Photo:Atsushi Fujimoto | Text&Edit:Nobuyuki Shigetake
大江戸線の西新宿五丁目駅。十二社通りと青梅街道との交差点にプレジデント・ハウスという名の、ひときわ異彩を放つスナックがあった。当時、あの辺りに住んでいた僕は、「これは、一体なんだろう」とずっと思っていたけど、その頃は行ってみようなんて少しも考えていなかった。今回、この連載は新宿区編を予定していたため、取材にかこつけて行ってみるか、と鼻息荒く足を運ぶと、ななななんと閉店……。
「再開発の魔の手がここにも」と膝から崩れ落ちそうになるのを堪えながら、看板があった場所を見やると、「四谷三丁目に引っ越しました」との文字と住所が。屋号からはハウスが取られ、プレジデントに変更したらしい。僕らは急遽、四谷三丁目へと目的地を変更した。
丸ノ内線、四谷三丁目駅で下車し、新宿通りをJR四ツ谷駅方面に3分ほど歩いたところに、プレジデントはある。背には荒木町。超都心ながらどこか下町のようなおやじっぽい雰囲気は、かつての花街の面影なのかもしれない。
「2018年の7月に、四谷三丁目に引っ越してきました。あの辺一帯(西新宿)は、これから開発が始まるでしょう。立ち退きは早い段階で決まってたんだけど、最後まで居て、”粘ってる”って思われたら嫌だったから、一番最初に出てきちゃったんです」
かつてのお店と比較し、3分の1ほどのサイズに縮小したという店内。シックな雰囲気で統一されたインテリアに、1975年製のジュークボックスがサイケデリックな光を添える。
銅板が貼り付けられたテーブルや花柄の織りが入ったベロアのチェアー、入り口に鎮座する亀の剥製は、以前の店舗からそのまま持ってきたとか。
「前にお客さんが、この亀を見て言っていたの。”タイムスリップしたみたい。まるで浦島太郎のような気分だ”ってね」