※ミックス音源はこちら!(ストリーミングのみ)
単純にいいソウル・ミュージックがあったら、サンプリングしないわけがないってことですよ。(Kid Fresino)
— この3人はどういう繋がりからFla$hBackSを始めることになったんですか?
jjj:もともとはこのスタジオが代々木にあった時、一緒にスタジオをやってるYOUNG DRUNKERから「すげえ、若いんだよ、こいつ」って感じで紹介されたFebbに作ってるトラックを聴かせてもらって、「ヤバいじゃん」って。そんな感じの出会いが最初でしたね。
Febb:そう、そんな感じでしたね。あれは4年前だから、俺が高校1年の時ですね。当時、DJ出来るところがなかったから、自分でイベントをやろうと思って。それで日本語ラップ大好きで、サイファーに足繁く通っていたこともあって知り合いが多かった同い年の友達に「誰かイベントに出てくれそうな人いない?」って聞いたら、YOUNG DRUNKERとADAMS CAMPを紹介されて、その流れでjjjとも会ったんです。
jjj:それでFebbがADAMS CAMPの『Enter the Vo.Ku.』をリミックスしたEP『FLIPPED SHIT』を出して、その最後の曲「We Got」で8小節だけラップしてたんですね。その8小節に俺はやられてしまって、その時たまたま俺が作ってたトラックが今回のアルバムの2曲目に入ってる「Cowboy」だったんですね。
でも、そのトラックを作りながら、「このトラックでラップ出来る日本人はいないんじゃないかな」って思ってたんですけど、そのタイミングで聴いたFebbのラップを聴いて、「この1曲を機に、俺のトラックで全部Febbにラップしてもらって、それを出したらいいんじゃないかな」って思ったんですよね。
Febb:そう思って作り始めたものが結果的には今回の『FL$8KS』になったんですね。まぁ、でも、今でこそグループですけど、最初の段階ではそんなことになるとは思ってなかったというか、一番最初は俺のソロ・プロジェクトっていう話だったし、手焼きのCD-Rで適当に出そうと思ってたんですけど、一緒に作り始めたら、jjjもラップをすることになって、そのアイディアは一瞬で消えて(笑)。
最初はそうこうするうちに作品がどんどん出来ていって、「これ、どうにかしよう」って話からFla$hBackSって名前を考えたり、CD-Rじゃなく、ちゃんとした形でアルバムを出そうということになった感じで、自分としては目的ありきというより、そうやって形にしていくのが楽しかったんですよ。
jjj:そういえば、このスタジオで合宿もやったよね。
Febb:2日くらい泊まって、「集中して、曲を作ろう」ってことになったんですけど、結局、遊んで終わっただけだったっていう(笑)。
jjj:その時、Kid Fresinoも遊びに来たよね。
Kid Fresino:そもそも俺は全く関係なかったんですよ(笑)。俺とFebbは友達だけど、Febbにはそれとは別に友達がいるって感じだったし。
— FebとKid Fresinoは小学生の時に塾の合宿で出会って、その後、中学が一緒だったとか。
Febb:そうなんですよ。ただ、俺らは友達からグループに発展したわけでもなければ、グループありきで友達連れてくるっていう感覚もなかったから、遊んでいるうちに自然とそうなったって感じですね。
— Kid FresinoはどのタイミングからFla$hBackSに関わるようになったんですか?
jjj:Fla$hBackSがライヴをするようになって、ある時、FebbがKid FresinoにバックDJをやらせたんですね。そこから3人で集まる機会が増えていったんです。
— そんな3人のヒップホップとの出会いについても聴きたいんだけど、まず、jjjは?
jjj:一番最初はRIP SLYMEですね。
Febb:RIP SLYMEって、トラックが格好いいからなー。
jjj:RIP SLYMEはポップなところとヒップホップなところが上手く融合されているし、あのクオリティーの高さには影響されていると思いますね。
— でも、一番最初はバトルDJになろうと思ったとか?
