毎月お届けしているMasteredレコメンドDJへのインタビューとエクスクルーシヴ・ミックスを紹介する『Mastered Mix Archives』も、前回で無事1年続いたということで、今回は4週に渡って1周年を記念したスペシャル企画をお届け。 なんと、過去12本のミックス音源を再び期間限定でダウンロードできるようにします!
しかも、ただの再配信ではなく、THA BLUE HERBにCALM、TRAKS BOYSに(((さらうんど)))、LUVRAW & BTBに七尾旅人などの作品やライヴのPAを手がける敏腕エンジニア、得能直也氏の手によるリマスタリング音源。すでにダウンロード済の方も、是非チェックを。
4週連続の第4回目、つまり最終回となる今回は、川辺ヒロシ、LATIN QUARTER、池田正典の三本立てで、前回同様ライター小野田雄氏と担当編集である私塩川との対談で振り返りつつお届けします!
Text : Yu Onoda / Edit : Yugo Shiokawa
※ダウンロード期間は終了しました。
→ vol.1 二見裕志・PUNPEE・Max Essa編
→ vol.2 Bushmind・COS/MES・Back To School編
→ vol.3 CHIDA・MOODMAN・CRYSTAL編
編集 塩川(以下S):3月のニュー・アルバム『Grinding Sound』リリース・タイミングでこちらも満を持して登場していただいた川辺さん。
ライター 小野田(以下O):渋谷のDJ BAR KOARAでの入魂の一発録り。録音の立ち会いは企画者冥利に尽きる贅沢なものだったよね。
S:とはいえ、売り物のミックスCDとも、実際の現場のプレイとも違うテンションだし、通勤用にほどよいテンションのテクノ・ミックスっていう、その落としどころが面白かったな、と。
O:あの日は川辺さんが風邪をひいて体調が最悪ななかでの録音だったけど、そのことを感じさせないさすがのプレイだったな、と。
S:録音した音源が逆位相だったっていうちょっとしたトラブルもありつつ(笑)。
O:録音が終わった後は、焼肉を食べながらの取材。俺は肉を焼くジュージューいってるインタビュー音源を文字起こししたんだけど(笑)、インタビューで話しながら、周りにいる人にも突っ込みを入れたりしていて、常に周りを意識しているところもDJらしいというか。
S:ははは。さすがに体調が悪かったせいか、突っ込みのキレはいつもの3割減くらいだった気もしますけど(笑)。
O:あと、にくいなと思ったのは、名作ミックス・テープ『SURRRRROUND vol.2』の1曲目で使っていた曲をこのミックスでも1曲目に持ってきたところかな。
S:にくいですよね。さすがベテラン、信用できます!
S:Pan Pacific Playa関連も早くからお願いしたいDJの候補に入っていたので、LATIN QUARTERのミックスが実現して、個人的にもうれしかったんですけど、本人のツイッターを見てたら「Masteredのミックスみたいな感じでDJお願いします」っていうオファーがあったらしくて、それを聞いてよかったなって思いましたよ。
O:ああ。それはうれしい話だよね。ミックスをやってもらったDJと話すと、結構そういう話があるみたい。
S:ただ、まぁ、このミックスは普段のDJとは違って、リスニングも意識している場合も多かったりするし、Latinくんの現場はもっとアッパーだったりすることもあるから。
O:ね。だから、このミックスで聴けるものが全てではないというか、音源を聴いて、現場を想像して、実際に足を運んでみて、また違ったプレイを楽しんで欲しいというか。
S:そういう振れ幅があるところが、PPPであり、Latinくんの面白いところだったりもしますしね。
O:このミックスに関していえば、80年代のブギーやブラック・コンテンポラリー、R&Bにビートダウン、果てはポップスまでっていう幅が絶妙というか、踊ったりすることも出来るし、じっくり聴くことも出来るだろうし。あと、彼のことを最近知った人のなかには、サイプレス上野とロベルト吉野だったり、LUVRAW & BTBのトラックを作っていることから、彼のことをヒップホップ寄りの人だと思っている人もいると思うんだけど、実はそれ以前にサンプリング・コラージュを作っていた空手サイコ時代だったり、彼の毒の部分を文字に出来て個人的には良かったし、空手サイコとして作品を出すかもっていう発言を聞けたから、今後も引き続き楽しみだな、と。
S:そして、12人目のDJは池田ノリさん。インタビューも面白かったし、音源もホント最高でしたよね。
O:個人的には15年近く知ってる人だったんだけど、これまで取材する機会がなくて。ただ、ロンドン時代の話は昔からなんとなく聞いていたし、DJやディープなディガーとしての経験や知識も豊富だから、お願いしたら絶対に間違いないものになるだろうなとは思っていたんだけど、MOODMANがそうだったように、どういうミックスをお願いしようか、この回もかなり考えたな。
S:OATHなんかでDJを聴く前はMansfieldの印象が強かったんですけど、インタビューを読んで、ミックスを聴いて、断片的だったものが繋がったというか、なるほどと思うところが多かったですね。
O:ノリくんはさすがにキャリアが長いだけあって、Latin Quarter以上に、世代だったり、彼の音楽に接したシチュエーションで見え方だったり、印象が変わる人なんじゃないかな、と。
S:そう。だから、「ノリさんってこういう方だったんですね」っていう声をあちこちで聞きましたね。あと、作っていただいたミックスにしても、フュージョンとかジャズ・ファンクって、解釈によってダサくも格好良くもなるからすごい難しいじゃないですか。でも、ノリさんのミックスは、すごい洗練されているというか、絶妙なラインを突いてくるところがホントさすがだな、と。
O:というわけで、この1年でお願いした12人のDJによる12本のミックスを振り返ってみましたが、毎回、時間のないスリリングな状況下で、打ち合わせからインタビュー、ミックス制作まで、毎回、DJの方々のご協力があってこそ成り立つ企画だなと改めて。
S:いまはネット上に毎日無数のミックスがアップされては消費されていますけど、個人的にこうやってDJの言葉を読みながらミックスを聴いてみると理解が深まるというか、聴き方も変わったりして面白いし、一本一本のミックスに愛着がわくというか。
O:今回の1周年企画のリマスタリングにしても、一本一本のミックスを色んな角度から楽しむとしたら、どうすればいいのかっていうところからリマスタリングで、得能くんにご協力いただいたわけだし。
S:あと、重要なのは、ここで紹介した12本のミックスが気に入ったとしても、それで終わりじゃなく、むしろ、その先には現場での楽しみがあるってことですよね。
O「それは言わずもがな。まずは知らないDJでも聴いてみて、気に入ったら、リツイートでも「いいね!」でもいいので、周りにどんどん広めてもらえたら、ね。
S:あと、この企画も一年経ったので、「こんなDJのこんなミックスを聴きたい」っていう意見もそろそろ欲しいですよね。その要望に応えられるかどうかは別として(笑)。