世はインターネット時代。次から次へと新しい言葉が生まれ、そして消えていく、なんとも忙しい時代ですが、そんな時代の荒波を華麗に乗りこなすべく、”先月海外で流行った言葉（＝バズワード）“を海外の様々なカルチャーに深く精通するAkeem the Dream氏に解説してもらうのが、この連載『先月のバズワード』。
第6回（2016年7月のバズワード）でお勉強するのは「#petty」であります。
■先月のバズワード 第6回「#petty」
2009年の「MTV ビデオ・ミュージック・アワード」で、受賞スピーチ中のテイラー・スウィフトからマイクを奪い、「ビヨンセのビデオこそ史上最高だ！」とカニエ・ウェストが叫んだ時からこの二人の長ーいビーフが始まる。その晩、カニエは余儀なく退場させられたが、ビヨンセは自分のベスト・ビデオ賞の受賞スピーチの時間を使って、テイラーをステージに呼び戻し、終えることのできなかった彼女の受賞スピーチを終わらせる機会を与えた。
その後、カニエは自分の間違いを認め、直接電話をかけて心の籠った謝罪メッセージを届けたとテイラーは語った。更にカニエはTwitterにも謝罪メッセージをアップし、テイラーの為に曲を書いている事も明かした。だがカニエがこの曲を発表する前にテイラーは、この騒動の1年後、因縁のVMAで”Innocent”という曲をパフォームした。この曲には「あなたをあなたの行った事では判別できない/だからあなたはまだ潔白」と暗にカニエに対して許しと復習と取れるメッセージを含む一句が隠されていた。
この一件からカニエの態度は豹変し、複数のインタビューで謝罪を撤回。テイラーを邪魔したのは傲慢さからではなく、本当に自分の正直な気持ちからだったと発言。更に「テイラーは自分の宣伝の為にこの騒動を使っている」とまで訴えた。
https://www.youtube.com/watch?v=Vx3mpaeTGns
それから数年の月日が経ち、2015年、このビーフに新たな章が加わる……。正真正銘のポップスターにまで成長したテイラーがカニエとスタジオ入りを望んでいるという噂が、どこからともなく立ち始め、2015年のグラミーショーの数日後には、NYのレストランで一緒に食事をとっている姿が目撃された。
その年のMTVのVMAではテイラーがカニエにビデオ・バンガード賞を渡すこととなり、カニエが「2020年のアメリカ大統領選挙に出馬する」とアホみたいな発言をした時、テイラーは副大統領に立候補するとまで言い出し、この2人の友情がやっと良い方向に向かっているかのように見えた。
が、その翌年16年の2月……、カニエはあの悪名高きトラック”Famous”をリリースする。この曲はカニエの8枚目のアルバム『The Life of Pablo』からのシングル曲で「俺とテイラーはまだセックスするかもしれない/なぜならあのビッチを有名にしたのは俺だからな」というテイラーのセレブリティーをダシに使った（そして女性軽視丸出しの）パンチラインが収録されている。
カニエはテイラーとこの曲について話した後、合意のもとリリースに踏み切ったと主張したが、これに対しテイラー陣営はリリックについての報告はなく、逆に曲をTwitterで宣伝するよう、協力を要請されたという声明を出した。同月テイラーが58回目のグラミーショーでアルバム賞を受賞した際のスピーチでは名前を出す事はなかったが、カニエへの当てつけとして「ショービジネスの成功を奪い取ろうと横槍を入れてくる勢力に負けないで」と若い女性達にエールを送った。
だが、なんと先月……、リアリティー番組の女王でカニエの妻であるキム・カーダシアンがSnapchatにカニエとテイラーが問題のリリックについて電話で合意している様をアップ。テイラーが最初から嘘をついていたことが判明したのである。
と、ここまで長々とお付き合い頂き、ありがとうございました。本当に長くてすみません（笑）。なんですけどね……この騒動の渦中のカニエのTシャツがね、笑っちゃうんですよ。いくらそんなに嘘つきのテイラーが嫌いだからって、大のオトナが何十歳も年下の娘さんのR.I.P. Tシャツまで作って、これ見よがしに着る事なくないですか旦那？
こーいうのはアメリカでPetty（ペティー）って呼ばれます。セコイとかケツの穴が小さいとかそういうヤツの事です。皆さんもPettyにはご注意を（笑）！
Pettyはヒップホップソングへもクロスオーバー！ ハーイ、みんなでペティー！！
Akeem the Dream
デザインの仕事したり、イベントやったり 買い付けやったりっす……。詳しくはリンク先をご参照ください。