4年のインターバルを経て鳴り響く、GAGLEの新境地

by Keita Miki

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— グループとして歩んで来たキャリアがある故に、トータルでの世界観のバランスを整えることを選択したということですね。『Vanta Black』というタイトル自体は当初から考えていたんですか?

HUNGER:ここ1年半とか?

DJ Mitsu the Beats:前半の曲が出来てきたくらいの時期だから、もっと前から決まってたんじゃないかな。

HUNGER:当時はもっとこのワードが一般化すると思っていて。すごい魅力的なことだし、ファッションとかでもいち早く話題になって、下手したら流行りものになっちゃうかなって心配してたんですけど、結果、全く流行らなかったですね(笑)。

— Vanta Blackは世界上で最も黒い物質ですよね。

DJ Mitsu the Beats:画像で見ても黒過ぎてなんだかよく分からないんですよね。光の反射が感じられないんで、とにかくそこに黒がポッカリとあるようにしか感じられないっていう。

HUNGER:今まで見えなかった星を発見できたり、天体の研究にも役立ってるみたいですね。見えなかったものも見えてくる。ブラックミュージックをやっている上で、やっぱり”黒さ”っていうのは1つのキーワードで。そこ自体は散々議論し尽くされてるから、特に言うこともないんですけど(笑)、その”黒さ”みたいなものを通過して、自分たちが今ハマっている、魅力的に感じている”黒さ”っていうものが、このアルバムに込められているんだとしたら、その”黒さ”はすごく先鋭的なものなんじゃないかなと思います。いわゆる土臭さとかルーズさとか、そういう”黒さ”ではなくて、今回の兄貴のサウンドから感じるのは、もっと科学的というか……。

— ブラックミュージックにおけるスペイシーさだったりディープさというものを強く感じました。

HUNGER:そうだと思う。それを言葉に置き換えてみると、『Vanta Black』っていうのが一番しっくり来たので、2人に提案したら2人も納得してくれて。

— なるほど。今作のトラックとして、Mitsuさんからあがって来た楽曲が、最初から前半のベースミュージック寄りのものだったんですね。

DJ Mitsu the Beats:車で移動している時に、最近こういうの作ってるんだよねって、最初はMu-Rに聞かせたのかな?
これまで作って来たやつとは全然違ったけど、そこですごく良い反応を得られて。HUNGERに聞かせても、良い反応だったから、この方向性でやってみようっていう感じでしたね。

HUNGER:制作にあたってのムードってあると思うんですけど、今回はMu-RのDJプレイが、先にそっちの領域に進んでいる印象があって。そこに兄貴が影響を受けながら作ったトラックが基盤になって、僕がラップを乗せてっていうことだから、3人の流れがしっかり整った、皆の総意になっている気がするんです。

— グループとして前に進んでいるというのが、はっきりと伝わる作品ですよね。

DJ Mitsu the Beats:皆がそれぞれで新しく良いと思っているものを、常に皆で共有出来るっていうのは珍しいんじゃないかなって思います。もちろん、それぞれ細かい枝分かれした好きなものはあるんですけど、大まかな方向性は共有できるというか、共感できるのがGAGLEの面白いところなんですよね。2人に全然違うジャンルのものを「格好良いよ」って聴かせてみても、同じ様に格好良いと思ってもらえるので、グループとして成り立っているのかなと。

— 奥底で共有している価値観みたいなものがあるんでしょうね。

DJ Mu-R:大きくジャンルを変える場合って、元々その人がやっていたジャンルを一度置いて、別のジャンルに行く人が多いじゃないですか。けど、僕らはこれまで通って来た音楽をずっと残しながら、ちょっと欲張りかもしれませんけど、そこに色々プラスしていっている感じなんで、ズレが少ないのかなと思います。今までのものが3人の基盤にあるから、今回のアルバムでいう後半の部分とかも入れたくなっちゃったのかなと。