『エコへの取り組みとカジュアルな姿勢』野田晋作(ベイクルーズ マーケティング統括チーフディレクター)

by Mastered編集部

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人と人のつながり

— 話は変わりますが、こちらの服については?

野田:またエコとは全然違うんだけど、これも人との繋がりっていうのがあって。敦(編集部注:スタイリスト橋本敦氏)もそうだけど、中根ちゃん(編集部注:フリーランスPR中根吉浩氏)とか、田村くん(編集部注:セレクトショップ「7」ディレクター田村貴之氏)とか。
プレスだけやってたときは作り込みの仕事ってしなかったんだけど、今はそういう仕事もしつつ。例えばこの二村さん(編集部注:スタイリスト二村毅氏)のTシャツなんかは、生産(担当者)とスゴく話して、この色合いを出すことができたりとか。
今まではブランドも大きかったのでそれぞれ役割がしっかりしてて、そのなかでオレは(スタイリストさんに)貸し出しをしてどう見えるかとか、ウチのブランドをお客さんにどう見てもらうかとか、目線がそういうところだけだった。でも、今はいろんな目線で見れるようになってきてて、(North, East, South, West,の)ショップスタッフとかと話し合って、いろいろ細かい部分も見るようになってきてる。

— そういう風に今までに無い感じになってきて、仕事はより面白くなってきていますか?

野田:面白いよ。今まではキャッキャやってさ、ノリ的な部分で『(雑誌に)出して出して』だったりしたじゃん。

— そうですね。まぁ、そこにこそプレスの力量っていうのが現れるんですけど。

野田:それはそれですごい楽しかったんだけど、それはそれなわけ。
でも今はモノの見方も変わってるし、ひとつひとつの言葉に責任が必要だなって。今でもたまに下の子に言われるんだけど、オレが下にいた頃に感じた『このあいだと言ってること違うじゃないですか』みたいなのがあるわけ(笑)

— やられたことを、自らもやっちゃってると。

野田:オレは自分の言った言葉だからいくらでも訂正できると思ってるけど。自分の意志を変えるのが1番簡単だと思ってるから、人の意思を変えるよりも。だから、すごく軽いつもりで言葉を発しちゃうんだけど、その言葉を受け取る側にしてみたらすごい重いことなんだなって。だから、ちゃんと考えて言わないとな、自分の言った言葉に責任持たないとな、って。

— いまさらですか(笑)

野田:そう(笑)いまさらだけど。あと役員会なんかでも自分の意見が通るようになってきてるのね。で、その結果『じゃあ、お前それやってみろ』って。だから、おいそれと適当なこと言えなくなってきちゃった。それで結構熟考しちゃうと言うか、思慮深くなってきたね。
それで、ひとつだけオレが残念ていうか、難しいと思ってるのは、管理者になっちゃうと自分で意識しなくても偉そうになっちゃうの。
今まで接した人に、今までみたいな感じでは出来なくなってきてるような気がする。そこがジレンマ。管理者ってめんどくせぇなって。

— なんとなく分かります。

野田:『あれ? オレこの人とどうやって話してたっけな?』とか。敬語で話してたっけ、タメ語だったっけみたいな。

— はいはい。『どのチャンネルで接したんだっけ?』みたいな感じですよね。

野田:そうそうそう。会社にいるとマネージャーっていうチャンネルしか使わないわけじゃん。それこそ本当に久しぶりに会う人とかは『あれぇ??』ってなっちゃうの。それに最近、年上の人と会う機会も多くなってて。

例えばゴルフなんか、最初は趣味で会社の人間と遊びでやるぐらいだったんだけど、今ではいろんな人に誘われてコンペとかも出てて。そこにはいろんな会社の、同業他社の社長さんとか全然違うジャンルの方が来てて、すごいいろんな勉強をさせてもらってる。

普通だったら会えないじゃん、同業他社の社長さんなんて。
そういうのもゴルフやってなかったらなかったと思うし。なんかいろんな、みんなに感謝です。この場を借りて。

(一同笑)

野田氏の部署で手がけた<br>カタログの数々

野田氏の部署で手がけた
カタログの数々

野田:サーフィンとかもそうだし。やってなかったら、こんな人たちとは会ってなかっただろうな、って人はいっぱいいて。すごい仕事にも活きてるし。ずっとご一緒させてもらってるスタイリストさんがいるんだけど、今度初めてエディフィスのカタログを作ってもらってて。すごくイイのが出来上がった。それもやっぱりサーフィンしてなかったら、こういう話にまではならなかっただろうし。

自分が今ここに生きているのも、みんなのおかげだなって。最近とくにそう思うね。

(一同笑)

野田:そして、すげぇ涙もろい(笑)しょうがないよね。

— 僕もよく泣いてますね、すぐ感化されて。

野田:でも老けんの早いよね。(涙もろくなるのは)普通50歳ぐらいになってからっていう気がするのに。
こうやって話してみると… 気になってんのって、仕事っていうより人かもね。
繋がりとか、生きるって(笑)

— やっぱり悟ってますね(笑)

野田:でも、そういうことがすごく気になってる。今まで人生の表面のキレイな部分だけ見て、カジュアルに生きてきたかったんだけど。

— ひょうひょうとですよね。

野田:そう。あんま深いとこまで人と関わりたくなかったんだけど、最近そうでもないんだよね(笑)

— (笑)ガッツリ、みたいな。

野田:なんか結構大事だなぁ、心と心の繋がりって。

— 何か大きなきっかけがあったんですか? それとも自然と?

