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Interview&Text : Yu Onoda | Edit:Keita Miki | Visuals:Takara Ohashi
※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)
— HYDRO BRAIN MC’sは、現在、岩手に住んでいるAQUADABが名古屋に住んでいた時の家、通称、”精神と時の部屋”に集っていた面々なんですよね?
AQUADAB:僕は高校一年で退学しているんですけど、当時Tokona-Xがただ見たいという理由だけで地元の岩手から年齢で言えば16歳の時に名古屋に出てきて、ラップをやりながらトラックを作っていて。BLACK CONNECTIONというグループで活動していたんですけど、活動を続けていくなかで、方向性が合わなくなってきていて。そんな時にNEROとタナケン(Karavi Roushi)と出会いました。
Karavi Roushi:実は、僕が名古屋で初めて見たラップグループがBLACK CONNECTIONなんですよ。
NERO IMAI:お前、初めから終わっとるね(笑)。
AQUADAB:それで2人が家に入り浸るようになって。その前からイベントなんかで(呂布)カルマくんやK.LeeくんといったラッパーやAUN Muteのメンバー(Campanella、Ramza、Free Babyrinia)だったりも一緒のイベントでよく顔を合わせていて。
NERO IMAI:そんななか、トラックメイカーに転向したAQUADABがMPCを永遠に叩き続けるような生活を送っていて、そうやって作ったビートにその場で乗れるやつがラップするという遊びを延々とやっていたんです。
AQUADAB:当時からタナケンはラップ博士みたいな立ち位置で、NIPPSのヴァースだけで構成されたミックスを作ったりしてたよね。それで僕はDJ KRUSHの『覚醒』とかも聴いていて、あのアルバムの”めちゃくちゃ白いんだけど、めちゃくちゃドス黒い音”にハマった流れからscapeレーベルのようなテクノ、ミニマルダブを聴くようになって。それとTimbalandも大好きだったのでそれらを合わせたようなトラックを作って、そこにNippsが大好きなのは分かっていたんですが、「Missy Elliotみたいにラップして~」とオーダーしてタナケンがラップを乗せたのが最初のレコーディングだったよね。
NERO IMAI:テクノを聴きつつ、その時々のヒップホップを聴き続けて、Timbalandでもめっちゃ踊っていたし、その後、Soulja Boyに移行していった時も最高だと思ったな。
AQUADAB:そして、トラップを最初に持ってきたのもCurren$yの『King Kong』なんかも薦めてくれたのもタナケン。とにかく情報が早かったし、タナケンが食らった曲は俺らにとっても重要なことが多かった。
— Karavi Roushiは常に最新のラップを掘り続けていた、と。
AQUADAB:とにかくラップ。ラップ以外に興味ないんですよ(笑)。
Karavi Roushi:ラップ以外の音楽を聴いている人はホントに信用できない。
AQUADAB:はははは。でも、昔からホントにそんな感じでしたね。
— その後、曲を作り続けていたものの作品は出さず、それぞれ名古屋に残ったり、離れたりして、散り散りになったメンバーは、LINEを介してトラックや情報をやり取りしていたとうかがっています。その話を聞いて、シーンの変わり者、はぐれ者たちがSoundCloudでの交流を通じてクラウドラップの流れを生み出したように、LINE上に集っていたHYDRO BRAIN MC’sもポスト・クラウドラップ的な側面があるのかなと勝手に想像していたんですけど。
AQUADAB:もちろん、Lil Bとかも聴いていましたよ。
NERO IMAI:まぁ、Lil Bが分からないと話が終わっちゃうもんな。
AQUADAB:ハイドロのみんなもClams Casinoとかジャックしてたよね。
Karavi Roushi:SWAGの文化が盛り上がった時、それまでの考え方とSWAG以降の考え方が違うことを理解できなかった人はノれなかったわけじゃないですか。日本だとちょうど田中面舞踏会をやってた頃かな?
