UNITED ARROWS&SONS 〜 リニューアルしたユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館を徹底解剖!

by Mastered編集部

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ニューヨークをベースとした人気ファッション系フォトブログ「The Sartorialist」を手がけるスコット・シューマン(Scott Schuman)氏が、今回のリニューアルオープンを記念したレセプションパーティに合わせ、ユナイテッドアローズの招聘により待望の初来日!
ということで、以前から「The Sartorialist」の大ファンである我々は、ユナイテッドアローズについてはもちろん、原宿の印象などについてもたっぷりお話を伺ってきました。
しかも、ユナイテッドアローズ上級顧問…という前置きも不要なぐらい、ファッショニスタにはおなじみの存在である栗野宏文氏を交えた、豪華クロスインタビュー。必見です。

写真:RINTARO
文:石川トモユキ

ステータスやトレンドではなく、自分が思うことを正直に

— 今回初めて日本にいらしたわけですが、日本の街はいかがですか?

シューマン氏(以下敬称略):圧倒されますね。ブログが大変なのは、毎日やることがあるところです。毎日文章を書いて、写真を撮ってアップしてね。日本に来た初日に撮った写真をいくつかブログに載せたら、誰かが「あなたは日本のことをぜんぜん知らないですね。もっとかっこいい人がいますよ」というコメントをくれたんです。でもそれはそうだと言うか、まだ日本に一日しかいないわけですから。本当に色んなスタイルがあってとても複雑で、それに圧倒されています。とても魅力的ですよ。何度も来るにはどうしたらいいか考えなくちゃいけないな、と思ってます。

— 日本で見つけたもので何か変なものはありましたか? 例えばブログで触れていたポカリスエット→参照のような。

シューマン:変なもの、そうですね…。ポカリスエットはただの冗談で載せたんですけど、その冗談がわからない人も多かったです。特にヨーロッパの人ですね。そのポストでは「ご存知のように僕はアメリカ人だから、できるだけ自然で健康的なものを食べるようにしてます。ポカリスエットに入ってる汗が人工的なものじゃない、オーガニックな汗だといいんですが」って書いたんですね。わかりやすいジョークだと思うんですけど。そうしたらヨーロッパの人から「どうして他の国のことをどうこう言うんだ」みたいに言われてしまって…。
まあそれはそれとして、変なものでしたよね。うーん、いや、変というか違いがあるだけですね。僕が日本を魅力的だと思ったのは、文化的なリファレンスになっているものがまったく違うからなんですね。美しいものに関するコンセプトが、アメリカやヨーロッパとは全く異なりますね。細かいところでも。昨日も話していたんですが、日本の女の子はハイヒールを履いてすごく短いスカートを穿いていますよね。もしイタリアなどでそのような格好をしている人がいたらセクシーに見えると思うんですが、日本ではなぜかかわいく見せることができているんですね。セクシーじゃなくてかわいい。そういうのは変とかおかしいとかではなくて、理解したいと思いますね。だから僕の写真にも、そういう部分が誠実に写ってるといいなと思います。どうして違うのか興味があるし、それを理解したいと思っているからこそ色んなところへ行ってるんですよね。そうすることでいろいろなものを比較対象にすることができますから。長い答えになってしまいましたが。

— 原宿を歩いている人たちのイメージはいかがですか?ファッション的に。

「The Sartorialist」に掲載された中村氏。

シューマン:海外の人が認識している日本のストリートスタイルと、実際のスタイルには違いがあると思います。海外で見ることのできる原宿の写真は、ほとんどの場合すごく奇抜な格好をした人が写ってますよね。写真を撮る時はそういう人に目が行きやすいからだと思いますが。だから僕はもっと幅広い、いつも撮られているような人たちではない人を撮りたかったんです。昨日青い帽子に白いシャツを着た男の人の写真をアップしたんですが、ユナイテッドアローズで働いているっていうことを知らなかったんですよ(編集注:中村隆一氏のこと。→参照。普通に声をかけて。なんというか、彼も原宿という街にいる人ですけど、こういう写真は見ないですよね。それが僕のブログが他とは違うところだと思います。いつも奇抜なファッションを撮ろうとは思わないですからね。僕自身変わった人ではないし、付き合っている彼女も普通の人ですし。何か自分が身近に感じられるものを撮りたいと思ってるんです。そうすることで日本のスタイルが本当はどういうものなのか、一般的に考えられているよりもっと複雑で多様なものなんだということを伝えることができるんじゃないかと思います。

