回目なので、「レコーディングはしたから今度はライブをやりたいですね」っていう話はしたよね?
塩塚:そうですね。