Photo:Shinji Yagi、Styling:Daisuke Deguchi、Hair&Make-up:Ayumi Naito、Model:Anna Kawamura、Hinata、Yuka Nakao、Text:Shoichi Miyake
下北沢の映画文化に火を灯しているミニシアター
下北沢駅の南口改札を出て、商店街をゆっくり歩くこと5分。古着屋や飲食店も入っている路地裏のビルの2階にトリウッドというわずか47席の映画館がある。いわゆるミニシアターだ。
トリウッドが開館したのは1999年12月。一風変わった劇場名は、テレビでタレントの関根勤が「ボンベイで作られるインド映画がポリウッドなら、東京で作られる映画はトリウッドだ」と言っているのを観た代表の大槻貴宏氏がその名称を気に入り、テレビ局と関根が所属するプロダクションに許可を得て冠したという。時代は日本にシネコン型の劇場が増える前夜であり、都内には魅力的なミニシアターが点在していた。
近年、名だたるミニシアターが相次いで閉館していくなか、それでもなおトリウッドは下北沢の映画文化に火を灯している。スタッフの山本達也氏が劇場の歴史を聞かせてくれた。
「記憶が曖昧なんですけど、僕がスタッフとして働き始めたのは今から4、5年前だったかな?」
なぜ記憶が曖昧かというと、山本氏は「映画を撮る側」としてトリウッドに出入りしていたからだという。
「代表の大槻が、僕が映画を学んでいた専門学校の講師をしていまして。僕は大槻の生徒だったんです。卒業から1年後に僕はその専門学校で映画学科の助手になったんですけど、ちょうど同じころにトリウッドがスニークプレビューというのをやっていて」
スニークプレビューとは格安かつ無審査で映画を上映できるシステムのことだ。「覆面上映」とも称される。スニークプレビューで200人以上の動員があった作品はロードショーの権利が与えられる。開館当初からスニークプレビューはトリウッドという劇場のアイデンティティになっている。
「僕も仲間とスニークプレビューを利用して自主制作の映画をトリウッドで上映させてもらいました。それが2001年ですね。トリウッドとの関わりはそこからです。お金もなくて、自分に才能があるかわからない状態にいる二十歳そこそこの若者たちが映画館で作品を上映できたのはすごく大きな経験でした。作品を自分の世界で終わらせるのではなく、外に開かれたものにするという意味でも」
でも、と山本氏は続ける。
「当時に比べて今はスニークプレビューを利用する人がかなり減りました。自主制作の映画を積極的に上映する劇場が増えましたし、インターネットで映像作品を公開できるようになったことも理由として大きい。当時だったら週末のいい時間帯は2、3ヶ月先にスクリーンを押さえておかないと予約が取れなかったんですよ」