Photo:Kenta Sawada | Interview&Text:Yu Onoda | Edit:Keita Miki
— ステラさんは、マーチャンダイズのTシャツのデザインを日本人デザイナーのRooo Lou(ルー・ロー)さんに依頼されていますよね。
Stella Donnelly:そう。Roooさんは、自分で描いた私のイラストをInstagramに載せていて、すごくいいなと思ったので、自分からコンタクトを取って、Tシャツのデザインをお願いしたんです。Roooさんのこともそうですし、私は漫画の『DEATH NOTE』だったり、日本のファッションや可愛いものに溢れたカルチャー、食べ物にずっと接してきたので、今回の初来日で実際に触れられる機会を楽しみにしていました。ライブとプロモーションで忙しくて、この後、ようやく、その時間が取れるんですけど、空港からそのまま向かったフジロックの美しい山々が日本で見た最初の風景だったというのも素晴らしい体験でしたし、もちろん、フジロックでのパフォーマンスも最高でした。あと、そうそう、今この話をしていて思い出したんですけど、私は地元のオーストラリアで釣りをやっているので、今回の来日で日本製の釣り用ナイフを買おうと思っていたんです。可愛いものとナイフ、それが私の好きなもの(笑)。
— 2019年3月にリリースしたアルバムのタイトルは『Beware Of The Dogs』(「猛犬注意」の意)ですが、犬は可愛くもあり、時に怖くもあり、そして、犬というのはステラさんの音楽も意味しているんですよね?
Stella Donnelly:まさにその通りです。アートワークとアルバム・タイトルの組み合わせで、ハリウッドのB級ホラー映画的なニュアンスを出したかったという意味もありますし、複数形の”Dogs”にしたのは何かが集団で襲ってくるようなイメージ。その何かには音楽ももちろん含まれていると思いますし、聴き手それぞれ自由に解釈してもらえればと思います。
— 親友から告白されたレイプ被害の話を元にした”Boys Will Be Boys”が#MeTooムーブメントのアンセムとなったり、ステラさんの音楽が持つメッセージ性は非常にパワフルではありますが、発する勇気が必要なものでもありますよね。
Stella Donnelly:”Boys Will Be Boys”は、自分のなかで形にする必要があると思って、4年前に書いた曲で、その当時はまだ#MeTooムーブメントが起こっていませんでしたし、その曲を地元パースのバーでパフォームする充分な勇気は持っていませんでした。ただ、あの曲のミュージックビデオを公開したのは、#MeTooのハッシュタグが広がり始めた4日後だったので、それによって私の音楽が意図しない形でカテゴライズされてしまうかもしれないし、男性を拒絶しているように聞こえてしまったり、フェミニストとして受け取られてしまうかもしれない。その反応が怖くもあり、ためらいもありました。ただ、公開からこちらの想像を超えて反響がどんどん大きくなるにつれて、自分のなかの勇気もどんどん大きくなっていきましたし、男らしくいなければいけないという圧力に苦しんでいる男性にも響く曲になったのかもしれないと考えられるようにもなりました。その反響のなかには、世のお父さんたちから頂いた「自分の子供に聞かせたいと思います」というメッセージもあったりして、一歩踏み出したことで得られた経験や学んだことも多かったので、今はこの曲を書いてよかったと思っています。