— そういえば先ほど、日本の人は服はいいものを着ているけど髪に関してはあまり気をつかってないようだというようなことをおっしゃっていましたが…

シューマン:いや、そういう意味ではないんです。むしろものすごく気を使ってると思いますよ。ただ僕としては惹かれないというか。すごく大きくて変わったヘアスタイルにしてる人たちとか。それは僕の好みというか、さっきお話しした文化的なリファレンスの違いというところに行くんですが、美しさに対する考えが異なるわけです。正しいとか間違っているということではないですよね。個人的にはあまりいいと思わないので写真も撮りませんが。服はいいかもしれないですけどね。微妙なところです。ただそれはいまのトレンドであって、トレンドは変わりますよね。1年後にまた日本へ来たら、全く違う髪型をしてるはずですよ。
あと日本のストリートスタイルについて、僕のブログには「日本のスタイルは素晴らしい。すごくユニークでなんでもありだ。なんでも好きなように着ている」とコメントをくれる人がたくさんいるんですけど、それは違うと思います。何に対してもオープンで、なんでも取り入れているのは事実です。海外のものからスポーツから、なんでもですね。これは他のどの国よりも顕著かもしれません。ただ、一度それがトレンドになると、みんながそういう格好をする。個性もあるけど、トレンドの力がとても大きいですね。例えばカンカン帽ですけど、いまみんなあれをかぶってますよね。本当にいろいろなスタイルがありますが、一度それがトレンドになると一気に広がる。でも、ヨーロッパとかアメリカにはカンカン帽をかぶった女の子はいませんので、とても個性的に見えます。日本のトレンドは他とはずいぶん違うんですよね。

— 地下に新しくできた「ユナイテッドアローズ&サンズ」はいかがでしたか?

スコット・シューマン氏。

シューマン:素晴らしいです。すごくかっこいいですね。日本にはずっと来たくてオファーもたくさんありました。どこからとは言えませんが。ただユナイテッドアローズからのお誘いが一番しっくり来るものだったんですよね。僕が日本を理解するのにぴったりの人たちだと思いました。だから今回栗野さんからお話をいただいたときは、ばっちりだと思いましたよ。それに、僕は知らないうちにユナイテッドアローズの人たちをずっと撮っていたんです。POGGYとか。栗野さんは英語が上手ですけどPOGGYはほとんど喋れないし、お話する時間自体も短いから気づかなかったんですが、あとでみんな同じ会社の人たちなんだってことを知ったんですよ。だからユナイテッドアローズに呼んでもらって来るというのが、すごく自然な成り行きに思えました。しかもユナイテッドアローズにはPOGGYのようにとてもユニークなスタイルを持ってる人がいて、僕は大好きなんです。別に彼は映画俳優のようにハンサムな人というわけではないですが、すごくかっこよくてリスペクトしてます。

栗野氏(以下敬称略):とてもオリジナルですよね。

シューマン:その通りです。僕がリスペクトするのは、自分のスタイルをもっと大きなフォーマットに転換することができる人なんです。例えばフランス版「ヴォーグ」編集長のカリーヌ・ロワトフェルドですが、あの雑誌は彼女そのものと言ってもいいぐらい、彼女が心をこめて作っています。それと同じように、あの地下のフロアもPOGGYがプロデュースしたっていうことがわかるんです。商業的に、ただ新しいスペースを見つけてこのデザイナーを使って、というのではない。アメリカではそういうのが多いんですけどね。ただ有名なデザイナーを使えばいいみたいなのが。

栗野:トレンドだけを追いかるようなやり方ですね。

シューマン:そう、そうやって名前を売ろうとしてるんです。ここも当然デザイナーの方が関わっていますが、POGGYの存在がちゃんと感じられます。僕はもともとショールームを持っていて15年もいろんなお店とやり取りをしてましたから、そういったことにはとても敏感なんです。「買い物体験」みたいなことにですね。ですのであのフロアに入った時はとてもよくできていると思いましたよ。好き嫌いは人それぞれですが、彼ならではの視点があることはみんな認めるでしょう。最近ではその「視点を持つ」ということを怖がりがちなんです。売上げが落ちるのではないかと心配してしまい、積極的になれずにいるんです。

— 使われているインテリアはどうでしたか?