jjj:そう。でも、ジャグリングが上手く出来なかったので、その道は諦めたんですけど、自分のスクラッチを録音してた延長で、自分でドラムを組んで、そこにスクラッチを乗せたらいいんじゃないかなってところからトラックを作り始めたんです。
— その後、ラップもするようになったと。
jjj:そうっすね。ヒップホップ好きな人はみんなそうだと思うんですけど、自分もリリックも書くようになったんですね。
Febb:最初はラップとトラックとDJを個別に考えないじゃないですか。
jjj:そうやって中学生くらいから音楽を作り始めるんですけど、その後、俺の場合はDOWN NORTH CAMP、それから同じ地元のSCARSの影響がデカいですね。
Febb:俺の場合、「これを聴こう!」って思ったのがたまたまヒップホップだっただけって感じですね。それで最初にガツンと食らった後は、特に誰に影響を受けたっていうよりも、「こういうもあるんだ」、「ああいうのもあるんだ」って感じで、色んな人のいいところをサンプリングしてきたって感じ。外人、日本人があるように、東京にもいろいろあるし、同じクラブでも俺が初めて行ったのは池袋のBedだったんですけど、こっちは分けて考えてないのに、周りから「最初に行ったのがBedだったら、渋谷のクラブは行けないでしょ」って言われて、「ああ、そんな感じなんだ」って初めて思ったり。だから、俺は分け隔てなく、そこまでヒップホップって感じじゃなかったEL NINOとか、色んなイベントに行ってましたね。
— Kid Fresinoの場合は?
Kid Fresino:最初はカーペンターズですね。でも、中学に入ってからはFebbからヒップホップの格好いいものを教えてもらって、自分から進んでヒップホップを聴くようになったのはつい最近ですね。
Febb:いまはYouTubeを見れば、関連動画が出てくるし、検索したらAmazonが引っかかって、そのレビューを書いてる人がいいって言ってるのは、このアルバムで~って感じで関連を辿っていけるじゃないですか。そうやって色々聴くなかで、俺はちゃんとした音楽が聴きたいなって思って、どちらかといえばアンチ流行って感じだったから、90年代のヒップホップを進んで聴いて、それをKid Fresinoにも渡したし、レンタルで借りたSnoop(Dogg)みたいなものからThe Beatnutsのファースト、Redmanとか、そういう音楽を共有してましたね。
Kid Fresino:そうやってあれこれ聴かされて、俺が好きじゃないものも、Febbに薦められたら、「これがイケてるやつなんだ」って感じで聴くようにして、自分でもその関連作品を聴くようになったんですよね。
Febb:それでKid Fresinoがトラックを作り始めたのは、JAY-Zの『Fade To Black』っていうDVDでTimbalandがトラックを作っているシーンを見て、シンセを買ったのがきっかけ。俺が最初に買ったのはYouTubeの動画を見て知ったサンプラーがきっかけだったんですよ。だから、同じ音楽を共有していたのに、音楽を作り始めた取っかかりはそれぞれ違うんですよね。
— FebbとKid Fresinoの2人もまた、jjjと同じく池袋BedでやってるREFUGEE MARKETによく通ってたとか。
Kid Fresino:最初に行って以来、行ってない回はないくらい通ってますね。俺は単純にISSUGIくんが好きなんですよ。尊敬っていうのともちょっと違うというか、あの人、忙しかったり、家族がいるのに、仲間がDJする時は何も言わずに必ずいるし、そういうISSUGIくんの背中を見ながら、遊ばせてもらってるっていう。
— 2人が高校生の時、初めて行ったのは、REFUGEEのデイ・イベントだったということだけど、クラブに対して怖いイメージはなかった?
