めくるめく「スナック」の世界。東京のスナック 第3回:新宿区四谷・プレジデント

by Nobuyuki Shigetake

諸説はあるけど、全国に約16万軒以上存在していると言われており、コンビニが全国で約6万軒だから、その2倍以上の数。途轍もない数字であることは、言うまでもない。日本中"どこにでもある"けど、日本にしかない、日本独自の文化。それがスナックだ。
日常的に目にしているはずなのに、僕たちは思っている以上に、その実状を知らない。それどころか、一度も行ったことない、なんて人も多いのではないだろうか。それは、もしかしたらとても損をしているかもしれない。
この連載では、東京近郊のスナックにフォーカスし、名物ママへのインタビューや店舗の情報など、スナックに行く上で知っておいた方が良いことを、撮り下ろしの写真とともにご紹介。第3回は、新宿区四谷のスナック、プレジデント。さあ、重い扉を開き、中へと入ってみよう。

Photo:Atsushi Fujimoto | Text&Edit:Nobuyuki Shigetake

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西新宿、もとい、荒木町の竜宮城

大江戸線の西新宿五丁目駅。十二社通りと青梅街道との交差点にプレジデント・ハウスという名の、ひときわ異彩を放つスナックがあった。当時、あの辺りに住んでいた僕は、「これは、一体なんだろう」とずっと思っていたけど、その頃は行ってみようなんて少しも考えていなかった。今回、この連載は新宿区編を予定していたため、取材にかこつけて行ってみるか、と鼻息荒く足を運ぶと、ななななんと閉店……。

「再開発の魔の手がここにも」と膝から崩れ落ちそうになるのを堪えながら、看板があった場所を見やると、「四谷三丁目に引っ越しました」との文字と住所が。屋号からはハウスが取られ、プレジデントに変更したらしい。僕らは急遽、四谷三丁目へと目的地を変更した。

四谷三丁目駅前の交差点。平日の夜は人もまばらだ。

古き良き雰囲気が残る荒木町。

丸ノ内線、四谷三丁目駅で下車し、新宿通りをJR四ツ谷駅方面に3分ほど歩いたところに、プレジデントはある。背には荒木町。超都心ながらどこか下町のようなおやじっぽい雰囲気は、かつての花街の面影なのかもしれない。

「2018年の7月に、四谷三丁目に引っ越してきました。あの辺一帯(西新宿)は、これから開発が始まるでしょう。立ち退きは早い段階で決まってたんだけど、最後まで居て、”粘ってる”って思われたら嫌だったから、一番最初に出てきちゃったんです」

かつてのお店と比較し、3分の1ほどのサイズに縮小したという店内。シックな雰囲気で統一されたインテリアに、1975年製のジュークボックスがサイケデリックな光を添える。

銅板が貼り付けられたテーブルや花柄の織りが入ったベロアのチェアー、入り口に鎮座する亀の剥製は、以前の店舗からそのまま持ってきたとか。

「前にお客さんが、この亀を見て言っていたの。”タイムスリップしたみたい。まるで浦島太郎のような気分だ”ってね」