シューマン:大好きですよ。DJブースがあるところなんか、僕の兄の部屋を思い出しました。そこでかかっていた音楽とか。入った瞬間にこういうライフスタイルを暮らしたいと思わせるような場所ですね。例えばパリのコレットもそうですが、そう思わせるお店があります。あのフロアのいいところの一つは、広がりの可能性があることですね。個人のビジョンを自分以外の人に伝えて、それをほしいと思わせるというのは本当に難しいことだと思いますので。

— 先日はレセプションがありました。日本のファッション業界で働く人たちがたくさん来ていましたが、その人たちのことはどう思いましたか?

シューマン:みなさんクールでしたね。照明が暗くて写真を撮れなかったのが残念でした。どこに行ってもものすごくかっこいい人が少しいて、あとのほとんどはまあまあなんですが、僕はいつもその数少ない方の人たちを撮りたいと思ってるんです。なんかこう、マジックを感じる人を。そいう人の写真には見た人をインスパイアする力があるんです。レセプションにはそういう人たちがたくさんいました。例えばあのネクタイを作っている…

フェアファックス 慶伊氏。

栗野:フェアファックスの慶伊社長ですね。

シューマン:そうそう。彼の写真を撮ったんですが→参照、存在感がすごいんです。写真から目を逸らせないですよね。「ああいう服を着たい」ではなくて、「彼のようになりたい」と思わせる。写真、見ましたか? 素晴らしい笑顔ですごくカリスマ性があって。だから僕は写真を撮ってるんです。彼のような服が欲しいとは思わないんですが、あのあふれ出てる自信にやられますね。一番背が高いわけでもハンサムなわけでもないですが、すごいカリスマを感じます。あのパーティにはそういう人たちがたくさんいました。それを写真におさめて世界中の人とシェアするのがとても楽しいんです。

栗野:一昨日はそのかっこいい人たちの率が高かったんですね。

シューマン:そうです。例えばベルリンにはあんなにたくさんいませんよ。文化的なものなのかどうかわかりませんが、日本のショップにある服のデザイン…いや、デザインというよりもスタイルかな。デザインは、ヨウジヤマモトとか、普通のショップにある服とはちょっと違いますからね。日本のモダンなスタイルは、デザインのいろいろな要素をうまく遊んでいると思います。色のパターン、素材、形、ディテール。だからこの前のパーティのようなところに行くと本当にたくさんのバリエーションがあります。自分が着るかどうかは別にして、そういうのを覚えておくために写真を撮っているとも言えますね。そういう写真を撮りたいと思わせる人がたくさんいました。ベルリンではみんな黒で同じような靴を履いてという感じですから、それだとちょっとつまらないですよね。バラエティが少なくて、みんな安全策をとっているようで。

栗野:東京はバラエティに富んでいると。

シューマン:そうです。

栗野:知り合ってから3、4年になりますが、ブログはいつごろ始めたんですか?

シューマン:2005年です。

栗野:じゃあ5年前ですね。

シューマン:そうですね、そのぐらいです。

栗野:どうしてやろうと思ったんですか?

シューマン:雑誌なんかを見ていると…例えばアメリカ版「GQ」ですが、いい写真はありますけど結局大きな会社の広告なんですよね。それがだんだんと形式化していってる。もちろん「GQ」や他のファッション雑誌もとても好きですが、街中ではそういうファッション雑誌に載っているような格好をしてるわけではないけど、かっこいい人たちがいます。「GQ」はアメリカの嗜好に応じた誌面を作っていますよね。ニューヨークのイタリア系の人たちの中にはお洒落な人がたくさんいるんですけど、「GQ」には反映されません。例えば、街で見た人のパンツを参考にして着こなそうと思ったとしますよね。丈の長さはどれくらいだったかなとか、覚えておきたいじゃないですか。そういうごく個人的な理由でした。ただ同時に、写真としてもちゃんとしたものを撮りたいというのもありました。単にその人の服や靴のブランドを書くだけじゃなくて、その人を見た時のロマンチックな思いも伝えたかったんです。僕はもちろんファッションが好きなんですが、写真には服だけじゃなくてその人の持つ雰囲気や美しさがとらえられているといいなと思っています。見る人を引きつけるようなね。ストリートスタイルを扱っているサイトの多くは、ただ立っている人を撮って何を着ているか載せるだけですけど。

栗野:ジャケットはどこので、パンツはここので、みたいにね。

シューマン:そうなんです。あとパーソナリティが感じられないんですよね。僕が撮った写真で、カミシダさんでしたっけ…?

