去る2015年2月7日より上映開始となった1本のドキュメンタリーフィルムがインターネット上で大きな話題を呼んでいる。その名は『劇場版 BiSキャノンボール2014』。ご存じ、我らがハメ撮り隊長こと、カンパニー松尾の生み出した名作シリーズ『テレクラキャノンボール』を、2014年7月8日をもって解散したお騒がせアイドルBiSの解散ドキュメントへとアレンジした大作である。
AV監督とアイドル。一見すると水と油のように見える、この両者による戦いの記録は、何故だか無性に僕らの胸を打つ。今回EYESCREAM.JPでは、そんな一大映像作品の裏側に迫るエクスクルーシヴな対談をお届け。問答無用の映画のキーマンであるカンパニー松尾その人と、元BiSのメンバーであり、劇中で並々ならぬ存在感を放っていたファーストサマーウイカに『劇場版 BiSキャノンボール2014』を大いに語ってもらった。
Photo:Takuya Murata、Interview&Text:Wataru Suetsugu、Edit:Keita Miki
(ビーバップ)みのるのトークにはそれぐらい人を動かす力があるんですよ。お金貸してって彼に言われたら、良いかなって思える。逆にお金を貸した方が気持ち良くなるぐらいにはさせるんです。(カンパニー松尾)
— 2人が撮影後に会うのは今日が初めてですか?
カンパニー松尾:非公式に一度。テアトル新宿に『テレクラキャノンボール』を見に来てくれた時に会いましたね。
— 完成した『BiSキャノンボール』を観て、思うことも多々あると思うんですが、そういったことも今日は話して頂ければと。
カンパニー松尾:本当に僕は元BiSのメンバーには会わせる顔がなくて。だから今日はサングラスをしてるんですけど。
ファーストサマーウイカ:別の理由ですよね(笑)。
カンパニー松尾:えー(笑)、本当会わせる顔がなくて、実際いまウイカさんはここで笑ってくれてるけど、撮った後に僕の場合は編集があるじゃないですか? ウイカさんがボロボロと泣くシーンが終盤にあるんですけど、編集でその時の映像を見ていたら、どんどんどんどん申し訳ないことをしちゃったなと感じてきて、本当に解散ライブを俺たちが潰しちゃったんだなと。公開後に劇場に行ったら研究員に刺されるんじゃないかって、それが一番心配。いや、別に良いんですよ、刺されるぐらいのことやってますから。ただ思ったのは多大なる迷惑をかけたんで、大変な状況でも彼女たちが頑張ったんだっていうのが分かるようにしたいなと思ってました。自分たちで大変にしといて今更何言ってんだって感じなんですけど(笑)。
ファーストサマーウイカ:申し訳ないって言ってくださるなんて本当にお優しい方ですね(笑)。残念ながらBiSのメンバーは本当にどうってことなく、ケロっとしてますよ。なんなら誰もBiSキャノのこと覚えてない(笑)。
カンパニー松尾:ちょっとそれは悔しいな。
ファーストサマーウイカ:でも、メンバーによってはすごく辛くて、忘れることでその傷を無かったことにしているかもしれないですけどね。
カンパニー松尾:のんちゃんとか、テンコさんとかね。
ファーストサマーウイカ:そう。テンコはなかったことにしてるのかもしれないなって本編を観て思いましたね。でも、ほんとは屁でもなくて、そんなこともあったなって位にしか思っていないのかもしれないし。
カンパニー松尾:そうであったらいいんですけど、事実として解散ライブ前夜に朝まで色々とあって。それも異常なテンションで。
ファーストサマーウイカ: 異常でしたね、アレは。
カンパニー松尾:もしウイカさんがテンコさんの立場だったらどうする? 戦っちゃう?
