松尾:バレた時の周囲の反応は、どんな感じだったの?
早川:直接何かを言われることは無くて、「あいつ、AV出てるらしいよ」って陰でコソコソ言われる感じ。
松尾:それはマイナスなほうだよね? 「AV出てるんだ! すげー、握手して!」みたいなことではなくて。
早川:そうですね(笑)。なんでみんな直接、私に聞いてこないのか不思議で、それがすごく嫌でした。
松尾:お母さんにバレた時は?
早川:当時、名古屋で1人暮らしをしてたんですけど、大学も卒業して、AVの仕事もあるので東京にいることが多くなって、名古屋の家の家賃が勿体無いなと思い始めて。それで名古屋の家を引き払おうと思ったんですけど、東京にいる時間が長いから全然進まなくて、親には「東京で働いてる」ってふんわり伝えてたんですよね。そうこうしている内に、うちの母は結構ちゃきちゃきしてる人なので、先に私の部屋で引越しの準備を進めてくれていて、部屋の片づけをしていたら、AVの台本が出てきたようで……(笑)。
松尾:ちなみに、その時のAVのタイトルは?
早川:『僕のかわいい妹瑞希と毎日ラブラブH♥』ですね(笑)。今でもめちゃくちゃ良く覚えています。SOD(ソフトオンデマンド)の拘束(※編集部注 特定メーカーとの専属契約のこと)がかかっていた最後の作品だったんですけど、何故か台本を持って帰ってきてしまっていて。
松尾:(笑)。そこからは?
早川:流石に嘘は通用しないなと思って「実は……」って全てを話したら、めっちゃ怒られました。「とりあえず早く名古屋に帰ってきなさい」って。でも、姉や妹にはバレてないと思います。
松尾:あ、3姉妹なんですね。
早川:そうです。お父さんは知ってるのかな、どうなんだろう。
松尾:そこでAV女優を辞めるって選択肢は無かったんだ?
早川:翌月も仕事の依頼はあったし、辞めるつもりは全く無かったですね。原宿☆バンビーナの活動もあったので。
松尾:お母さんはどうやって説得したの?
早川:私と母で話しても感情的になってしまって埒が明かないから、家族ぐるみで仲が良いおばさんに間に入ってもらって。何故かそのおばさん、私がAVやっていることを母よりも先に知ってたんですよね。
松尾:え、なんで?(笑)
早川:高校生の息子さんがいらっしゃるんですけど、その子が私の出演している作品を見たみたいで。で、結局、母を交えて3人で話して、そのおばさんが母を説得してくれました。
松尾:それは随分と良いおばさんですね。
早川:母は「応援はしないけど、やるんなら期限を決めてやりなさいよ」って感じで落ち着いて。
松尾:今でも具体的な話はしないんでしょ? 「今日、あそこの現場で……」とか。
早川:もちろんしないですよ(笑)。
松尾:そりゃそうか。では、少し話を巻き戻しますが、最初は奨学金、つまりは借金を返すためにAVを始めた訳だよね? 具体的に金額はどのくらい?
早川:400万弱くらいですかね。
松尾:けどさ、周りにも奨学金を借りて大学に通っている子はたくさんいる訳で、奨学金の返済だけがAVを始める理由にはならないじゃない。そもそもAVに対してはどういうイメージを持ってたの?
早川:落ちるところまで落ちて、最終的に行き着く終着点。
一同笑
松尾:それはひどいですね(笑)。
早川:例えばキャバ嬢からヘルス、ヘルスからソープ、ソープの後にAVみたいな(笑)。
松尾:まぁでも、それが”世間”がAVに対して持っているイメージだよね(笑)。
早川:私も最初はそういう風に思っていたけど、実際にやってみると全然そんなことはなくて。やっぱり何事もやってみないと分からないんだなって思いましたね。
松尾:AVに出演してみて、率直にどう感じました?
早川:私は素直に「楽しい!」って思いました。
松尾:でもカメラの前で裸になって、セックスもする訳ですよね。それに対する抵抗は無かった?
早川:それまでは1対1か、2対2のセックスしかしたことが無かったから、カメラマンさんがいて、照明さんがいて、監督さんがいてっていう大勢の前で裸になるのは最初はすごく緊張しました。
松尾:2対2までやってれば十分ですけどね(笑)。でもまぁ、きちんとした設定や台本もありますもんね。
早川:けど、セックスしてたらそんなことは忘れちゃって。「あぁ、楽しかった」って思えましたね。最初の撮影から、本当にそう思えました。
松尾:えっと……、早川さんはおバカさんなのかな(笑)?
早川:ひどいです(笑)。普通に楽しいって思いましたし、現場にロケ弁が何種類もあったり、ペットボトルにストローが刺さってたり、「なんか芸能人っぽいなー」っていうか、この世界ってすごいなって。
松尾:安い女ですね~(笑)! いや、褒め言葉ですよ。自分の身体やセックスに自信はあった?
早川:セックスは好きでしたけど、自信があった訳では無いですよ。
松尾:芸能人とかモデルになりたいみたいな気持ちはあったの?
早川:それは全く無かったですね。最初は、AVをやるのは学生の間だけだと思っていましたし。
松尾:とにかくパッと稼いで、パッと辞めようと。バレることを気にしてパブに制限(※編集部注 成人雑誌やインターネットメディアへの露出規制)をかけようとは思わなかったの?
早川:それも考えて無かったですね。スカウトさんも「よっぽどのことが無いとバレないよ」って言ってましたし。
松尾:すぐにバレてるじゃん(笑)。
早川:(笑)。身内にだけバレなければ良いかなって。女兄弟だったからAVって自分にとっては遠い存在で、バレないだろうなって勝手に思い込んでたんですよね(笑)。大学を卒業したら普通に就職すれば良いやって思ってたし、軽い気持ちで始めました。