対談:Alex Olson × Eric Duncan
スケートボードとダンスミュージックの新たな関係性

by Mastered編集部

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パレスがスケートとダンスミュージックの新しい関係性を提示したことが1つのきっかけとなって、僕は[Call Me 917]を始めたんだ。(Alex Olson)

— 昨年、イギリスのPalace SkateboardsがTheo Parrishのヴァイナルをリリースしたり、近年、スケートと音楽の関係性に大きな変化が起こっているように思います。

Alex: 音楽とスケートのディープな関係性っていうのはずっと続いているけど、今のスケート・カルチャーにおけるトレンドがハウスミュージック寄りになってきているのは確かだね。何故かって、それが唯一スケートボーダーに探求されていなかったジャンルだから。そして、もちろん、パレスの影響も大きいと思う。自分の知り合いにも、最近、Moodymannにハマっているスケーターたちがいるし、フランスの子たちはイタロ・ディスコにハマってて、(伝説的なイタロ・ディスコDJ)ダニエレ・バルデッリのDJミックスを交換したりしてるよ。

Eric:へぇー。パレスがビデオで使ってるダンスミュージックを聞いてみたいな。

Alex:彼らがリリースしたTheo Parrishのレコードは9,000枚売れたって聞いたよ。そして、パレスがスケートとダンスミュージックの新しい関係性を提示したことが1つのきっかけとなって、僕は自分の新しいスケートカンパニー、[Call Me 917]を始めたんだ。

Eric:なるほど。イギリスの新しい動きに触発されたわけだね。イギリスのスケートカンパニーでここまでリスペクトされている会社って今まで無かったけれど、アメリカではヒップホップがメインストリームなのに対して、イギリス、ヨーロッパのメインストリームはあくまでダンスミュージックだから、土台となる音楽カルチャーの違いもあって、イギリス、ヨーロッパではスケートとダンスミュージックが強く結びついたのかもしれないね。

Alex:パレスは他のスケートカンパニーみたいにスケートチームがそこまで大きくなく、スターがいるわけでもないんだけど、最近のスケート界の流れとして、チームの大きさや成績はあまり関係なくなってきていて。みんな技術的にあまりにも上手くなってしまったから、今はライダーが醸し出すヴァイブスやスタイル、つまりアートディレクションやイメージが重要になってきているんだけど、パレスはそこら辺がすごく上手い。クールでアンダーグランドな匂いがするから、沢山のファンを獲得しているんだと思うし、そういった流れが大きくなりすぎたスケートカンパニーの不調にもつながっているんだ。

Theo Parrishのアルバム『American Intelligence』

Theo Parrishのアルバム『American Intelligence』

— [VISION(ヴィジョン)]が倒産してブラインドを始めとする小さいカンパニーが台頭した90年代の一連の流れの繰り返しですね。

Eric:World Industriesをみんなが辞めてガールを作った流れと全く一緒。

Alex:そして今やガールも……。

Eric:大きくなりすぎてしまったよね。

— 一方で、フットワーク軽く、[Bianca Chandon]、[Call Me 917]を立ち上げたアレックスは、この秋、新たに設立した[Bianca Chandon]のレーベルから”&CO.”名義でヴァイナルをリリースするんですよね?

Alex:ポールとアルベルト・ホフと組んでね。アルベルトはイタリア人の作曲家なんだけど、彼がサウンドを担当していたガール/チョコレートのスケートビデオ『Pretty Sweet』を通じて知り合いになったんだ。そして、それとは別に、サーフィンを始めたばかりの彼は、海でポールと知り合いになって、ごくごく自然に3人が集まった。そんなこともあって、制作プロセスは違和感なくオーガニックに進んだよ。

Eric:すごくいい出来だった。この前、ベルリンのクラブで朝方にかけたんだけど、良い音が出てたし、みんな食らってたよ。

— 今後も継続的な音楽活動を考えていますか?

Alex:色々と忙しいから、音楽制作は、時間を見つけられればって感じかな。まぁ、ピアノの練習したり、自分でエディットを作ったりもしてるけど……。

Eric:いつも、質問攻撃(笑)。

Alex:ははは。そう、僕は質問魔なんだ。

— それに対して、エリックはどんなアドバイスをするんですか?

Eric:アレックスと同じ音楽ソフトを使ってるから、技術的な話だね。あとはアドバイスというより、曲の感想かな。「サンプルで使ってるネタがイケてない」とか、「そのネタはもう使われてるよ」とかね(笑)。ちなみにアレックスが一番最近聞かせてくれたやつはなかなか良かったよ。

— 先輩はなかなかキビしいですね(笑)。

Alex:そう。だから、ポールが「いい!」って言ってくれた時は自分に自信持てるんだ。

— えっ、エリックじゃなくて、ポール?

Alex:そう。エリックは聞いてくれるまで時間がかかるというか、聞いてくれない時もある(笑)。だから、僕としてはエリックにダウンロードしてもらっただけで光栄だよ。

Eric:デスクトップにデータを置きっ放しにしてしまうだけなんだ(笑)。ちなみに、僕が作る曲もポールにダメ出しされたりするんだけど、意外とそういう曲が一番売れたりするんだよね(笑)。ポールのテイストはみんなよりアンダーグラウンドだし、ねじれているから、その点を考慮しないと(笑)。

— ダンスミュージックに入れ込むアレックスを見て、エリックはどう感じていますか?

Eric:自分が関わってきたアンダーグランドなダンスカルチャーをプッシュするために、彼はすごく良いポジションにいると思う。というのも、ここまで幅広く支持されてるスケーターが、アンダーグラウンドなダンスカルチャーをサポートしてくれたことは今までになかったからね。アレックスを通じて、今までこのカルチャーを知らなかった人たちが目を向けるきっかけになったらいいよね。

— 最後にエリックの今後のリリースについて教えてください。

Eric:9月にブラジルのレーベル、Mareh Musicから10インチ・シングルでブラジリアン・ディスコのリエディットをリリースしたばかりなんだけど、今は(元チック・チック・チックでDJの)ジャスティン・ヴァンダーヴォルゲンとの新しいユニット、Happy Familyの制作を進めているところ。キーボードとドラムマシーンを使ったヘヴィーなトラックなんだけど、BPM140くらいのクレイジーでノイジーなダンスミュージックだよ。2ヶ月前に12インチ・シングルを出したんだけど、さらに9曲を制作中で、アルバム形式で出すか、シングル形式で出し続けるか検討しているところだね。それから、イギリスのレーベルからソロEPをリリースする予定だから、楽しみにしていて欲しいね。