『ベージュの靴とともに』藤井隆行(nonnative デザイナー)

by Mastered編集部

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デジタルとアナログと

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— ちなみに現在ノンネイティブのサイトでは、どれくらい商品を見れるんですか?

藤井:入荷済みの商品と、スタイリングした写真しか見れない。

— あぁ、そうでしたっけ? 意外ですね。他のブランドとかは、ウェブでガンガン見せて、ネット販売を拡充させていく傾向にあるみたいですけどね。ノンネイティブもウェブで見せたらもっと売れるようになるような気もしますが。ちなみに今って、卸し先のお店でもオンライン販売はしていないんですか?

藤井:取引先には商品の画像は見せても、買い物かごは付けないようにお願いしてます。簡単には買えないように。買うならお店に電話してもらって通販で買ってもらえるように。(商品に愛情を持ってもらう意味でも)なるべく買うまでに手間をかけてほしいんですよ。あと、お店のブログとかでコーディネイトに使うのもなるべくNGにしてもらってます。

取材当日の足下は コンバースのオールスター

取材当日の足下は
コンバースのオールスター

— それは、なぜでしょうか?

藤井:ああいう速報的なブログって、その日に入荷した商品だけ使ってスタイリング組むじゃないですか。もちろん、前に入荷して完売してしまった商品なんかも使えないし。それって全然リアルじゃないスタイリングだと思うんですよ。

— 確かにちょっと無理があったりしますよね。ただ、その商品を売るためだけのスタイリングで、結構チグハグになりがちですし。

藤井:まぁ結局はイタチごっこですけどね。お店さんももちろん売りたいと思うからこそ、なわけですし。でも僕らにとっての「戻す作業」っていうのはそういうことかな。もちろんネットは便利だけど、うまくつきあわないと、っていう感じ。

— お客さんに見せる為、展示会の時に商品を撮影する取引先も多いと思うんですが、それは?

藤井:それも撮らないようお願いしてます。その代わり、こちらで用意した写真をお渡ししてます。ブログとかにアップする時はそれを使ってください、って。やっぱりそういう、入荷前からある程度そのシーズンの全貌が分かるブランドが売れるみたいなんで。

ヴィバーグ×ホーボーのブーツ (藤井氏私物)

ヴィバーグ×ホーボーのブーツ
(藤井氏私物)

アルゼンチンで製造した ノンネイティブのブーツ 48,090円 (vendor)

アルゼンチンで製造した
ノンネイティブのブーツ
48,090円
(vendor)

パラブーツに別注した ノンネイティブのブーツ 66,990円 (vendor)

パラブーツに別注した
ノンネイティブのブーツ
66,990円
(vendor)

エルメスのターボ (藤井氏私物)

エルメスのターボ
(藤井氏私物)

ルイ・ヴィトンのスニーカー (藤井氏私物)

ルイ・ヴィトンのスニーカー
(藤井氏私物)

— 僕らも仕事柄、展示会にお邪魔する機会は多いんですが、写真を撮ることばかりに注力しすぎてて、あんまり商品見てない方とかいらっしゃいますもんね。用意した写真を渡すのは、イイ方法かも。写真だけでは伝わらない色々なイメージを伝えるのが、バイヤーと呼ばれる方々の仕事のような気がするんですが。

藤井:そうだよね。

— 展示会から実際の立ち上がりまでお客さんを繋いでおきたい、っていうお店の気持ちは分かりますけど、僕らが昔憧れていたお店のカタチとは随分と様変わりしてる気もしますね。

藤井:うん。それこそカッコ良さって何? って感じですよね…

— ちょっと話が脱線気味なので靴の話に戻させていただきます(笑)最近も靴は買われていますか? むしろ靴しか買ってない、といった状況だったり?

藤井:いや、そんなことは無いですよ。この前ベルギーに行った時もアホみたいに買っちゃいました。久々にブレイクしちゃって、あるブランドの服を30分で30万円くらい買っちゃいました(笑)アントワープの本店に行ったもんだから。久々にちゃんと見たら、ちょっとビックリして。「またイイな」って。

— いわゆるデザイナーズブランド的な物がですか?

藤井:デザイナーズっていうか、いろいろなモノが。伊勢丹やバーニーズ、ネペンテスなんかのショップは相変わらず見てはいますけど、またあらためて。デザイナーズだと、マルジェラ(Martin Margiela)とかドリス(Dries Van Noten)、ランバン(Lanvin)あたりはよく見てるかな。そんなには買いませんけど。

あとやっぱり靴は見ちゃいますよね。自分は「靴でファッションを変えられる」って思ってますし。着こなしって特に靴が重要だと思ってますから。

— やはり相変わらずベージュ(編集部注:藤井氏のベージュの靴に対する偏愛ぶりは業界内でも有名)ですか?

藤井:白か、ベージュですね。

— それは、スニーカーだけでは無く?

藤井:ブーツもかな。あとは、出来そうならオールデン(Alden)なんかにも別注してみたいですけどね。サンドベージュあたりで。

— やっぱりベージュなんですね(笑)藤井さんをそこまで駆り立てるベージュの魅力ってどんな所ですか?

藤井:なんですかねぇ。やっぱり汚れていく度にカッコ良くなっていく感じかなぁ。

— だとするとやはり表革よりスウェードですか?

藤井:断然スウェードが好き。あの汚れを吸っていく感じが。

— いつ頃からベージュの靴に魅せられたんですか?

藤井:ん?、17歳ぐらいかな。

— でも、その頃ってきっと別の色の靴なんかも買ってたと思うんですが、それが明らかにベージュばっかりになっていったきっかけというのはあるのでしょうか?

藤井:きっかけ…あぁ、サイラスに入った時くらい(編集部注:プロフィール参照)じゃないですかね。このヴィトン(Louis Vuitton)のスウェードのスニーカーに出会って。それがサイラスの服に異常に合ってたんです。

— そこから加速度が増したわけですね(笑)しかし本当に一時期は異常な程買ってましたよね。

藤井:そうそう。ベージュだったら何でも買う、みたいな(笑)でも今となってはだいぶ絞られてきましたよ。

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