庄司信也 × 安孫子真哉 × 角張渉の『レコ道 ~ 音楽トキワ荘 ~』 第2回(ゲスト:伊賀大介)

by Mastered編集部

5 / 6
ページ

— 伊賀さんがスタイリストになったキッカケを教えてください。

庄司:この話さ、めちゃくちゃ面白いよね。ほんと、伊賀君っぽいというか(笑)。

伊賀:専門学校に行っていた時にスタイリストっていう職業を知って、目指そうと思ったんだよね。Bjorkのデビューアルバムのアートディレクションとかを手掛けたJudy Blame(ジュディー・ブレイム)に憧れたのがキッカケかもな。その後は、七種諭さん、水谷美香さんが俺の中のスーパーアイドルだったね。『i-D』とか『The Face』を当時めちゃくちゃ読んでて。しかも学生で金がなかったから、新宿のタワレコで全てのページを食い入るように立ち読みしてた(笑)。雑多なものも好きだけど、ハイファイなものもすごい好きでさ。とにかく、日本のシーンをクソなめてたわけ。忌野清志郎以外の音楽は音楽じゃない、みたいな(笑)。

庄司:本当にすごいよね、この人は(笑)。俺は伊賀君と付き合いが長いから、この話にも合点がいくんだけど。その後に、なんで熊谷さんに弟子入りしたのかっていう話もめちゃくちゃ面白い。

伊賀:スタイリストになりたいからっていう想いで、エスモードっていう専門学校に入ったんだけど、授業もまともに受けていなかったな、当時は。俺が在学中にエスモードのパリ校卒業生として熊谷さんが東京校に来たんだよね。その時の熊谷さんの格好がさ、サボタージュのボロボロのパーカ着てたんだよね、それにダスターコートを合わせて。ファッション雑誌を全く読んでいなかったから、俺は熊谷さんのことを全然知らなかったんだけど(笑)。そしたら、熊谷さんに「おれのところ来るか?」って言われて。すぐに学校の退学を親に打診したんだよね、めちゃくちゃ揉めたけど(笑)。

庄司:給料はもらえたの?

伊賀:全然だよ(笑)。休みも全然なかったし。でも、アシスタント初日にスタジオに行ったら、菅野美穂さんがいて、めちゃくちゃテンションが上がったんだよね。フォトグラファーも平間至さんで。平間さんは『MOTOR DRIVE』っていう写真集をリリースしたばかりだったはず。『ROCKIN’ON JAPAN』も当時めちゃくちゃ見てたから、感動したな。ファッションには興味なかったけど、平間至さんはめちゃくちゃ好きだった。

庄司:それでスタイリストをやっていこうって、決心できたんだ?

伊賀:そうそう。熊谷さんとは映画好きっていう共通の趣味もあって、よく話したよ。

安孫子:庄司君はなんで、アパレルから音楽業界に入ったんだっけ?(※編集部注 庄司さんはN.HOOLYWOODの設立メンバーでもある)

庄司:それも流れみたいなものだよ。先輩に紹介されてみたいな。

伊賀:元々、尾花さんは知り合いだったの?

庄司:うん、先輩の先輩。

安孫子:どのくらい在籍してたんだっけ?

庄司:4年ぐらいかな。在籍時から、俺はファッションじゃないなってことには薄々感づいていて(笑)。

— 今は尾花さんと直接お仕事はしていないんでしょうか?

庄司:そうですね、声をかけてはもらってるんですが、まだ実現できていませんね。

安孫子:庄司君はNハリの中でもパンク担当だったもんね(笑)。

伊賀:パンクだね(笑)。 そういえば、パンクの話とリンクするんだけど、カンパニー松尾さんが監督した『劇場版 テレクラキャノンボール』の主題歌と挿入歌を担当したWeekday Sleepersってバンドがめちゃくちゃ好きでさ。”Keep Left”って曲を聴くと気分が良くなるんだよね。

庄司:あー、”Keep Left”はヤバいね。

伊賀:”Keep Left”の歌詞の中に「ちょっと金を稼いだら、また旅に出よう」ってワードがあるんだけど、すごい身の丈にあってるというか。さっき話に出たCAR10とWeekday Sleepersは近しいものを感じるんだよね。

安孫子:なるほどね。今の若い人たちの価値観は俺たちの世代と違うよね。常にロマンを求めているように感じる。

次のページに続きます。