Febb:でも、逆に俺らはそういうところが好きだったんですよね。
Kid Fresino:それに行ってみたら、怖くはなかったし。俺とFebbは生まれてから今まで面倒臭い上下関係に巻き込まれたことは一回もなければ、地元にも先輩は一人もいなかったりするので。
— 面倒臭いことがあったら、好きな音楽でもいやになっちゃうかもしれないし。
Kid Fresino:そうなんですよね。だから、何も変わってないです。音楽の話をするのもやってるのもFebbとjjjだけだし。ISSUGIくんだったり、DOWN NORTHのみんなとも対等な関係ですよ。
Febb:そうじゃなかったら、つまらないよね。もちろん、先輩、後輩の関係があるからこそ成り立つこともあるんでしょうけど、そういう関係の中だけで終始しちゃうのは「もったいないな」って感じちゃうんですよね。
Kid Fresino:もちろん、それと同時に俺らは恵まれた環境にいるんだなとも思いますけどね。
jjj:俺の場合、最初は渋谷でライヴをやったりしてたから、Bedに対してはちょっと入りづらい場所だなっていう先入観があったんですね。でも、MONJUの「BLACK DE.EP」をきっかけに、実際にREFUGEE MARKETへ行ってみたら、超楽しいし、みんな対等に話してくれるし、居心地がすごい良かったから、そこからBedに通うようになっていったんです。
— そして、1月にリリースされたファースト・アルバム『FL$8KS』ついて。今の主流はシンセと打ち込みによるヒップホップだと思うんですけど、Fla$hBackSのトラックはサンプリング主体。さらにはグルーヴ感が瑞々しいところが実に印象的でした。
Febb:ああ。それは俺がアンチ流行りものだったところもあるし、自分たちが聴いてきた音楽と直結してるというか、自分たちが格好いいと感じる音楽がサンプリングで作られていたから、俺たちもそういうことになっているんじゃないかと思いますね。
Kid Fresino:単純にいいソウル・ミュージックがあったら、サンプリングしないわけがないってことですよ。
Febb:それにサンプリングを使ったヒップホップはいつの時代も常にあるし。
jjj:逆に俺の場合は、最初、シンセを弾いて作ってたんですけど、MPCを買ってみたら、何でも出来るし、「やっぱり、サンプリングは面白いな」って。
Febb:サンプリングは夢があるよね。
— はははは。ゴミ同然のレコードをゴールドに変えることが出来るわけですしね。
jjj:実際、このアルバムのトラックのほとんどは、レコード屋の100円コーナーとか「ご自由にお持ち帰りください」って置かれてるレコードをネタに作りましたからね。
— jjjのトラックはロックの要素を感じさせるアタック感のある作風が特徴ですよね。
jjj:そうですね。親が80’Sのコンピを沢山持ってたのもあるし、ビートルズが好きだったっていうこともあるし。自分の場合は、サンプリングの元ネタをどれだけぶち壊してアガっていけるかって感じで作っているところがありますね。
— Febbくんのトラックからは若くして、渋いソウル好きなところがにじみ出てます。
Febb:そう。そういう音楽が好きだし、そういう風に言われるのも好きだし(笑)。トラックはホントに自分が聴きたいものを作るって感じじゃないですか。
jjj:ああ、それはあるかもね。俺、自分のトラックが好きで、外出る時もiPodで聴いちゃいますもん。
— そして、Kid Fresinoは、のちにミュージック・ビデオも作られた「Fla$hBackS」を今回提供してますよね。
Kid Fresino:その曲を作った時、「CURREN$Yがラップしたらいいな」って思ったんですけど、そんなのこちらから働きかけて実現するわけでもないから(笑)、Febbのソロ用にあげたんですけど、「やっぱり、Fla$hBackSで使うわ」ってことになったんです。ただ、俺のトラックは毎回全然違うっすね。
Febb:関係ないって感じですね(笑)。
Kid Fresino:その時、いいと思ったネタを好きなように持ってくる感じなんですよ。
Febb:でも、こうやってアルバムを出してみて、みんながいいって言ってくれるとは思わなくて、逆にビックリ、みたいな。だから、もっとヤバいもの作らないとなって。
— そして、3人ともトラックメイカーであると同時にラッパーでもあるわけですが、それぞれラップについてはどう考えてます?
