『挑戦する色としての「黒」』橋本敦(スタイリスト)

by Mastered編集部

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最近フレアのパンツは穿かない

— 今までは「黒」っていう色を特別フックアップするようなことはなかったんですか?

橋本:黒いスーツが必要になることはもちろんありましたし、そこから靴から何から、黒でまとめられるように色々そろえましたけど。カジュアルなものではあまり記憶がないですね。
今日の格好もそうなんですけど、基本的には赤と赤で挟んだりとか、言うなれば自論”B-BOY的色合わせ”(笑)的な感覚がつねにあるような。そこで、同じ感覚で黒を合わせちゃうと単調なコンサバ感が強くなってしまう気がね。でも、最近、グレーベースというか、モノトーンだけでまとめたりとかするのが自分が着るものには今更新鮮に映ってるんでしょうね。

— 差し色としての黒ではなく、モノトーン。

橋本:そう。今までもスタイリングには反映させてたんですけど、今回は本当にパーソナルな部分っていうことで。
モードでいうなら、エディ・スリマン(Hedi Slimane)がやっていた頃のディオール・オム(Dior homme)はすごくカッコイイなと思っていたんですよ。なんかあの人ってすごくモードでありながら、アメリカンな素材使いとかするじゃないですか。黒とベージュの相性を踏まえた使い方とか。

取材当日もダブル裾のクロップドパンツで。

取材当日もダブル裾のクロップドパンツで。

— 本人もアメリカっぽいモノをよく着ていますもんね。

橋本:ですね。やっぱり僕は真っ黒っていうよりは、ボトムはチノかグレーのスラックスなんかを合わせる感じが好きで。定番的な合わせなんですけど、元々チノカラー(ベージュ/ カーキ)が好きだっていうのもありますし。自分にとっての黒の着方は真っ黒なら素材感の差をつけるとか、チノ(ベージュ)で合わせて着る事が多いです。なので全身真っ黒には抵抗がありますね。

— 確かになかなか難しいですよね。

橋本:ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)の作る世界感は基本何でも好きなものが多いですが、その中でもブラックレーベルのようなラインは特別ハードルが高く感じてしまう気がして。スタイリングで着せるときは何の抵抗もないのに、いざ自分が着るとなるといきなり難しく感じちゃうんですよね…不思議です。黒はコンパクトに見せる効果があるから、小さくまとまっている感じが、似合う似合わないではなく苦手なんだと思います。おそらくどこかコンプレックスにリンクしているんでしょうね。
今回も黒が気になるって言いながら、パンツは一切無いんですよ。自分の身長があんまり大きくないから、全身黒だとメリハリがつかなくて。

— 黒のドレスシャツなんかも、海外の雑誌とか見て格好良さに惹かれて買ってはみるんですけど、全然着ないなんてことがよくあります(笑)

橋本:そうそうそう。だけどパーティでタキシードを着たりするのは好きで、そのときだけは「タキシード=黒がイイ」ってなるんです。だから「フォーマルは黒」っていうのは理解が出来るし、逆に「黒はフォーマルを連想させるから抵抗がある」っていうつもりは今までなかったんだけど、今こうやって話してたらそうなのかな? とも思ってきました(笑)

— やっぱりパンツはチノカラーが多いんですか?

橋本:ほとんどチノかグレートーンのスラックスですね。シルエット的にはトレンドかもしれないけど、クロップド丈だったり。一昨年ぐらいはトム ブラウン(Thom Browne)にやられて、5.5〜6cm幅のダブルにしてみたりしたけど、最近はもう少し細めに。
僕っていうとフレアのパンツっていうイメージが強いと思うんですけど、ここ最近は極力穿かないようにしてます。自分の中で新しいスタイルを作りたいテンションなんでしょうね。個人的にフレアはバランスが取りやすくて好きなんでけど…。

— 最近ハマっているという「黒」に対して、ずっと好きな色というのはありますか?

橋本:やっぱりカレッジモノ。別にキャンパスライフに憧れていたわけじゃなく(笑)、ただ向こうの大学のカラーセンスが好きで。古着屋でバイトしていた18歳のころからずっと好きですね。

— いいですよね。ちなみに、このぬいぐるみもカレッジモノなんですか?

橋本:カレッジペッツっていって、1904年創業のCOLLEGIATE MANUFACTURING COMPANYっていうところで作られたモノのようです。間違っていたらすいません…。持っているモノに書いてあったので。
LAに行くとお世話になってる方が集めてて、その方から教えてもらったのがキッカケで集め始めたんです。見つかれば集めていきたいなぁとは思ってるんですけどね。

— すごく可愛らしいですね。やはりあまり見つからないモノなんですか?

橋本:なかなか出会う事は少ないですね。あっても売り物でなくディスプレイ用だったりと、状態よくあれば集めてます。

— やはりこの厳選された古着のカレッジモノの数々は圧巻です。カラーリングも素晴らしいですね。

橋本:バーガンディにオフホワイトだったり、ネイビーにイエローだったりっていう、自分のスタイリングのベースとなる配色の黄金比を作ってくれたのは、やっぱりカレッジモノのカラーリングの恩恵もあるように思います。

— どちらでよく買われるんですか?

橋本:恵比寿のスタンダードカリフォルニアがほとんどで、あとは高円寺のスラットというお店もいいですね。スタンダードカリフォルニアはオープン当初からチャンピオンのリバースウィーブが棚にびっしりあって、清潔感もあって、他の店とチョイスする目線が違っておもしろいんです。今回持ってきた古着も、8割方はあそこで購入したモノだと思います。
あと気になってるモノがあれば探してもらったりもしてます。この中だとネイビーのスウェットがそうだったり。ネイティブ柄のジャケットもそうなんですが、これローレン(Lauren。ラルフ・ローレンのレディースライン)のSなんですけど、バッチリ。ただこれでレディースって、一体どんなサイズ感だっていう感じですが…。

(一同笑)

でも、こうやってネイティブ柄のジャケットもそうだけど、遊び心のあるモノ見てるとそれだけで楽しいですよね。そんなときに、どこかにいつもラルフ・ローレンっていう存在がいることにあらためて気付いて。あの人が作る世界観って、本当にライフスタイルなんですよね。衣食住がつねにリンクしてて。20歳のとき初めてニューヨークの本店に行ったときは感動したし、マリブのダブル アール エル(RRL)も空気感というかいい雰囲気ですよね。「この人なんでこんなに振り幅広いんだろ!?」「なんてカッコイイんだろう!?」って。
あと、ラルフ・ローレンの描く女性像にも惹かれます。

— もし自分でレディースモノを作ったり、女性のスタイリングをするとしたらあの感じになる、という事ですか?

橋本:いや、スタイリングするっていうよりは、あれをチョイスしてる女性がイイなって。

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