カミシダさん…ではなく鴨志田氏。

栗野:鴨志田ですね。(編集注:ユナイテッドアローズ クリエイティブディレクター 鴨志田康人氏 →参照

シューマン:そうそう。楽に座って楽しそうに笑ってて、その姿がもうばっちり彼自身なんですよね。立っている写真を撮って何を着てるか書くこともできますけど、でも彼の写真ですから。とても魅力的な人で、あの写真を見ているとこの人のことをもっと知りたくなる。どんな靴を履いてるかを知るためではなしに、もっとよく写真を見たいと思わせますよね。もしつまらない写真だったら靴だけに注意がいってしまいますが。僕が撮りたいのは彼のパーソナリティを含めたすべてをおさめた写真なんです。「この人かっこいいな、靴もいいな」みたいな。だからコンセプトはけっこう単純なんです。

栗野:ブログを始めたのは自然なことだったんですね。

シューマン:僕がやり始めたころは、お金を稼いでいるようなブログはどこにもありませんでした。だから僕も本当に好きで始めたんですよね。いまは僕などがいるので、ブログをやることで影響を与えたり、ファッションショーで最前列に座ったり、それで食べてもいけることがわかっていますが、僕が始めたころはそうではなかったんです。僕のブログが他と違っているのは、本当に自分がいいと思うものしか載せていないし、それを誠実に一貫して続けているからだと思います。

栗野:いまスコットさんが言ったように、ブランドや商業的な理由、広告、そういったお金儲けではなくて、ご自身の理由や好奇心で続けているわけですよね。もっと人間的な理由というか。僕はそこが好きなんですね。だから日本にお呼びしたいと思ったんです。スコットさん、鴨志田、POGGY、僕、みんな同じスピリットを持っているんだと思います。

文化服装学院についてのブログ記事。

シューマン:僕もそう思います。そういうとても自然なコラボレーションで日本に来れたのはよかったです。信頼関係があって生まれたわけですからね。世界中からオファーをいただいてましたので、いつか必ず日本に来るのはわかってましたから。この後もオーストラリアへ行きますしね。ベストなタイミングが来るまで待っていたんです。昨日文化服装学院に行った時の写真をアップしたんですが→参照、何を着ているとかは書いてません。それよりも若い学生たちのクリエイティヴな精神や、そのロマンチックなところを伝えたかったんです。僕も同じような学校に行ってましたから、彼らのことがよくわかるんです。

栗野:それで白黒の写真だったんですね。ロマンチックな雰囲気を出すために。

シューマン:そうですね、それと照明のせいでカラーで撮ると黄色が強くなりすぎてしまったので。白黒の方が肌の質感がきれいに出ました。確かに白黒の方がロマンチックというのもありますね。ファッションの専門学校に行くということは、学校でクリエイティヴだったり面白いものをずっと作るということですよね。どれだけの人たちがクリエイティヴな仕事に就けているのかを考えると、それがすごくロマンチックだと思うんです。そういうのを写真におさめたかったですね。

栗野:そういう精神を。

シューマン:そうですね。

栗野:ファッション関係の学校に通ってたんですか?

シューマン:僕が行っていたインディアナ大学は普通の大学ですけど、そこでアパレル・マーチャンダイジングの授業をとっていたんです。あとコスチューム・コンストラクションというクラスではチュチュを作ったり、バレエやオペラの衣装を作りました。テーラーの授業もあって、パターンの作成からスーツを一着仕立てるなんてこともしました。ボタンホールをひとつずつ作ったり。だからテーラーに関しては愛着がありますね。ステータスではないんです。高いスーツだからどうとかではなく、職人の技に惹かれるんですね。僕はいつも外で飛び回る暮らしをしてますので、部屋で黙々と素晴らしいスーツやドレスを作るというのはとてもロマンチックだと思うんです。