Febb:サンプリングと同じことがラッパーにもいえると思うんですよ。全然たいしたこと言ってなくても、ラップが格好良かったら、そいつは格好いいんですよ。まぁ、でも、自分の場合、ラッパーっていう土俵にはいるんだろうけど、自分のことをラッパーだと意識することはないし、トラックによってラップも違えば、作品によって違う顔を見せられればって思っているんですけどね。
Kid Fresino:ただ、ラップを求められた時は誰よりもラッパーなところを見せたいって感じですかね。
— とはいえ、Kid Fresinoは、去年後半までラップをやったことがなかったわけですよね?
jjj:そうなんですよね。『FL$8KS』のレコーディングをやってる時、それまで全くラップをやってなかったKid Fresinoに俺のトラックのストックのうちに1曲を渡して、「お前、これでラップしろよ」って言ったんですよ。俺、ラップしないやつのラップがすごい好きで(笑)、とりあえず、やらせてみたら面白いことになるんじゃないかなって。だから、しつこくけしかけたら、去年の10月、11月にようやく録ることになって。それが俺のSoundCloudに上がってる「Come In」って曲なんですよ。
— さらにその曲がMr.PUGとSORAくんに伝わって、DOGEARから4月にソロ・デビューすることになった、と。すごい話ですよね。
jjj:しかも、Kid Fresinoのラップがどんどん出来ていったから、最終的には俺のトラック制作が追い抜かれて、トラックが完成するのを待たれる状態になったっていう(笑)。
Kid Fresino:でも、それまで俺はただのトラック・メイカーで、一度もリリックを書いたことがなかったから、まずは向こうのラッパーの真似をして、英語を使ってラップをやってみて、そこに格好いい日本語を足してるだけなんですけどね。
Febb:Kid Fresinoの作り方はそんな感じだよね。まぁ、でも、ラップにはそれぞれの形がありますからね。俺の場合、ラップをするんだったら、自分の思いを言いたいから、多角的に捉えられる一文を言い切るようなアプローチだし、Jの場合はまたタイプが違って、スムーズなラップをしますよね。
jjj:ただ、俺、もともと、自分のトラックでラップをするのが苦手で、他の人のトラックの方がやりやすかったりして。
— だから、「COWBOY」でFebbにラップさせたことがFla$hBackS始動のきっかけになったり、jjjのソロ・アルバム『ggg』がトラック集に近い作品になっていたりするわけですね。
jjj:そうっすね。『ggg』はインスト集というか、音源集って感じ。俺はそこまでがっつりラップをするわけではないから、こういう形態の方が出しやすいし、その第2弾も作りたいと思っているんですけどね」
Febb:あと、Jは色んなやつのトラックのプロデュースをしているので、それが今後、どんどん出ることになると思いますね」
— FebbくんはCRACKS BROTHERSとしての活動もあるんですよね?
Febb:CRACKS BROTHERSは、俺が自分のイベントにSperbを呼んで、そこから遊びようになって、始まったグループなんですよね。去年出した「Straight Rawlin’」は、ちゃんとラップを録った一番最初の作品なんですけど、CRACKS BROTHERSはDJやラッパーがいる集団というよりは流動的なチームで、これから参加する人も増えるだろうし、今後の作品も企み中ですね。
— それから、Kid Fresinoはラップを始めて半年経ってないなか、間もなくソロ・アルバムがリリースされるということですけど、トラックも自分で作ったんですか?
Kid Fresino:いや、俺のトラックは1曲だけ、あとはjjjですね。Fla$hBackSで「あのjjjってトラックメイカーは何なの?」って思ってるところに俺のソロが出て、jjjはめでたく日本の名プロデューサーの仲間入りするっていう、そういう流れを考えてますね。こないだ初めて1曲目から最後までちゃんと聴いてみたんですけど、もしかすると結構いいアルバムかもしれない。
Febb:うん、すごくいいと思いますね。みんな、びっくりしてくれって感じ。
— Fla$hBackSとしても次の作品は考えてます?
Febb:やると思いますよ。
Kid Fresino:Febbがソロを出してからですね。
Febb:そう。今、作ってて、7月くらいにリリースするつもりなんですよ。なので、引き続き、乞うご期待、要注目ってことで!