2008年に自身のブランドを立ち上げて以来、ロンドンを代表するデザイナーとして活躍しているクリストファー・レイバーン(Christopher Raeburn)。2011年に、[Victorinox(ビクトリノックス)]とのコラボレーションラインである『Remade in Switzerland』を発表。それが大きな話題となり、以降も[Victorinox]とは『PROTECT』と名付けられたカプセルコレクションを続けていた。
そんな彼が2013年の1月に[Victorinox]ファッション部門のアーティスティック・ディレクターに就任。今後の展開をどう考えているのか、話を聞いてきた。
フルコレクションはカプセルと違った刺激、楽しさがあります。
— コラボレーションラインである『Remade in Switzerland』、カプセルコレクションの『PROTECT』、そして今年の1月にはアーティスティック・ディレクターになられたわけですが、今まで[Victorinox]との関係を続けてきた感想を教えて下さい。
レイバーン:とても刺激的な関係を続けてこれたと思っています。最初のコラボレーションの評判が良く、次のコラボレーションでは新しいことをやろうということで『PROTECT』がスタートしました。その時からデザイン・コンサルタントという立場になり、カプセルとメインコレクションを上手くリンクさせてきました。そして今年1月に、アーティスティック・ディレクターになったという流れです。来年の2月には2014年のF/Wコレクションを発表する予定なのですが、このコレクションではAtoZ、最初から最後まで私がディレクションしたものになっています。お披露目が本当に楽しみです!
— 今までのカプセルコレクションよりも、フルコレクションを作り上げていく作業のほうがやはり大変だったのでしょうか。
レイバーン:もちろんフルコレクションをやることは複雑で大変なことなのですが、ニューヨークに才能豊かなチームがあり、そのチームと一緒に仕事をしているので問題はありません。今は1カ月のうち一週間以上はニューヨークにいます。カプセルの時は、基本的にロンドンにいて1人で仕事をしていたので、チームで大きな仕事をするのはとても刺激的で、カプセルとは違う楽しさがあります。
— ニューヨークのチームは何人ぐらいいらっしゃるんですか?
レイバーン:デザインスタジオは6人。マーケティングなどの別セクションを入れると30〜40人ぐらいですね。
— コレクションを作っていくうえで、何を出発点としていますか? 色や素材などのディテール、もしくは1つのアイテムから始まるのでしょうか。
レイバーン:アーティスティック・ディレクターの仕事は、まずコレクションのコンセプトを作るべきですね。この秋冬と2014年の春夏に関しては、FutureProof(将来を考えた、使い続けられる)というのがテーマ。ニューヨークのアメリカ自然史博物館で開催された「地球を超えて:未来の宇宙探検」という展示会にインスパイアされて生まれたものです。そのテーマに沿って生地やカラーをデザインチームと話し合いながら決めていくことになります。
— [Victorinox]のウエアは機能的な部分とデザインの良さのバランスが魅力だと思うんですが、そのバランスって凄く難しいことだと思うんです。どのように気をつけているものなんでしょうか。
レイバーン:[Victorinox]にはブランドとして130年の歴史があります。そしてスイスアーミーナイフというアイコンプロダクトも持っています。私が一番大事だと思っているのは、その歴史とニューテクノロジーのバランスをどうとるのかということです。“デザインとファンクション”というよりも“ヒストリーとテクノロジー”ということですね。“ヒストリーとテクノロジー”のバランスがとれれば、“デザインとファンクション”の両立も上手くいくと考えています。
— なるほど。“ヒストリーとテクノロジー”を表現すると機能的になるし、デザインもベーシックというか着やすいものになるんですね。
レイバーン:[Victorinox]のウエアはやはり長く着られることが大切なんです。ファストファッションではなく、タイムレスなものをブランドとしては作っていく必要があります。トレンドを取り入れることはもちろん重要なんですが、タイムレスでないと意味がない。バッグや時計、ナイフもそうなんですが、[Victorinox]のファンの方はそれを望んでいると思いますしね。
— インスピレーションを得るために、何か特別なことをしたり、どこかへ出かけるということはありますか?
レイバーン:インスピレーションを得るために何かをするということはないのかもしれないけれど、色々なものからインスピレーションを得ていますね。エキシビジョンもそうだし、本を読むこともそうだし。インスピレーションのためではなく、コンセプトを作ってチームに伝えるためのリサーチには時間をかけますね。
— アーティスティック・ディレクターとして、今後[Victorinox]のファッション部門をどのように展開していきたいですか?
レイバーン:ブランドをよりクオリティ、ヘリテージ、イノベーションを感じられるものにして、“本物”を作っていきたいですね。
— 2014年の春夏コレクションで気に入っている、キーになっているアイテムを教えて下さい。
レイバーン:リサイクルのペットボトルから作ったリップストップナイロンを使ったリバーシブルのジャケットですね。外側は撥水加工されていて、内側がジャージー素材、そしてパッカブル仕様になっています。一見シンプルだけど、着てもらうとその機能性を感じてもらえると思います。シンプルで使いやすいというのはスイスアーミーナイフと同じですよ!
— (実際に袖を通して)想像していたよりだいぶ軽いです!それからただリバーシブルっていうんじゃなくて、内側のほうもしっかり作り込まれていて、どちらを表にしても良さそうです。
レイバーン:リバーシブルのジャケットなのに凄く軽量なんです!だからとても快適に着てもらえると思いますよ。せっかくのパッカブルも、軽くないと持ち歩かなくなってしまいますからね。
— 日本のファッションシーンについて思っていることを教えて下さい。それから好きな場所があればそれも教えて下さい。
レイバーン:今回で日本を訪れたのは6度目なんですが、日本のファッションが面白いのはトレンドがひとつじゃないこと。様々なスタイルやプロダクトが同時にトレンドになるのが面白いと思いますね。それから日本の雑誌が好きで、毎回お土産に買って帰ります(笑)場所は渋谷と中目黒かな。クールなショップが多いですよね。中目黒はご飯も美味しい!
— 最後に日本の[Victorinox]ファンにメッセージをお願いします。
レイバーン:[Victorinox]のウエアをぜひお店で着てみて欲しいです。タイムレスでユニーク、そしてクオリティを求める人に満足してもらえるものになっていると思いますので。
【お問い合わせ】
ビクトリノックス・ジャパン
Tel:03-3796-0593
http://www.victorinox.com/jp