野田:なんかあったかなぁ…でもオレ、去年は仕事で死にそうになってた。忙しすぎて。もしかしたら、それがきっかけなのかもしれないけど。それこそいろんな事案・案件が重なっちゃって、結構ヤバくて。

— 忙しそうでバタバタしてましたもんね。そこを抜けて、ちょっと変わられました?

野田:そうかもね。作業的に忙しいって言うより、頭の中が忙しかった。それを抜けて、ふと思ったら視界が変わってた。スッキリしたなって、ずっと曇ってたのが。ていうのはあるかな。
この間もね、ニューヨーク行って。仕事でね。で、バイヤーならバイイングすればいいじゃない。でもプレスってリサーチくらいしかできない。バイヤーならバイイングすれば(仕事を)やった感があるんだけど、プレスとして写真撮ったりメモるくらいの「やった感」のない身のない出張ってヤダなって思ってて。そしたらたまたまなんだけど、ニューヨークに精通してる友達が同じタイミングで行くことが分かって。『じゃあ、メシでも食おうぜ』なんて話してたの。それで現地に着いて連絡したら、偶然にも同じホテルに泊まってて。

スパイク・リー監督と野田氏<br>羨ましいです…

スパイク・リー監督と野田氏
羨ましいです…

— すごい偶然ですね。

野田:それでメシ食いながら、仕事の話とかしてたら『明日、撮影でエリック・ヘイズ(Eric Haze)に会う。あとスパイク・リー(Spike Lee)にも会う』って言われて『一緒に来る?』って聞かれたから『もちろん行く』って。そしたら仲の良い編集者なんかも紹介してくれて、いっぱい仕事になっちゃって。それも繋がりがなかったら、そんなこともなかっただろうし。
で、スパイク・リーと一緒に撮ってきた。スタジオで撮影の合間に。超気難しい感じだった。

— そうなんですね。でも羨ましいなぁ。

野田:こういうのもホント繋がりで、ありがたいなぁって。
例えば、今の若い子たちってもっと即物的じゃない。で、そういう時代に対しての危機感もあるのかもね、自分自身が。なんか繋がりがすごい希薄になってて、ニュース見ても隣に住んでる誰だか知らない人が殺されちゃったりだとか、子供が親殺したりだとか、マン喫で寝泊まりしてる人たちがいて一人寂しく死んでいくとか。そういうのがここ最近でインプットされてるでしょ?
そんななか自分が幸せでいられるのって、みんながいるからだなって。
泣いていいかな?

(一同笑)

野田:そういうのが、あんのかもね? で、仕事も今までドラスティックじゃないけどカジュアルに捉えてたけど、すごく大事だなって思うように。

— キレイにまとめてきましたね(笑)

野田:一応まとめ上手なんで(笑)そういうのがあるのかなって、今話してて思ったかな。
アナログな繋がりがどんどん希薄になってるから。eコマースやっといて言うのもなんなんだけど、ネットで洋服完結させちゃうのって文化が生まれないな、って。即物的だなと思っちゃって。結局、来て見て触って、話して、さらに着てみて、素材感も分かって納得した上で洋服って買わないと、ダメだなぁっと。

— 今までこの企画で何人かと話してますが、全員その話になってますよ。
まぁ、でもツールとして便利なのは間違いないんですよね。買いに行けない事情とかあるでしょうし。

野田:でも揺り戻しって、時代にはあるから。アナログでも面白い物は絶対残ると思う。マーケティングに振り回されてない面白い雑誌はなくならないと思うし。カタログなんかも絶対に残るはず。

— そうですね。とりあえず、今の僕らはネットでやれるおもしろい事を追求していきたいと思ってます。
個人的に将来紙の媒体もやりたいと思ってますが、今はとにかくネットの可能性をもっと探りたいです。

野田:すごく期待してます、Cluster。

— ありがとうございます。そして、ご協力ありがとうございました。
あまりにもキレイにまとまり過ぎたんで、イイ話はバッサリ切らせてもらいますけど(笑)

いやぁ〜、イイ話を聞くことができました。
とくに「人とのつながり」という部分では、まさにClusterがやりたいことを地でいくような話題でした。
彼とはこんな話をしたこともなかったし、ちょっと予想外だったんですが、僕にとってもすごく新鮮でした。
そしてあらためて、彼は今後もどんどん出世していくんだろうなと思ってしまいました。
とりあえず次会ったときに『どうやって話してたっけな?』とは思われない存在でいたいですね(笑)

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