AQUADAB:そうだね。当時出てきたLil Bも最初はアブストラクトでClams Casinoとかフィードバックが美しくてムーディな音で、トラップ以降はそこが面白かったし、第1回の田中面舞踏会に行ったり、今夜が田中さんの最初のUSBをyaminoniさんとsyphtさんから手渡しでもらってたり。リスナーとしてはコミットしつつ、作り手としてはそこまでコミットしてなかったのは確かですね。その後タナケンは出てきたばかりのYoung Thugに反応してたよね。
Karavi Roushi:そうだね。知った時期からは少しズレますけど、Bloody Jayとやった”Black Portland”、T.I.とやった”About The Money”、Metro Boomin、Futureとやった”Chanel Vintage”とか。
AQUADAB:Young Thugの”Constantly Hating”はミニマルダブの音だし、Tetsumasaは真似しようとしたけどこんなに綺麗に鳴らなかったと最近言っていました。
— 当時、あの曲をミニマルダブの文脈で聴いていたのは先進的な解釈ですね。
AQUADAB:Rhythm & Soundが好きで、Young Thugを聴いていた人なら1発で分かる音だと思いました。それと正確な文は忘れましたが、ミニマルダブを知らない人がそういう音楽をやっているのが重要、とTwitterでLilpriさんという方が言っていたのが僕はとても印象に残っています。それでYoung Thugが出てきたあたりから、Hydroのみんながトラップを消化出来るようになってきて、そのタイミングがNEROのアルバム『BEAUTIFUL LIFE』から『Return of Acid King』辺りなんじゃないかな。
— 『BEAUTIFUL LIFE』は2014年リリースですから、Young Thugの人気が高まっていく時期とちょうど被りますね。
AQUADAB:個人的にもその頃はAbleton Liveを触わり始めた時で、そこから何年か経って納得出来るトラックが出来るようになり、2017年にそれらをまとめて出したNEROの『RETURN OF ACID KING』の流れはデカかったように思います。”Alice Boomin’”のトラックは、どれか忘れましたが、ミュージックコンクレートのVinylをTime Stretch Screwedしてピッチを少し上げて即ドラムを打って、Native Instruments MassiveでPadを足して~というのがポンポンと進めて、10分くらいで作ったものだったりで。その時に自分がやりたかったことがばっちりハマったと思いました。クオリティが高い上にすぐに完成する、というのはトラップでもすごく重要なんですよね。
NERO IMAI:あの曲のリリック、俺のパートは5分くらいだったかな。
Karavi Roushi:俺はあのリリックに辿り着くまで10年くらいかかってる。
NERO IMAI:嘘つけ! お前、2秒ぐらいで思い付いたやろ。
Karavi Roushi:はははは。でも、あの頃、ぱっと作って、みんなが納得するものをようやく作ることが出来たんですよ。
NERO IMAI:HYDRO BRAINは強打者揃いなので、待ってる球が来たら、速攻で打つんですよ。ダサいトラックは余裕でスルーですね。
— そして、『RETURN OF ACID KING』でHydro Brainが活性化した後はどうなったんですか?
AQUADAB:タナケンがMONYPETZJNKMN”ZUTTO”のトラックでMinchanbabyとフリースタイルをやってたラッパーのharuru犬love dog天使を見つけてきて、「この子はヤバい」と。Chief Keefのとても独創的な曲群を見つけてきた時がそうだったように、タナケンがそう言ってくる時は自分たちにとってCrucialなことが多いんですけど、みんなで聴いてみたら確かにヤバい、と。
Karavi Roushi:その時受けた衝撃で、俺はもう彼女以上のリリックが書けないかもしれないからラップを辞めてもいいとまで思ったんですよ。
AQUADAB:でも、その2週間後くらいにタナケンが俺に「アルバムを全曲プロデュースしてください」って言ってきたんです。
— haruru犬love dog天使に触発されて、Karavi Roushiは今回のアルバム『清澄黒河』を作る気になった、と。
AQUADAB:あと、Chief Keefだよね?