おなじみのユナイテッドアローズ上級顧問・クリエイティブアドバイザー 栗野宏文氏。

栗野:職人的なところをリスペクトしている。だから服の仕立て(sartorial)に関することがすぐわかるんですね。

シューマン:そうですね、全部自分でやりましたから。文化に行ったときも、授業は日本語でしたが何を話しているのかよくわかりましたよ。学生に戻ったようで不思議な感じでした。ああやって勉強している学生を見れたのはとてもよかったです。大学に通っているとき、僕はファッションが好きでしたが、デザイナーではないということに気づきました。クリエイティヴだけどそっちの方面ではないと。ですからブログに写真を載せるということを始めて、ついに自分が大好きでロマンチックだと思うものを、自分ができるやり方で伝えることができるようになったと思いました。僕は写真家になるための勉強をしたわけではありませんが、いい写真を撮れていると思います。それは何を選んで撮っているかということが大きいですね。

栗野:好きなものを、リスペクトしているものを、ですね。

シューマン:そうですね。ああいう学校の学生であることがどういうことがわかってますので。例えば僕がスポーツをやっていたとしたら、ラスベガスのカウボーイたちが牛や馬を乗りこなしてる写真をうまく撮ることができるでしょう。いい写真を撮るには、被写体と同じ立場に自分を置くことができないといけないと思います。例えば、ちょうどこの前19歳の女の子の写真を撮ったんです。でも、日本語が話せないアメリカ人の男がいきなり「写真を撮らせてほしい」って言うわけですから、それが相手にとってどんなことかを考えて、怖がらせずに、リラックスした自然な状態で撮れるようにしなくてはいけないですよね。だから僕が感じているロマンチックなものというのは、その人を理解するためにつとめるということも含んでいるんです。コミュニケーションをとって、相手の立場になるというような。それがどうファッションに繋がるかというと、僕のブログを見ている人は高い服を着ているかどうかじゃないということに気づくと思うんですね。アメリカンアパレルでもいいんだと。それは、自分が誰であるかというコミュニケーションの方が大切だからです。僕はテーラーメイドの物が好きですが、ヴィンテージ物でも安い服でも、それでどうコミュニケートするかなんですね。僕のブログが人気になっているのは、僕がステータスやトレンドではなく、自分が思うことを正直に出していて、それを気に入ってくれているからだと思います。ただ、僕はファッションのこともちゃんとわかってやってますからね。コミュニケートしたくても、批評できる目を持ってないと信じてもらえないですよね。誠実であることだけではだめですが、いいスーツとそうでないスーツの違いもわかってますので。いろいろなデザインごとの違いとか。僕は手広くやりすぎてそれが他の仕事だと邪魔になるかもしれませんが、この仕事にはぴったりなんです。

— これからのユナイテッドアローズに期待することはなんですか?

シューマン:誰かにインスパイアされたときというのは、何も考えないでその人が驚かせてくれるのを楽しむ方がいいと思います。例えば僕はマーク・ジェイコブスのショーがとても好きなんですが、「こんなことをやってほしい」とは思わないんですね。なぜかというと、彼は僕たちが思いもよらないような早さで進化するからです。思いもつかない、しかも本当に素晴らしいものを見せてくれる。すごくリスペクトする仕事をしている人に対しては、次はどうとか考えずに、驚かせてくれるのを待つだけなんです。ユナイテッドアローズに対してもそういう気持ちですね。ここにはクリエイティヴなことをしている人がたくさんいますから、次に来る時も「ワオ!」ってなるようなものが見れると思っています。商品に限ったことではなく、体験としての買い物全般でですね。この部屋も照明やレイアウトをはじめ全体のつくりがとても美しいし、地下に行くと、若々しくて年上の兄弟やその友達と遊んでいるような気分になれる。買い物を体験として理解しているからできるんだと思います。新しいアイディアが見れるのを楽しみに待ってます。

— 最後に日本のファンに向けて何か一言お願いします。

シューマン:いまやっていることを続けてほしいですね。日本にはまた来たいです。とても興味深いと思ったのは、みんなが東京とか日本をもっと良くしようとしている感じがするところです。そして個性を出すことが認められていますよね。それはずっと続けてほしいです。ただカンカン帽のように、個性的だと思ってるかもしれないけど、人と同じになってしまっているものもありますけどね。ロンドンでも日本のスタイルはすごくよく認知されてますよ。日本の人が思っている以上に。いくつかのトレンドを追うのではなくて、個性的であり続けてほしいですね。でも、本当にみんな上手にファッションを楽しんでると思います。スノーボードとカウボーイを組み合わせたりとか。そういうクレイジーな合わせ方も僕は大好きです。かっこいいと思いますよ。

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