1992年からプロとして活躍しているスケーターであり、スケート/アパレルブランド[HUF(ハフ)]の創始者、オーナーであるKeith Hufnagel。
サンフランシスコの大学在学中にプロデビュー。REAL SKATEBOARDにスポンサーされ、1度見れば忘れられない完璧なスタイルのオーリーと圧倒的なセンスで、10年後の2002年に自身のブランドをスタートさせる頃には、彼は誰もが認めるスケート界のレジェンドとなっていた。
出身地であるNYのストリートで、幼少期から肌で感じてきた多様なカルチャーや、スケーターとしてのライフスタイルをルーツとしたクリエイティブマインドが遺憾なく発揮され、[HUF]は一躍人気ブランドへ。近年もシーンの話題をさらう様々なコラボレーションをはじめ、ますます活動の幅を広げている同ブランドからは目が離せない。
そんな彼の来日を機に、EYESCREAM.JPがインタビューを敢行。彼の経歴、キャリアの話からインタビューを進めていくうちに、最後には思いがけないビックリークが。”Wait, What?” レジェンドの話にじっくりと耳を傾けよう。
Photo:Takuya Murata Text & Edit : Shu Nissen
「自分がしてもらったように、スケートボーディングをサポートすること。
それが常に自分の役割だと思ってる。」
— まずは経歴から、出身はNYですよね?スケートはいつから始めたんですか?
Keith Hufnagel :マンハッタン生まれマンハッタン育ち。本格的にスケートを始めたのは13歳ぐらいの時からかな。もともとはホッケーをやってたんだけど、友達が持っていたスケボーを借りて試しにやってみたのが最初。それが思いのほか楽しくて、のめり込んでしまってね。その日のうちにスケートショップに自分の板を買いに行って、それからはずっとスケボーで遊び回ってたよ。ホッケー友達がスケートをやめてしまってからも僕はスケートを続けていて、だんだん新しいグループとつるむようになった。例えば、『KIDS』に出てたHAROLD HUNTERとか、MIKE HERNANDEZとかニューウェーブを起こしていたグループとかね。1987年頃のNYは、スケートキッズが周りにいっぱい居て、良いスポットがたくさんあって、みんなが好き放題に遊び回っていたんだ。
— 憧れてたり、影響を受けた人は?
Keith Hufnagel :GONZ(マーク・ゴンザレス)は常に好きなスケーター。スタイルやトリックのセレクション、全てが完璧でずっとファンだった。Mike Carroll、Jason Leeも好きだったけどやっぱりGONZが一番だね。
—拠点をNYからサンフランシスコへ移した理由はなんだったんですか?
Keith Hufnagel :両親がポートランドに引っ越すことが決まってたから、どこかの大学に行かないといけなくて。でも、頭の中は、スケートの事ばかりで、どうせならスケートが出来る大学がある街にってことで、スケートボーディングの中心地であるサンフランシスコを選んだんだ。当時のサンフランシスコはスケートボードで何者かになりたかったら、そこに行かないわけにはいかないってぐらいの聖地だったからね。でも、結局入学して半年後にはプロになっていたから、大学もすぐ辞めたんだけど(笑)。
— なぜサンフランシスコはスケートのメッカと言われるのでしょうか?
Keith Hufnagel :小さい街で、とにかくスケートをするのに適していたからじゃないかな。毎日50~100人ぐらいのスケーターが色々なスポットでスケートをしていてトップスケーター、マガジンも集まっていたし、数ブロックの中に最高のスポットが密集していて、サンフランシスコの街そのものが超巨大なスケートパークみたいなものだった。スケーターが溢れてるから、滑ってても誰も気にしないし、スケーターに対してオープンな街だからね。すごく良い時間だったよ。NYでやってた頃は、ほとんどフラットだったけど、サンフランシスコは丘や坂も多くて、想像出来ないくらいのスピードが出るし、危険だったから、すごく興奮した。NYでは考えられないくらいの面白いスポットだらけだったし、街の全てをかたっぱしから攻めたね。
— プロスケーターになったのはいつですか?
Keith Hufnagel :NYに居た時からだから91〜92年まではFUN SKATEBOARDで滑ってて、何回かツアーに行ってるうちに、プロにならないかと誘われた。それからは大学を辞めて、ツアーで全国を回ったり、当時彼女がNYにいたから、しばらくはNYに居た時期もあったんだけど、ファションが好きだったからその時期にFIT(ニューヨーク州立ファッション工科大学)に通ったりもしたよ。でも彼女と別れて、ここに居る理由もないなと思って、またサンフランシスコに戻ったんだ。
— そこからREAL SKATEBOARDに移るわけですよね?
