— ハウスというと、たとえば?
Daichi Yamamoto:MoodymannやTheo Parrish、Terrence Parkerとか、デトロイト、シカゴのDJ、プロデューサーが多かったかな。高校の時に歴史を教えてくれてた先生が学校を辞めてレコード屋をやっていて。
— 京都は、Daichiくんの周りだけなのか、面白い人が多そうですね。
Daichi Yamamoto:はははは。そのお店は夜の8時から深夜3、4時くらいまでやっているところで、お店が開いている時に行くと勉強を教えてくれるんですよ。そこで歴史の勉強を教えてもらいながら、今はこれを聴くべきってことで、レコードも沢山聴かせてくれて。その人はMETROでパーティもやっていたので、聴かせてもらったレコードから選んだ1枚でパーティ中にラップさせられたり、その人にはJ DillaとかMadlibを教えてもらったりもしたので、そういう影響が大きかったかもしれないです。
— デトロイトでは、Slum Village DJ DEZがMoodymannのレーベルからANDRES名義でダンストラックをリリースしていたり、ラッパーのDanny Brownの父親もハウスDJだったり、ダンスミュージックとヒップホップって、繋がるところでは繋がってますからね。
Daichi Yamamoto:そう。僕もそういうものとして捉えていて、自分がやっている音楽もヒップホップだと思っているんですけど、全然ラップしていない曲でもヒップホップの懐の深さを利用しているというか、そういうところにヒップホップの魅力があるように思うんですよ。あと、最近よく思うのは、特定のスタイルは得意な人に任せて、自分はやらないでいておこうということ。例えば、Nasみたいにブーンバップでタイトにラップできたらいいなと思いつつ、そういうスタイルに特化した人がいるわけで、自分だったら何が出来るのかを考えるようになりましたし、僕の曲はリファレンスとなる曲があったりもして、それを自分なりにやったらどう形に出来るかというところから曲を作ったりもするんです。そうやって曲作りを続けてきて、自分はやろうと思ったら、どんなスタイルでも出来る柔軟さがあることに気づかされたんですけど、それをどういう方向に持っていくのがいいのか。それが今の自分にとっての課題ですね。
— JJJがビートとラップでフィーチャーされている”She II”はどういった経緯で実現した曲なんですか?
Daichi Yamamoto:JJJとのコラボレーションは、ロンドンにいた3年前、彼のビートが大好きで、どうやって作っているんだろうと想像しながら、自分でビートを作っていたんですけど、そのうちの1曲をInstagramにアップしたら、彼から”いいね”が来たので、すぐにそのビートを送って、「ラップしてください」とお願いしたんです。そうしたらすぐにラップを入れて送り返してくれたので、SoundCloudで公開したんです。
— 今回のアルバム未収録の”She”ですね。あの曲は多くのリスナーがDaichiくんの存在を知る大きなきっかけになりました。
Daichi Yamamoto:すごく格好良い曲が出来たんですけど、自分のラップがもっと上手くなったら、もう1回一緒にやりたいとずっと思っていて。それが、今回、ようやく続編の”She II”に繋がったんです。ラップに関しては、曲によってアプローチを変えたり、どんなトラックに対してもラップを乗せられるところが自分の強みだと思っているんですけど、フレシノくんとやった”Let It Be”に関しては、ちょうど自分のなかで行き詰まりを感じていた時期だったんですよ。そうしたら、行き詰まった空気を察知した父に「今からRub A Dubに行くぞ」と無理矢理連れていかれて、そこでかかっていたのが、ダンストラックにラガマフィンスタイルで歌っている曲で、それを聴いて、”Let It Be”のアイデアが生まれたんです。その後も行き詰まるとRub A DubやMETROに行って、音に浸る時間がたびたびあったりして、周りの環境にも助けられましたね。
— そういう意味において、このアルバムは京都の街や音楽に育まれた作品でもあるんでしょうね。
Daichi Yamamoto:ただ、この先、2、3年先のことは想像がつくんですけど、音楽をやりながらずっと京都で生活し続けることは想像出来ないんですよね。まぁ、最終的に戻ってくるところは京都だと思うんですけど、ロンドンやアジアだったり、違う土地で生活しながら音楽を作ってみるとか、いつか人里離れた山荘にスタジオを構えるのが夢ですね。
— Daichiくん、今いくつだっけ?
Daichi Yamamoto:26歳です。
— 若いのにギラギラしてないというか、良い意味で老成しているというか。まぁ、でも、今回のアルバムはそういうDaichiくんの人間性が反映された作品ですよね。
Daichi Yamamoto:まぁ、お金は欲しいですけど、いつでも好きな時に旅行出来るくらいのお金を稼げるようになっているのが最終目標かな。そうやって生活しながら、音楽を作ったり、音楽以外にもアート作品の制作に取り組みたいなと思っています。