まだ間に合う! 正月休みのうちに見ておくべきDVD/映画 20選

by Mastered編集部

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監督の持ち味が見事に発揮された「日本映画」

『愛の渦』

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演劇ユニット、ポツドールを率いる演出・脚本家、三浦大輔が同ユニットの舞台劇を映画化。着衣シーンはわずか、18分半。「ヤリたくてたまらない、スケベな人達」だけが参加できる乱交パーティーに集まった、年齢も肩書もバラバラな男女たち。そんな中、ニート(池松壮亮)は、女子大生(門脇麦)に特別な感情を持ち始める。

沈黙の中で遠慮がちに話を切り出す居心地の悪さ、白々しい雰囲気や、初対面の気まずい空気感など、セリフの間、挙動の一つ一つが目を背けたくなる程生々しい。役者陣の演技力によって人間の愚かで醜い部分を、まざまざと見せつけられる。

きっと誰もが、本当の自分と生きていく為の自分はまるで別の人間なのだろう。社会と切り離された特殊な空間で、欲望をぶつけ合ううちに様々な感情が渦巻いていく。昔に比べ、割り切った肉体関係が許容されがちな時代で、性行為に伴う人間関係の面倒なしがらみを描くのは、逆説的な愛のメッセージなのかもしれない。

『もらとりあむタマ子』

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年間100本以上映画を見ているという映画通の前田敦子が、自ら大好きと語る山下敦弘監督作品に『苦役列車』に続き、再び出演。今回は主役を務める。東京の大学を卒業後、実家に帰省し、就職活動をするわけでもなく自堕落な日々を過ごす坂井タマ子(前田敦子)23歳。スポーツ用品店を営む父親は(康すおん)は、そんな娘を強く叱るわけでもなく、季節は流れてゆき、ようやくミリ単位の小さな一歩を踏み出すまでを描く。モラトリアムというテーマを扱う中で、AKBを卒業し今後どんな方向に向かって行くのかという時期の女優前田敦子を起用するというアイロニックなキャスティングがおもしろい。

抑揚なく淡々と進む独特の山下節が今作でも炸裂し、Sunday!ただただダラダラ過ごして、Monday! まだまだダラダラ過ごして、Tuesday!まだまだダラダラ過ごして…と基本的にストイックなまでにただただダラダラ過ごすだけで何が起こるわけでもないが、サブカル、アート系の映画好きにはハマればたまらない絶妙なゆるゆるの脱力感。78分という短めの尺もちょうど良い。

実家のこたつでダラダラと夕飯が出て来るのを待ちながら見るのには最高だ。正月ぐらいのんびりいきましょう。

『渇き。』

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原作:深町秋生『果てしなき渇き』を、『告白』の中島哲也監督が映画化。役所広司演じる父親が、失踪した娘(小松菜々)を追う中で、関わる人間全ての人生を狂わせていってしまう娘の知られざる一面が明らかになっていく──。

劇薬エンターテイメントという宣伝文句の通り、映画そのものがドラックのようなつくり。過激なシーンで魅せながら、躁から鬱へとシーンの緩急が連続的に続く。クリーンなイメージの役所広司が今作では、どうしようもないろくでなしを好演。ドラッグをキメて暴走する演技は息を飲む程の迫力だ。

それでもなお、豪華キャスト陣を全員食ったと言っても過言ではない程に、小松菜々のミステリアスな存在感が際立っている。初演技とは思えない程、狂気的で、儚く、美しいその魅力に釘付けになってしまう。

『中学生円山』

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「妄想する。神が人類にのみ与えたおまけみないな能力。」中学生の青春妄想劇を描いた宮藤官九郎映画3作目は、そんなナレーションから始まる。自分でフ◯ラしたいが為に日々、過酷なトレーニングに励むうちに、柔軟体操の途中で妄想の世界にトリップしてしまう能力を身につける主人公。ストーリーが進むに連れて、現実と妄想の境界線が曖昧になっていく──。

脳科学的には、脳は現実の出来事と想像の出来事の区別ができないと言われていて、幸せな事を妄想することで、実際に経験したも同じような幸福感を得ることができるそうだ。そう考えると、現実かどうかはあまり重要ではないように思える。本作も安定のクドカンワールド炸裂のぶっ飛んだコメディなのだが、「考えない大人になるくらいなら、ずっと中学生のままでいるべきだ!」という台詞に監督のメッセージが詰まっているのだろう。

『WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~』

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『ウォーターボーイズ』、『スウィングガールズ』の矢口靖監督自ら最高傑作と評する最新作。都会で暮す主人公(染谷将太)は、大学受験に失敗してしまい、パンフレットに写る美女(長澤まさみ)につられて、1年間ケータイも繋がらない田舎で林業を学ぶことになる。

確かに、ありがちな爽やか青春映画の成長ストーリーではあるのだが、あまり馴染みのない林業という職業にスポットライトを当てるテーマ選びが秀逸。100年前の先祖のおかげで、今仕事ができる、今、苗を植え、枝を切るのは100年先の子孫の為、生きているうちに成果を目にする事ができないという人間の生命のサイクル越えた自然の営み。自分たちもその生命の大きな流れの一部であるという自覚のもと、地元に根を張り人生を送る山の男たちの姿に主人公の考え方も変化していく。中でも、男臭く荒っぽい山の男を演じる伊藤英明が本業と見紛う程、様になっていて最高の演技を披露してくれる。映画版ジャイアンさながら、クライマックスに感情をあらわにするシーンでは、どうしても胸が熱くなってしまう。

空気の澄み切った神秘的な森の景色など、心洗われる映像美も素晴らしい。田舎とは無縁のアーバンライフを送るEYESCREAM.JP読者諸君よ、小難しいおしゃれ映画もいいが、たまには軽い気持ちでこんな作品に触れてみてはいかがだろう。

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