『ベージュの靴とともに』藤井隆行(nonnative デザイナー)

by Mastered編集部

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靴に対するこだわり

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— 1番最近買ったベージュの靴はなんですか?

藤井:買ったというか、作りました。ニューバランス(New Balance)で。12月に出ます。あとは何だろう…。

— このニューバランスはカッコいいですね。

まだ詳細はお見せできないんです…。ごめんなさい。

まだ詳細はお見せできないんです…。ごめんなさい。

藤井:これ、イギリスの某シューズメーカーと同じ革使ってるんですよ。ウルバリン社っていう工場のスウェードで。

— そういう場合って、自分たちでニューバランスに革を持ち込むんですか?

藤井:いや、『こういうのをやりたい』って言ったらニューバランスの方がスワッチ(生地見本)を用意してくれて、そこから選びました。ヒモの色やソールの色、それからパーツの色指定をして、あとは文字のフォントを変えたり。

— フォントまで指示できるんですね。

藤井:そう。出来るところは最大限に指定をさせてもらって。一応、今季のラインナップに合わせて作った感じかな。

— ちなみに今年に入ってから何足くらい靴を買いました?

藤井:10足くらいかなぁ。

ビルケンシュトックのラムゼス (藤井氏私物)

ビルケンシュトックのラムゼス
(藤井氏私物)

ビルケンシュトックのボストン (藤井氏私物)

ビルケンシュトックのボストン
(藤井氏私物)

今はなきパドモア&バーンズ のシューズ (藤井氏私物)

今はなきパドモア&バーンズ
のシューズ
(藤井氏私物)

昨シーズンリリースされた ノンネイティブ×ブルックス のスニーカー (藤井氏私物)

昨シーズンリリースされた
ノンネイティブ×ブルックス
のスニーカー
(藤井氏私物)

— 結構買ってますね(笑)

藤井:ビルケン(Birkenstock)のラムゼスで、サンドベージュのやつが出てるのって知ってます?
それをホワイトソールが嫌だったんで、黒に張り替えました。ボストンも。

— 買っていきなりですか?(笑) ちなみに、それって普通に出てるモデルなんですか?

藤井:確か限定で出てて。買ってすぐに張り替えました。あとはサンドベージュのチューリッヒが出れば完璧なんですけど、なかなか出ないんですよねぇ?。

— 靴を好きな感じがよく伝わってきますね(笑)

藤井:そう、ずっと靴は好きですね。例えば『どういう靴が好き?』って言われても、スニーカーもブーツも好きだし。それで、まとめるとしたらベージュが多いんじゃないのかな、って。買うモノも、作るモノも。それは変わってないかな。

— そうですね。僕が出会った時から本当に変わってません(笑)ちなみに、服を作るときも「まずベージュの靴ありき」っていう感覚はあるんでしょうか?

藤井:とくに意識はしてないんですが、まぁ、自然な部分で出てるのかなぁ。デニムもそうだし、軍パンもそうだし。実際「これ以上は思い浮かばない」って感じだし。変わってないですよね。でも本人が変わってないのに、作る物はアップデイトしていかなきゃいけないって大変。

「変わってない」で思い出したんだけど…とにかく今季使いたくない言葉は「定番」。何か新しい言葉考えてくださいよ(笑)ていうか他人の定番とか、どうでもよくない?

— まぁまぁまぁ(笑)

藤井:だって、「誰々の定番はコレです」っていうのを見て、「じゃあ僕も」って買う、っていう事自体がおかしいし。それに雑誌なんかでも、「1+1は2ですよ」いう決まった答えへの導き的な提案が多すぎる気がするんですよ。本当はファッションなんて答えがない、っていうことが楽しさのはずなんだけどね。だって、昔ってすごく無駄使いしてたじゃないですか?

— してましたねぇ… 見つからない答えをずっと探し求めて(笑)

藤井:本物が欲しいんだけど手に入らないから、偽物みたいなの買っちゃたりとか。金なかったからさぁ。とにかく大量に買ってるから、毎月給料日が怖い(笑)給料よりカードの請求の方が多い、みたいな。そんな事しょっちゅうありましたよ。

— その話になるとどうしても昔話になりがちなんですけど、僕らの世代に比べて今の若い人ってお金の使い方が上手な人が多いですよね。

藤井:あー。持ってるお金をうまく振り分けて使う、みたいな。僕らの頃なんて、そもそも光熱費なんか計算に入ってねぇよ、的な。

— はいはい(笑)あと、洋服一着に対する一期一会感も強かったですよね。

藤井:そう。「やべー!」って言って買うんだけど、結局着ない、みたいな(笑)もうある種アル中的。

— なんで、この温度が伝わらなくなってきたんでしょう?洋服屋にもそういう「洋服バカ」的な人が少なくなってきちゃいましたよね。洋服屋になってるのに洋服買わない、ってどうなんだろう?、という感じはします。

藤井:とりあえず洋服屋になるっていう敷居が低くなってますよね。あと、雑誌なんかでもあんまり販売員がクローズアップされないし。

この前いろんなショップをのぞいてみたんですけど、「なんで?」っていう商品が無いじゃないですか。みんなバランスも良くてキレイで、ブサイクなモノっていうのがなくなってきてて。(セレクトショップの)オリジナルで十分カッコいいし。昔なんてオリジナル着るのなんてカッコ悪い、ダセー、みたいな風潮があったんだけど、その中でカッコいいモノを探し出して着るのがオシャレみたいな。でも今はそういう努力なんてしなくてもどれもカッコいいから、誰でもある程度オシャレに見えちゃうんですよね。それさえ着ればどうにかなっちゃう。

— それなりで十分だから、熱くもならないし。着こなし的にもハイレベルの人もローレベルの人もいなくなって、真ん中の層が多くなった、と。

藤井:ファッションって、コンプレックスだと思うから。「カッコ良くなりたい」っていう気持ちがないとさ。カッコいい基準っていうのは人それぞれだけど、それを自分なりに表現するのがファッションでしょ?って。「コレどうよ?」みたいな。

— そうですね。自分なりに表現することが出来るような人が増えていくような情報を、僕らもたくさん伝えられるようにしていきたいですね。随分、脱線しましたが…今回はありがとうございました。

と、気付けばベージュの靴の話をしてるよりも、ファッション観について話してる時間の方がだいぶ長くなってしまいました(笑)

でも、そんなのもイイのかな、と。ちゃんと自分なりのぶれない「軸」を持ってファッションに接しながら、好きなモノに対してとことんこだわり続ける姿は、やっぱり男としてカッコいいな、と思いました。

普段雑誌などでは見られない氏の一面が垣間見えたということで、読者のみなさんにとっても興味深い内容であれば幸いです。