Photo:Atsushi Fujimoto | Text&Edit:Nobuyuki Shigetake
僕が下北沢という街の存在を意識し始めたのは、およそ9年ほど前。映画『モテキ』で森山未來が扮する、主人公の藤本幸世と、長澤まさみ扮する雑誌編集者(設定ではEYESCREAM編集部、でしたね)の松尾みゆきが、Twitterでのやり取りを経て初めて会った街。
上映当時、大学1年生だった僕は良くも悪くも、非常にこの映画から影響を受けた。どうにも報われない幸世や、金子ノブアキ扮するイベント会社の若手社長が放つ、圧倒的な”これは勝てない感”。そして、みゆきが発する別ベクトルの”これは勝てない感”。
今思うと、僕が”悲しきサブカルモンスター”になってしまったのは、この映画がきっかけだったのかもしれない。
そんな背景や映画の内容もあり、なんとなく性の香りがしないでもないイメージをこの街に持っていたけど、都合5年ぶりに降り立った下北沢は、主に駅前をメインに、ガラッとその姿を変えていた。
整頓されてはいるが、全体的に未完成な雰囲気。至る所にフェンスが立ち、何もない、ガランとした空間も少なくない。でも、若者は多い。それも、ステレオタイプの”シモキタ系”が揃い踏み、といったところだ。
少し街に踏み入ると、平日ど真ん中にもかかわらず多くの居酒屋がそこそこ集客していることに気がついた。「曜日にあまり左右されないライフスタイルを送っている人が多いのかな?」と思ったが、大半が大学生やフリーターなんだろう。
総じて”若者の街”といった印象だが、身の回りの人たちから「下北沢で飲む」、「下北沢で遊んでいる」という声を聞くことが、まあ多い。
大人たちは、下北沢のどこに行くのだろうか。そんなことを考えながら、迷路のように入り組んだ裏路地に入ってみると、昭和の面影を残したいくつかの飲食店が見える。
少し離れて様子を伺っていると、”ニューサニー”と書かれた妖麗なネオンの灯に釣られ、ひとり、またひとり店内へと吸い込まれていった。