Karavi Roushi:まぁ、そうね。Chief Keefはラップの神様……と言っていいか分からないけど、彼のように物事を新しく進めていこうという人がいるというのは、音楽をやっている身としては励みになるじゃないですか。ヒップヒップにまつわるくだらない話は山のようにあるけど、ちゃんとやっている奴もいるんだと思って、彼の音楽をずっと聴いていたのは確かだし、21 Savageもデカくて、マンブル・ラップが出来ないやつはダサい、しかも最短の距離でヤバイたわ言を言い、本人がライブしても客が歌うから彼は歌わない。そういう世の流れから、それを崩しつつ、発展させながら、今のラップがあるわけで。
AQUADAB:そういう話もありつつ、Chief Keefに関して、タナケンは「フックになりながら今まであまり乗せたことがないようなメロディーでやる」っていうところが好きって言ってたじゃん? しかも、Chief Keefはある時は実験的なTrance Musicだったりするし。
Karavi Roushi:メロディックなラップという話でちょっとさかのぼると、Mike Will Made-Itや一時期、歌に歩み寄ったYoung Jeezyがいたり、Yo Gottiがオートチューンをかけながらメロディアスなラップにアプローチしていて、「これ、めちゃくちゃいいじゃん」って思ったりしてて。
AQUADAB:Yo Gottiは、2012年に出た”Turn On The Lights”とかね。
Karavi Roushi:そう。そういう曲を聴きつつ前々から境目がなくなってきたとは言え「ラップは歌になったんだ」と思っていたら、そのうちに今度は歌からマンブル・ラップに進化していったんですよね。
AQUADAB:そして、話をChief Keefに戻すと、あいつはラップもやるし、歌を歌い上げたりもするじゃん? それに対して、タナケンはいち早く「Chief Keefは重要なことをやってる」としきりに言ってた。
— マンブル・ラップという言葉が世に出回るようになったのは2016年くらいですから、タナケンはその流れをいち早くキャッチしていた、と。
AQUADAB:そして、そこにharuru犬love dog天使が出てきた。
Karavi Roushi:あと、Gokou Kuytとかその周りのやつらとかSoundCloudラップの流れとかね。
AQUADAB:俺はそういう流れをタナケンとよく話していたんですけど、そんななか、今回のアルバムの全曲プロデュースを頼まれて。その頼まれた3日後に作って送ったのが、アルバム1曲目の”P1”。俺は好きだけど、今までにない目的地だったうえに、タナケンから求められているものに合ってるのか、アルバム制作途中まで、あんまりピンときてなかったんですけど、タナケンからは「完璧なトラックですね」って言われて。そういう状態で作ったトラックを、オーダーを加味した上で、作ったものは全てタナケンに送っていたんです。
Karavi Roushi:でも、俺も方向性が定まらなくて、最初はその時好きだった21 Savageみたいなフローをやってて。
AQUADAB:そうそう。最初はもっとラップ然としてたし、自分としてはDrakeに歌ってもらうようなつもりで作った2曲目の”30 Seconds Flat”のトラックを渡したら、タナケンはラップで返してきたので、「もっと間を開けて、ゆっくり、歌ってもらっていい?」とディレクションして。それで俺がそのトラックで鼻歌を歌ったものを送って、それに対して、タナケンが一発で返してきたものがアルバムに入ってる”30 Seconds Flat”です。それを聴いて、こいつスゴいなと思いましたね。
— 試行錯誤のなかで、メロディアスなマンブル・ラップに辿り着いた、と。
Karavi Roushi:そうですね。そして、途中からスタイルとリリックを変えて、ラップを録り直したんです。
— AQUADABのトラックに関していうと、NEROが2014年に出した『Beautiful Life』のトラックはアブストラクトの極みだったじゃないですか?
AQUADAB:あのトラック群はネロと最初に会った時に作っていたもので、タナケンと最初に録った音源と同時期くらいのものです。
— そこからNEROが2017年に出した『Return Of Acid King』、そして、今回の『清澄黒河』と、トラックがどんどんメロディアスなものになっていったのは、どういうことなんですか?
