僕らの好きなステラ・ドネリー

by Yu Onoda and Keita Miki

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— 音楽の歴史を紐解くと、女性の自立や権利向上、ジェンダーフリーのメッセージは、Joni Mitchell(ジョニ・ミッチェル)のようなシンガーソングライターや1990年代のライオット・ガール・ムーヴメント、最近、新作を出したSleater-Kinney(スリーター・キニー)まで、多くの女性アーティストが発信していますが、音楽におけるメッセージ性という観点で、ステラさんはどんな音楽から影響を受けてきましたか?

Stella Donnelly:今挙がったアーティストももちろん聴いてきたんですけど、今改めて考えてみると、私は1960年代から1980年代にかけて活躍した男性アーティストのメッセージに影響を受けてきたのかもしれません。彼らが歌っていたベトナム戦争についてのステートメントや白人社会についての考察に耳を傾け、その経験にインスパイアされたものを、自分のフィルターを通じて表現している気がするんです。

— ステラさんの曲には男性にとって耳が痛い曲もありますが、失恋について歌った”Allergies”やパートナーの危なっかしい運転について歌ったコミカルな”Die”など、歌の題材はバリエーション豊かですよね。

Stella Donnelly:そうですね。音楽に対して誠実であるべきだと思いますし、常に自分に対して正直に、自分の人生におけるあらゆる面を曲にする必要があると私は考えていて。だから、その一部である社会的なことも歌いますし、それだけでなく、自分自身のこと、そこでの喜怒哀楽も表現しています。ただ、そのバランスは私ならではのものであって、女性にとって耳が痛い音楽があってもいいし、男性のパンクミュージックがあるように、女性のパンクミュージックがあってもいいと思いますし、色んな形の音楽はあるべきだと思いますね。

— それと同時にステラさんの音楽は、キャッチーな楽曲と鋭い歌詞をユーモアのセンスが上手く繋いでいますが、そのセンスはスタンダップ・コメディアンでもあるというお父さんからの影響も大きいんでしょうか?

Stella Donnelly:幼稚園の先生でもある父は私が子供の頃、面白おかしく伝えることで記憶に残るように物事を教えてくれて、いまだに幼稚園でそれを実践しているんです。そんな父から受けた影響は確かに大きくて、私も実生活で、あるいは音楽を介して、人と繋がるために笑いが大事な要素だと考えていますね。