『生活がベースの「機能美」』岡部文彦(スタイリスト)

by Mastered編集部

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アウトドアだけじゃなくインドアも

— そういった年齢がかなり上の先輩方と付き合っていると、やはりいろいろ影響を受けるものでしょうか?

岡部:もちろん。40代の人たちのパワーってやっぱりすごいんだよ。彼らが昔やってた作業とか、ガキの頃にこういうことをしてた、とか。小林さんもさ、カワサキのZとかっていうバイクを、当時住んでた四畳半の畳の部屋に分解して持ち込んでカスタムしてたらしいの。フレームから。もうやってることがハンパじゃないのよ。絶対敵わないようなことを普通にやってて。そういう人たちから見たらウチらはナマっちょろいのかもしんないけど、それでも自分たちの下の世代だったらウチらを面白く感じるんじゃないかな、って勝手に思ってるんだよね。かなりそれは、自負な感じになっちゃってるけど。もっとそういう面白い部分を見せていかなければいけないなって。

クレッタルムーセンのジャケット<br>「エイナリーダ」。<br>デザインが抜群にかっこいいです。<br>でも防水に関しては…<br>(岡部氏私物)

クレッタルムーセンのジャケット
「エイナリーダ」。
デザインが抜群にかっこいいです。
でも防水に関しては…
(岡部氏私物)

— いいと思いますよ。

岡部:ササフラスとか、クレッタルムーセン(KLATTERMUSEN)っていうスウェーデンのアウトドアブランドがあるんだけど、小林さんに「これ、すごい気に入ってて」って話したら「店でやろうかな」ってことになって。店に行ったらいつのまにか取り扱われてたり。ジェネラルストアに置いてあるモノがオレの格好っぽくなってたりしてて。リスペクトな大先輩と意見を交わすことが出来て、しかも共感できてるってことは最高に至福なわけで、あり得ないと思ってたことだし。オレが積極的に接してるのは小林さんばっかりだけど、ウチのマネージャーの旦那の泰三さんとかだったりとか、小林さんに紹介してもらった石川顥さんとか、やっぱりみんな仲良くなれるのは40代の人たち。
だから今、その世代の人達が若い頃にどんな感じだったのかを調べるのが楽しくて。パンクとかぶっちゃけ興味なかったけど、気にするようになって結局自分の中にもある事だって分かったし。やっと興味の幅が少しずつ広がってきた。やっぱり世代(時代)を知っていくってのは大切なことだなって分かった。

— 分かります。そういう人たちに巻き込まれて、いろいろな事を知っていくのは面白いですよね。

岡部:そういう方々が作り上げたモノで、あなたも関わってた『dish.』は、オレのなかでは捨てられない雑誌ベスト3に入る。すげぇ好きです、この雑誌。「でした」になるのか!

— ありがとうございます。僕もいまだに引きずってますからね、あの感じ。

岡部:引きずるよ。こういう雑誌の作り方ってアリなんだってなったし。今は、自分自身で始めから雑誌の企画とかしたくなってて。やっぱり自分で考えないとさ、やりたいことをやらないと(真意が)伝えていけないから。そういうときに『dish.』ってのがベースにあるよね。カッコいいモノを作っても、おちゃらけられるページもあったり。あれがすげぇ良くって。なんか最近の雑誌ってカッコつけてばっかりっていうか、それは昔から当たり前にあったのかもしれないけど、「カッコつけてナンボ」っていうのオレのなかではもうお腹いっぱいでさ。ちょっと「プププッ!」みたいなのが欲しい。
今回(取材を受けるにあたって)PERSONのコーナーも改めてひとりづつ全部見てさ。野田のやつ良かったよね。「こんな会話してんのか」って。読んでるうちにエコだのなんだの、だんだんワケ分かんなくなってきて。

(一同笑)

室内の一角。<br>革張りされたコールマンの<br>ウォータサーバーは室内植物の<br>水補給用として置いてます。<br>(岡部氏私物)

室内の一角。
革張りされたコールマンの
ウォータサーバーは室内植物の
水補給用として置いてます。
(岡部氏私物)