Karavi Roushi:『Return Of Acid King』の”Don’t Test Me”に関して言えば、あの曲はメロディが乗ったラインなんかに触発されたもので、当時、日本でそういうアプローチを取ってるやつがいないなか、歌っていこうということで、2015年に録ったんですよ。自分としては、それから2年後にリリースされてもどうなんだろうとは思っていたんですけどね。
AQUADAB:あのタナケンはYoung Thugっぽさがあったよね。
Karavi Roushi:まぁ、当時聴いてたからね。
AQUADAB:そういう段階を経て、今回のトラックをポップスに振り切ったのは、色んな音楽を聴き過ぎて、エクストリームな音楽にちょっと飽きてきていたのもあって。一方で僕は昔からポップスも好きで聴いていたし、トラックメイカーとしては、ポップスという自分の今までの方法論ではよく分からない方向に振って、トラップに落とし込んでしまった方がクリエイティヴなことが出来て面白いかもというLilpriさんの言葉が頭にありました。トラップであり、かつ、メロディックに、そして、ムードがあり、しかも気持ちよくて、目的地が分からない方向に振らなきゃいけないなと思ったんです。だから、タナケンが「Chicago Bangに山下達郎をかけあわせた音楽を作りたい」とアルバムの全面プロデュースを頼んできた時、その言葉を僕なりに真摯に受け取ったつもりだし、このアルバムのトラックの手法としてはテクノやハウスで使われている音をトラップに当てはめたYaeji(これはTetsumasaが言っていたことです)とPlayboi Cartiの”Magnolia”を手がけ、首都高最速かつメモリーにぶっ刺さるトラックを作りまくっていたプロデューサーのPi’erre Bourneから受けた影響を基本線として、このアルバムを作っていきました。
— 自分の認識としては、このアルバムは、最深ダブレーベル、Bokeh Versionsから作品をリリースしたレフトフィールドなトラックメイカーであるAQUADUBがメインストリームのポップフィールドで真剣に遊んだアルバムだと思っていて、その認識は間違っていないわけですね。
AQUADAB:まぁ、そういうことになりますね。このアルバムは分業制で作ったので、ラップはほぼラッパーに任せきりだし、トラックとラップのタイミングは僕が調整して、それをほぼ全てパラアウトでベルリンに投げて、アレンジやマスタリングや最終的な調整は僕と相談しつつも、ほぼ全てTetsumasa(ベルリン在住のエクスペリメンタル/ダブテクノのプロデューサーにしてラッパーのYoung Love)が手がけました。要するに、向こうのメインストリームで活躍するアーティストのプロダクションを産業的な意味でも意識していて、アートワークも含めてその道のプロがフィードバックしつつ、それぞれの役割を果たす形ですね。Tetsumasaは、Trapも、変態でポップなサウンドも大好きで、僕らの中で一番音にこだわりや確かな知識を持っていて、そんなやつが「このアルバムは、かなりいい感じになりそうだからマジでミックスやるよ」と言ってくれたことは大きな励みになりました。機能性という意味でアレンジも大胆にやってもらったり、とても信頼している人に任せることができました。
— そして、肝になっているのは、メインストリームポップの劣化コピーではないということ。AQUADABしかり、Tetsumasaしかり、レフトフィールドな領域で培った経験がこのアルバムにおけるトラックの飛び抜けたクオリティに反映されている。
Karavi Roushi:そう言ってもらえるとうれしいというか、まさにその通りですね。
AQUADAB:アルバムのミックスをやっている時の俺とTetsumasaの間でのミックスの判断基準は2人とも好きなDrakeのアルバムですね。聴き比べてみて、遜色なくかつシンプルで気持ちいい鳴りにしたかったんですよ。アレンジ、ミックス、マスタリングは全て彼ですが。
— Karavi Roushiのラップに関して、マンブルラップ以降のメロディアスな、エモーショナルなフローの実践のほかに自分のなかで何かしらテーマはありました?
Karavi Roushi:ちゃんとしたラップ、いいラップがやりたいし、聴きたいということですかね。
AQUADAB:タナケンは昔、ラップのアカペラを聴き続けたりしてたね(笑)。
Karavi Roushi:俺はPharoahe Monchのアカペラを聴きながら寝ていました。
AQUADAB:タナケンが見つけてきた『湾岸ミッドナイト C1ランナー』とか漫画からの影響もあるよね。
Karavi Roushi:そうだね。その時、考えていたこと全てを詰め込みたかった。向こうのヒップホップシーンはどんどん新しいやつらが出てきているし、そういう新しい時代のムーヴで喋るのと同じノリでラップしたかったんですよ。ただ、自分の年齢を考えると、やっていることは相当バカな部類に入るんじゃないかな(笑)。
— 今回の作品に関して、虚実入り交じった言葉を細かく検証するつもりはないんですけど、作品全体からは、日本のヒップホップのメインストリームから逸脱したラッパーの乾いた喪失感とウェットでエモーショナルな渇望感が伝わってきます。
Karavi Roushi:嘘の話の方がいいというか、その方がリアルなんじゃないのと思ってラップしているんですけど、一方では、メインストリームから外れて、こんな荒唐無稽なことをやってる人がいるんだよっていう思いもあって。だから、よく聴けば、このアルバムは励まされる人っていると思うし、レールから外れた自分がそうやって音楽を聴いて生きてきたように、いじめられている子たちにも聴いて欲しいです。
— 長い付き合いの他のメンバーと違って、去年、HYDRO BRAINにDJとして加入したPHONEHEADから見て、Karavi Roushiのラップについて、どんなことを思われますか?
