めくるめく「スナック」の世界。東京のスナック 第8回:世田谷区北沢・ニューサニー

by Nobuyuki Shigetake and Mastered編集部

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石を投げればダンとシャンに当たる

奥へと続くカウンター、ダウンライト、大量のキープボトルと、”ザ・スナック”的な店内は、まもなく創業より50年を迎えるというにもかかわらず、非常に清潔な雰囲気。

「いらっしゃい。今日は初めての来店ですか? ゆっくりしていってね。1杯目は何にしますか?」。

長澤まさみが「ドロンします!」と言って夜の街に消えて行くシーンの背後に映る”餃子の王将”で食事を済ませていたぼくたちは、オススメされるがままに、ヘベスが入ったサワーをオーダー。

キープボトルはこの3倍以上の数が。

ミカン科の柑橘類・へベス。酸味が柔らかく突出していない為、酸味・香り・味のバランスが非常に良い。

10席程度のカウンター席をまわすのは3人のママ。それぞれが完全に仕上がっている常連客と、楽しそうに会話をしている。

お客さんの層を伺うと「下北沢は”石を投げればダン(=劇団員)とシャン(=ミュージシャン)に当たる”なんて言われてるからね。お客さんもそんな感じよ(笑)」。

看板娘のスージーちゃん。

見渡すと、確かに年齢層は少し低め。そこはやはり街柄か、と納得。実際のところ、創業当初から下北沢は若者に拓けた街だったのか伺ってみると、

「そんなこともないのよ。きっかけは、(本多)劇場が出来たことかな。それから若者が多くなったの。昔は、ピンク・サロンも何店舗かあったし、駅前にはキャッチと立ちんぼの女の子がずらーって。すごかったんだから!」。

新宿、渋谷、池袋などと同様に”夜の街”としてかつて男たちに愛されていた下北沢は、今や清廉潔白なカルチャーの発信地。高円寺、吉祥寺と同じく、”サブカルタウン”として語られることも多いが、かれこれ20年下北沢で暮らしているという、チーママのみゆきさんはこのように語る。

「昔はもっと、個人経営のディープなお店が多かったんです。いわゆる”シモキタ”っぽい感じの。でも、今はもうメインの通りはチェーン店ばかりになっちゃって。どんどん変わっていってますね。それでも、やっぱり帰ってくると落ち着くんですけどね」。

よく下北沢で飲んでいるという同年代のふたりとかりそめの会話を楽しむ。
「またお会いしたら、乾杯しましょう!」と熱いシェイクハンズをさせてもらった。

また、かつてテレビ東京の『アド街ック天国』で下北沢の紹介がされた際に、”シモキタの愛のキューピッド”という異名とともに同店およびしょうこママが紹介されたことも。

「(うちは)若い女の子を雇ってるでしょ。だから、常連さんとの色恋もあったりして(笑)。これまでに、何組も結婚してるの。常連さん同士がくっつくこともあって、合計すると、もう10組以上になるかも」。

下心全開で来店するのは当然NGだけど、良いバイブスが渦巻いていることは間違いなしなので、男性諸君は足を運ぶことをオススメしたい。