ファーストサマーウイカ:自分だったらどうしたんだろうって考えましたね。松尾さんはあんまり攻めてこなかったじゃないですか? もしグイグイ攻めて来られてたら私、「キャノンボールだ!」って気づいてたと思うんですよね。もしテンコみたいにあんだけ言われてたら、気づいて乗ってあげてたかもしれないなって。朝まであんなにやられたら、「イイっすよ、どうぞ!」みたいな感じでヤッてたかもしれないです。あれはテンコだったから撮れた画ですね(笑)。サキちゃんだったらグーパンとか出てたかもしれない。
— そう考えると6組が6組収まるところにキレイに収まっていますよね。
カンパニー松尾:組み合わせの妙はあるよね。恐ろしい程に合ってるんですよ。そういう気がします。
ファーストサマーウイカ:コショージと梁井さんとか特に。隙だらけの人間同士が、隙に見えるエロさの闘いを繰り広げてて。あれはカップルの映像みたいで良かったですね。それにタートルさんとプー・ルイの起き抜けのあのショットはムカつく(笑)。おしゃれショット。
カンパニー松尾:アレは、(タートル)今田さんがよく人妻と温泉に行って寝起きのセックスを撮るんですけど、正にあの画ですよ。ブチューってやりだす何秒間か前の画そのまま。知ってる人はちょっとドキドキするとこです。一回マスク外そうとするじゃないですか? 「チューしていい?」って言い出す寸前でしたね。
ファーストサマーウイカ:そうだったんだ。ちょっと気になったんですけど、(ビーバップ)みのるさんが顔射するまでの間、テンコは目の前で見てたってことですよね?
カンパニー松尾:そうですよ。
ファーストサマーウイカ:言ってくれなかったーテンコー!! 次の日に何があったか聞いても、「まじ死にたかった」みたいなことは返してくるけど、実際の出来事に関しては何も言わなかったんですよ。
カンパニー松尾:そこは、テンコちゃんもネタとして取っといたんじゃないの?
ファーストサマーウイカ:そうそう、取っといたんだと思う。ただ、チンコ見たんだーって思って。
カンパニー松尾:思いっきり見てますよ。でもアレは、みのるが『BiSキャノンボール』というお題目を与えられて、決まったスケジュールの中で何かをするってなった時に、彼なりに考えてた上でやったことなんですね。車で渋谷から横浜アリーナに行くまでにした会話のワンフレーズ、ワンフレーズを全部自分の中で飲み込んでって消化して、短いリハーサルの時間で組み立てた作戦なわけですよ。テンコさんの言った「伝説になりたい」っていう一言から導きだしたのが、「テンテンコを終わらせる」っていう事なんです。
ファーストサマーウイカ:話してて自分も「ごめんねぇ~」とかいいながら泣いちゃうしね(笑)。あのシーンで私ちょっと泣きました。
カンパニー松尾:みのるのトークにはそれぐらい人を動かす力があるんですよ。お金貸してって彼に言われたら、良いかなって思える。逆にお金を貸した方が気持ち良くなるぐらいにはさせるんです。彼がやった事は自分には何ができるか考えた上で、どうせ見せ物になるんだったら、なりきりますよって事なんですよ。かっこいいよね。俺、みのるになら抱かれてもいいと思うもん。
一同笑
カンパニー松尾:ホドロフスキーとかサブカルネタからもわかるように、テンコさんにはみのるが一番合ってたのかもしれないですね。
ファーストサマーウイカ:思想とか伝説に対して一番憧れがあるのがテンコだし、他の人はバカだから何言ってるか分かんなかったかもしれない(笑)。テンコは怒ってるっていうよりも意気消沈って感じだったんですよ。マジ無理、みたいな。珍しく怒ってたのがコショージ。サキちゃんはカメラマンついてないぐらい完全に自由で、のんちゃんもプー・ルイも逆にみんなを心配するくらい何もない感じで、怒ってるのが2人だったからヒドいことをされたんだって思って。でも、私たちの目の前には解散ライブがあるし、ドキュメンタリーもどっちも捨てられないってなった時に、じゃあどっちも目出たくするには松尾さんたちを潰すしかないと思ったんです。いわゆるBiSのいつものやり口。「敵は大人だ!」みたいな(笑)。もうライブが数時間後に迫って高ぶってたし、悔しさもあったから、そこで自分の感情を押し殺すんじゃなくて全部出してやろうと思って。
カンパニー松尾:俺が楽屋行っても全然目合わせてくれなかったですからね。
ファーストサマーウイカ:でもそうなる前に、松尾さんとはずっとコミニュケーションも取ってましたよね。足が痛かったので一緒に病院行ったりもしたし。リアルなエモさとかいらないのでそこは別にカットされてていいんですけど(笑)。
カンパニー松尾:そうそう。だから俺が全体会議を拒否したのはウイカさんとのコミニュケーションは取れてると思っていたから。お互いの関係性があるはずだから全員で集まって、1から仕切り直す事だけは受け入れたくなかったんです。