PHONEHEAD:今回のリリースにあたって、作品の紹介文で「虚構も真実もゼロ円で売りさばく」と書かせてもらったんですけど、タナケンのラップの前では、嘘と真実、リアルかどうかという価値観自体が無意味になってしまう。それが彼の紡ぎ出す言葉の力だと思っているんですよ。
— というと?
PHONEHEAD:今回、制作の初期段階のとある曲でタナケンは「嘘固めて/明日見つめて/ジョー・ペシ埋めて」という一節を歌っていて、自分はそのフレーズに衝撃を受けたんですね。「ジョー・ペシ埋めて」というのはマーティン・スコセッシの映画のワンシーンなんですけど、タナケンが生きている現実のとある瞬間のムードをその映画が持っているイメージに置き換えることで、現実と映画、現実と虚構の境目が溶けるように感じたんです。僕はそんな言葉の並びを目の当たりにするのは初めてだったし、そこまで意識的なものではないのかもしれないですけど、今回のアルバムはそういう現代詩における新しい試みが詰まった作品だと思うんですよ。だから、誰もが聴けるポップミュージックを指向して、すごいポップでありつつも、そこから大きく逸脱して、いびつにも聞こえるっていう。その点に彼の言葉の力とこのアルバムの真価があるんじゃないかなって。
— Karavi Roushiのラップは徹底的に言葉遊びやイメージ遊びをしつつ、全く無意味なことをやっているわけではなく、伝えたい感情やムードが言葉遊び、イメージ遊びを通じて、間接的に表現され、ある種のリアリティがぎりぎりのところで生み出されている。その重層的な表現のさじ加減が絶妙だな、と。
PHONEHEAD:そう。それによって言葉が伝わる時の浸透圧が他のラッパーとは明らかに違うと思うんですよ。
Karavi Roushi:映画『スカーフェイス』の主人公、トニー・モンタナのセリフで「俺は嘘と真実を同時に話す」という一節があって、自分がやっているのは、まさにそういうことなんですよ。
PHONEHEAD:でも、これは後付けなんですけど、HYDROのみんなに接していて、全員の気質がパーリーピーポーなんで(笑)、そういうテンションがNEROやタナケン、そして、いま制作を進めているHYDROの作品にはあると思っていて、そこが最高だなと。
— HYDRO BRAIN MC’sは全員が音の快楽主義者なんだな、と。だから、金、女と、ラップの紋切り型のトピックを敢えて歌いつつも、いかに気持ちいい音と言葉を鳴らすか。その点を最優先に考えて、徹底的に突き詰めていますよね。
AQUADAB:とにかく音が良くなかったら始まらないですしね。
PHONEHEAD:タナケンもNEROもHYDROも音の気持ちよさと言葉の意味が重なって、提示されているところにインパクトがあると僕は思っていますね。
— そして、Karavi Roushiのアルバムの次の展開に関しては?
AQUADAB:HYDRO BRAIN MC’sとして、アルバムを作ろうと思ってます。あと、それとは別にシングル向けの曲が出来たら、ポンポンMVも含めて出していきますよ。
— いよいよ、本格始動するHYDRO BRAIN MC’Sに大いに期待しつつ、最後にPHONEHEADが手がけたDJミックスについて一言お願いします。
PHONEHEAD:『清澄黒河』のビートの温度感と光度感にハウスを代入する感じを基本設計として、あと最近自分の中で高まりつつある”RAVE”という意識にもフォーカスしました。何かの間違いで夏にHYDRO BRAINのみんなでレイブパーティーに呼んでいただけたりしないかな、っていうプレゼンテーションも少し含まれています。”満点の星空とHydro Brain Gang”みたいなイメージで、流れ星100個落ちきそうな予感と共に聴いていただきたいSonicsです。