当サイトでも、この秋冬シーズンを通して、様々な形でレコメンドを続けてきた[DIADORA(ディアドラ)]と、[FACETASM(ファセッタズム)]によるコラボレーションが去る11月に実現した。
イタリアを代表する老舗スポーツブランド[DIADORA]と、今の東京を象徴する存在とも言える[FACETASM]の邂逅は、果たしてどのような化学反応を生んだのか。[FACETASM]のデザイナーである、落合宏理に話を訊いた。
Photo:Shin Hamada、Text&Edit:Keita Miki
僕ってそもそもスポーツブランドが似合わないんですよね(笑)。
— はじめに落合さんと[DIADORA]の思い出というか、出会いについて聞かせてください。
落合:最初に目にしたのはサッカースパイク。その次はベン・ジョンソンのイメージが強いですね。ファッションというよりは、スポーツブランドとしての認識が強かったかもしれません。その後、しばらく表舞台で目にすることは無かったのですが、近年、ファッションの世界で少しずつ噂になってきているのは感じていました。コラボレーションモデルを製作するにあたって打ち合わせをした際にも、海外の著名なデザイナーが注目しているとか、ポジティブな情報を耳にすることが多々ありました。今、様々なスニーカーが”ハズし”として選ばれている中で、[DIADORA]は確実に「きてるな」という感じがあると思います。すごく良いタイミングでした。
— コラボレーションモデルの製作にあたり[DIADORA]の本社にも足を運んだそうですね。
落合:ちょうど1年前ぐらいに話を頂いて、去年の12月に行きましたね。トルコ経由で(笑)。失礼ながら[DIADORA]に関する知識がほとんど無い状態で足を運んだのですが、本社でブランドの歴史から、プロダクトの細部に至るまで、全て丁寧に教えて頂いて。知らないことが本当に沢山あって、驚きました。ファン・バステン、ロベルト・バッジョ、アイルトン・セナなど、過去、名だたるアスリートたちが[DIADORA]のサポートを受けて来ているし、ビヨン・ボルグは今でも[DIADORA]のテニスシューズを履いて、シニア大会に出ているらしいですよ(笑)。あとはウィンタースポーツもしっかりとサポートしていて、スノーブーツなんかもすごく可愛いモノがたくさんありましたね。ラグジュアリースポーツに対するリスペクトがしっかりとあって、他のブランドとは一線を画したラグジュアリーなイメージに惹かれた部分は大いにあります。
— なるほど。本社に足を運んでイメージが変わった部分もあるでしょうしね。
落合:本社に隣り合う形で自社工場があるんですが、そこで実際に職人たちの手で作られているというのも、すごく良いなと思いました。場所も良い意味で田舎で、日本で言うと八ヶ岳みたいなところなんですよ(笑)。[DIADORA]のような誰もが知っているブランドが、今でもMade in Italyを貫いているっていうのは、すごいことだと思います。大量生産のちょっと手前のような、絶妙な立ち位置もすごく魅力的だし、そういう部分を前面に出さずにいるのも職人っぽくて最高ですね。
— [DIADORA]のシューズに対しては、どのような印象を抱いていますか?
落合:これまで、自分の中ではスニーカーブランドって全部一括りにしていた部分もあったのですが、今回[DIADORA]のプロダクトを知って、その考えは大きく変わりました。どのスニーカーにもオリジナリティがあって、それぞれがストロングポイントを持っているので、非常に興味深いです。実際、[DIADORA]のシューズを何足か履かせてもらっていますが、履き心地も素晴らしいし、先ほど話したような伝説ともいえるアスリート達の歴史を感じることが出来るのも[DIADORA]のシューズならでは、と言えるのではないでしょうか。
— 今回リリースされた『INTREPID』についてお話を伺えますか。
落合:時間の制限があったこともあり、今シーズンの[FACETASM]のキーカラーであるグリーンを使って、シンプルに仕上げました。コラボレーションって難しいですけど、僕は何にせよ、自分たちらしさが出れば良いなと思っていて。次は、もう少し時間をかけて作ってみたいですね。
— 落合さん自身がスニーカーを選ぶ時のポイントは?
落合:自分のスタイルに合うものであれば何でも。自分が履く分には、あまり履き心地とかも気にしていなくて、ここ何年もいわゆる”ハイテクスニーカー”を履いていないので、きっとその類のものを履いたら、びっくりしちゃうと思います(笑)。スニーカーってハズしに使うことが多いと思うんですけど、子供っぽいハズしにならないものを選びたいなという気持ちはあって、そういう部分で[DIADORA]は丁度良いんですよね。
— 落合さんや[FACETASM]から、これまではあまりスポーツの匂いを感じたことが無かったので、意外なコラボレーションでした。
落合:そうそう、僕ってそもそもスポーツブランドが似合わないんですよね(笑)。基本的にはポジティブに捉えているし、ファッションデザイナーとしてスニーカーやスポーツウェアをデザインすることは好きなんですが。でも、それもデザインする側としては、良い距離感なのかなと思って。僕らなりにスポーツブランド、スポーツウェア、そしてスニーカーを解釈していけたら良いのかなと思っています。
— 近年の90年代を思わせるスニーカー市場の活性化や、90’s全体のリバイバルに関しては、リアルに90年代を経験した世代としてはどのように捉えていますか?
落合:ブームもリバイバルも、それが健全なものだったら全然良いと思いますよ。あの当時の「エアマックス狩り」とか「ジョーダン狩り」に比べたら、健全な気はするんですけどね(笑)。今はインターネットもあるし、海外の人もいるから、争奪戦という意味ではさらに厳しくなっているのかもしれませんけど。
— [FACETASM]はパリ、ミラノを経由して、近年急激に世界中でその名を知られる存在になったようなイメージがありますが、個人的には落合さんがやっていることに実はあまり大きな変化は無くて、どちらかというと、時代が[FACETASM]にフィットしてきたのかなと思う部分もあるのですが。
落合:東京って時代とは関係無く、独自の進化を続けてきた街だと思うんですよ。それこそ90年代は、まだ欧米では誰も知らないアジアの宝石のようなブランドがたくさんあって、そこを目がけて多くの人達が海外からやって来たと思うんですが、今の流れって、当時とはちょっと違って。東京が今までやって来たこと、今やっていることと、海外が今までやって来たこと、今やっていることが上手くマッチしたのが、今の流れであって、その流れの中で僕らがブランドとしてポジティブに手を挙げていたから、良いスタートが切れたのかなと思います。
— 今後も海外でコレクションの発表を続けていきたい?
落合:もう国境なんてあって無いような時代なので、パリでコレクションをしたからってスタートでも、ゴールでも無いんですよね。そういうスタンスで海外と戦えるっていうのが今の時代感なんじゃないですかね。たぶんこれが10年前、20年前だったら、全然感覚は違ったと思います。この前、KOHH君とも話したんですよ、「結局、どこでやっても同じだよね」って。今は東京があまりにも世界に知られていないから、僕らが好きな東京のユース感だとか、カルチャーを見せれば海外の人達が評価してくれるのは当たり前なんですよ。僕自身、これからはもっと多くの東京のブランドが世界に出ていくと思っていますし、東京のクリエーションにも期待しています。