CA4LAとのコラボレーションハットが発売。クラムボンのミトが語るポップとオルタナティブ

by Atsushi Hasebe

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— 今回の帽子もCDとのセットで販売されますが、クラムボンは以前からレコード流通を通さずに独自にCD販売をされてます。そういうことを始めた理由は何だったんでしょうか?

ミト:始めたのは3年前からなんですが、CDの売り上げって縮小してるじゃないですか。今はサブスクリプションって分野で、世界的に音楽は盛り上がっていると思うんですが、日本って未だにCD文化だったり、パッケージ主体の雰囲気がありますよね。個人的にはその文化の中に育ったので好きではあったわけです。それをずっと続けていくために、なおかつファンとクラムボンが密接に関われるためにできることを考えたんです。この音源にはこういう工程とこういうこだわりがあるから、この値段で売っていますということを説明できるようにしたい。なるべく自分の近しいところで人に渡せる状態にすれば、モノに対する愛着が戻ってくるんじゃないかと思ったわけです。

— 今の時代に合ったパッケージメディアの在り方を考えたわけですね。

ミト:お金の部分でいうと、メジャーになるといろんなところを介することで、不透明な部分が増えてしまう気がするんです。そのために何をするかと考えたら、もう流通を切るくらいしかなかった。すでに事務所も出版も持っているし、制作も自分たちでできますし、営業も広報もできるわけじゃないですか。そう考えると、大きなメジャーの流通にいる必要はないかもと。大きな資本の中で行う型通りの制作工程から離れて、自分たちがいいと思っているものを作った方が、周りの人たちより頭一つ抜けられるのではと思いました。なので、まず流通をライブハウスからはじめて、ファンの人たちのお店に直売をしていく。そうすると、ユーザーに渡るまでにかかるお金って送料くらいになる。あとはファンの人たちから頂いたお金と私たちが手に入れたお金が直接なので、モノと制作のクオリティが結びつくわけです。このカタチでやっていけたら面白いかなと思って続けていたら3年も上手くいってしまったんです。

— 今は結構な数のお店に卸していますよね。

ミト:総数的には300。今現在、実際に置いてある店舗だけでも150くらいですかね。やっぱり、時間もそうだし、人が買いに行くという行動を促すことができたというのが結果に繋がっているんだと思います。実際、メジャーのレーベルで売り上げる枚数と、うちのレーベルで売り上げている枚数は、実はもうあまり変わらないんです。それなら、クラムボンが一生懸命制作できる状態を自分たちで作った方が、ファンも喜ぶし、買う人も喜ぶし。っていう流れですかね。

— ライブ会場でサイン会を行ったり、フリーライブや、クラウドファウンディングをしたり、ファンとの関係や、音楽を届ける工程について、常に新しい試みをされてますよね。

ミト:今はストリーミングのサブスクリプションが主流になりつつありますが、クラムボンはそこから完全に離れています。あくまで、私たちはこういう方法もあるのではと思っているんですよね。人と同じことをやっても絶対に面白いことはできないですから。モノが100%なくなるということは、この先ありえないわけです。それをどれだけ息苦しくない状態で続けていることを見せられれば、みんなももっと音楽を作ったり聴いたり手に入れようと思う気持ちが刺激されるのでは、と思うんですよね。私たちみたいにやっていくのは、なかなか特殊だとは思うんですけど、それが楽しいし、面白い。それが、CA4LAさんにCDを置いてもらうという、予想だにしない結果になるわけですよ(笑)。誰も考えていなかったと思います。やっぱり普通と違うことができるというのが楽しいんですよね。ありえないことや他にないものを作るというのが私たちがやっていることなので。

— 自分たちで流通までできるからこそ、今回の新譜のような作品が作れるという側面もあるんでしょうか?

ミト:そうだと思います。クラムボンの音楽について文句を言う人はいない状態なので(笑)。私に至っては、とにかく、自分がこれ面白いなと思うもの以外は絶対に作らないですから。作曲などのオファーをいただくこともありますが、それは私と言うフィルターを入れたいわけであって、本質的な部分では自分のこだわりや好みを入れるつもりは全くありません。しかし、クラムボンに関しては、世間がどう言おうがあまり気にしないで作っています。それくらい強い気持ちじゃないと、面白い音楽はできないですよね。ある時期から、日本ではバンドに求めるリクエストを受け入れないといけない時代があったわけですよ。いわゆるロックアティチュードだったり、バンドとはこうあるべき的な。私たちは出た時からそういうのをかたっぱしから壊していると思う。そうでないと、全編打ち込みで『WARP』なんて曲とか作らないですよね。やっぱりそういう刺激などがないと、みんなはついてこないと思うんですよね。反応的にはあまり良くないだろうなってものでも出し続けていかないと。こっちに関心を持ってこれないわけですね。それをずっと続けていっている部分があります。今はクラムボンが打ち込みだけで曲を作っても誰も文句は言わないでしょうし、それがずっと続けてきた結果なんだと思います。