Keith Hufnagel :92年にFUN SKATEBOARDを辞めて、その後、メンバーだったKeenan Milton達は Plan Bに移ったりしてLAでやってたんだけど、自分はサンフランシスコに残って滑ってたんだ。そしたらある日、車を運転してたJim Thiebaudに声をかけられて、「REALに入んない?」って言われたのがきっかけ。それでLAに引っ越した。そこから自分のお店をオープンするまでの10年間はもうずっとスケートしかしてなかったね。コンテストに出て、ツアーを回って、ビデオを撮って。その時期に会った人たちとの経験が自分にとってはかなり大きい。[DC]のScott Johnsonが引っ張ってくれて、[Stussy]に入ったりね。
— 自分のお店をオープンしたきっかけは?
Keith Hufnagel :当時の彼女がサンフランシスコで女の子のブティックをやりたがっていたから、市場調査も兼ねて見に行ったら似たようなものは既にたくさんあった。同じお店をやっても仕方がないし、スケートやストリートファッションを絡めたことをやりたいなと思ったところから一緒に始めて、お店をオープンしたのが2002年だね。
— [HUF]は色々なコラボレーションをしてきてますが印象に残っているのは?
Keith Hufnagel :アーティストとやるのが好きで、関わった人たちによってそれぞれ思い出はいろいろあるけど、よく覚えてるのは、BARRY MC GEEと[adidas]とのコラボだね。アジア人の出っ歯のキャラクターを描いたら、アジア系のコミュニティから馬鹿にしてるんじゃないかって反発を受けて、発売中止になるぐらいの結構な大問題になってさ。お店に居たら、NEWSのレポーターが来て、居留守を使ったりしてたね(笑)。もともとは人種差別に反対する活動から生まれたモノなんだけど、当時僕はレイシストだと思われてたから(笑)。お店ではずっとアジア人の店長を雇ってたのにさ。
— アイディアやインスピレーションはどこから来るのでしょうか?
Keith Hufnagel :NYで育った時に体感したアートや音楽だったり、自分自身の歴史からインスパイアされてるかな。[HUF]を良いブランドにする為に、常にクラシックな服を作りながら、そこに少しエッジと遊び心を加えるようにしてる。スケートと一緒で一番大事なのは楽しむことだね。
— ファッショナブルなアイテムが多い印象があるんですがそこは意識しているんですか?
Keith Hufnagel :学校にも通ったし、自分がファッションを好きだったことも関係してるとは思うけど、[HUF]は自分一人だけじゃなく、色々な人間が手伝ってくれているからね。[HUF]っていう大きな枠の中で同じブランドを創り上げているけど、色々な人が携わっているから自然と多様なファッション性が産まれるのかもしれないね。
— 多忙だと思うんですが、今特に力を入れたいことは?
Keith Hufnagel :プライベートも含めて、やっぱり[HUF]が中心にあるから会社のことを考えてしまうけど、僕の役割は[HUF]が正しい方向に向かうようにすること。その上で、自分がスケーターとしてサポートしてもらったように、スケートボーディングをサポートすることが大事かな。自分たちの抱えているライダーやアーティストをしっかりとサポートして、お金儲けのためだけでは無く、彼らがどれだけちゃんとやりたいことが出来るかに比重を置き、そういう環境をつくること。それが常に自分の役割だと思っているよ。自分が昔のツアーで[Stussy]に、良い思いをさせてもらったようなことは今の子達は少ないのかもしれないけど、自分がスポンサーする若い子達には、良い生活を見せて、そういう経験をしてもらいたいから。最近では、子供たちの使えなくなったボードを新しいものとタダで交換して、そのボロボロの板を使ってサポートアーティストのHAROSHIに作品を作ってもらったりしてるんだ。
— Do the right thing.ってことですね。それでは最後に、今後挑戦したいことや新しいプロジェクトを教えてください。
Keith Hufnagel :もちろん常に[HUF]が第一なんだけど。[HUF]とは別に、最近新しく始めた趣味があって。DELUXEが95年に始めた[metropolitan(メトロポリタン)]っていうブランドがあるんだけど、それが鳴かず飛ばずで。最近までずっと何もしてなくて自然消滅しそうになってたんだよね。でも昔から名前もロゴも好きだったから、DELUXEが持ってたその版権を最近譲り受けたんだ。まぁ、ブランドを守るためにやってるだけで、具体的に何も動いてないんだけど。まだ、あんまり人に言ってないからインスタグラムも400人ぐらいしかフォロワーいなくて。僕のアカウントは9万人ぐらいフォロワー居るのに(笑)!
— さらっと大きな情報を!これからの動きに注目ですね。今日はありがとうございました。