岡部:「やつはどこまで(のし上がって)いっちゃうんだろう!? すげ〜!」って。でも、みんなが洋服を中心に話してる中でヤツらしいなって。スゴい良かった!
だから、オレも洋服は関わってるけど生活をベースにした話にしたいな、って影響されちゃった。

— やっぱりみんなが見たいところは、一線で活躍してる人たちのリアルな生活の部分になってきてるのかな、とも思ってるんですよね。

岡部:ね! オレもそうだと思うんだよ。生活主体のファッションでしょ。
だから仕事も一生懸命やるけど、オレ必ず休んでリセットしないとやってけないタイプでさぁ。それが今まではキャンプとか外に行くことばっかりだったんだけど、家になってきてるっていうのが今回のテーマのひとつ。ここでひなたぼっこしながらお茶飲んだりビール飲んだりしながら、DVD観てたり。そういう風なのがすげぇイイなって思えるようになってきて。
( [ここから独り言] やっぱ家族が出来たポイントがでかいんだろうけどなぁ〜、やっぱアラサーだからかな? 周りもいっぱい家族になってるからな〜。)

— なんだか、自然とトークの流れが戻ってきましたね(笑)

岡部:それで箱根の寄木細工とかがそこにあったり。あとちょっと前から、器にもハマってて。日本の民芸食器とかを買うわけですよ。それもやっぱり家での生活をより楽しむっていう感覚で。今までは上京するときにオカンが「これも持っていきなさい」とかって渡された、ヤマザキでシール集めたら貰えるような皿とかをイヤだけど使っててさ。でも服にこだわってるんだったら、高くてもイイお皿が欲しいなってなってきた。しかも日本の民芸的な器。高いっつっても一皿2,000円から4,000円くらいの程度のモノだけどね。

— そんな変化も起きてるんですね。

岡部:海外の知識はないからさ、相変わらず。だから日本の、益子とか唐津とかの田舎で作ってる焼き物なわけでさぁ。時代もそうなってきてるよね。ほんとここ最近は。ブルータスでも取り上げてるしね。にっぽん! 日本なんだよ。服も。生活も。

— 雑誌などでもよく特集しているのを見かけますしね。

岡部:生活を楽しむって意味合いで、山とか器とかの特集になってきてるんだなって気がしてて。オレはちょっとだけ前にハマりはじめたってことで「なんだ今ごろ器特集やってんじゃん」なんて勝ち誇ったこと言ってるけど、全体的にその流れになってきてて、オレもそこの一人にいるからそうやって特集が組まれてるわけじゃん(笑)

山登り時の相棒。岡部氏いわく<br>「最近、はまってるバックパッキング。<br>わざと『見せる収納』で自分キャラ<br>を演出するのがポイント!」とのこと。<br>(全て岡部氏私物)

山登り時の相棒。岡部氏いわく
「最近、はまってるバックパッキング。
わざと『見せる収納』で自分キャラ
を演出するのがポイント!」とのこと。
(全て岡部氏私物)

— 確かに(笑)

岡部:だけど、そこで楽しんでる自分もいるけどね。雑誌ってそういう部分で、テレビと違った面白さがあるよね。だから今オレは思いっきり流行に乗っかってるんだろうなって。自分のオリジナルを追求してるんじゃなく(笑)
でもさっきの野田の話じゃないけどさ、これだけエコとか言われてる時点でそうなる(編集部注:民芸食器のような手工芸品の価値が見直されること)のかなとは思うけどね。モノを大量に作るっていう事がどうなのかっていう。身近にある「良いモノ」を大切に扱うスタンスって言ったら良いのか?
かと言ってロハス(LOHAS)スタンスではないけれどね! もちろん。

— 分かります。なんだか嘘っぽい人が多いですからね。

岡部:オレはやっぱり何ごとも生活ベースになってきて。服もずっと着られるようなヤツばっかりになって。
憧れるけどね、ハイブランドとかを買って1シーズンしか着ないっていうのも。でも、キャラじゃないなっていう。

— 憧れであればいいんじゃないですか? そのファンタジーがファッションだったりもしますし。

岡部:そこが面白いのかもね。繰り返しになるけど、生活をいかに楽しむかって言う風になっちゃった。子供もできて。でも、やっぱりカッコはつけたいけどね。

— そこは絶対大切だと思いますよ。

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