シーズンテーマは”THE ERA”。
ルールに囚われることなく、自由に、カラフルにメロディーを奏でていた1960年代後半のアメリカを生きた黒人たち。中でも本コレクションにおいて最も重要な役割を果たしていたのが、The Beatlesの「5番目のメンバー」と形容されることもあるBilly Preston(ビリー・プレストン)だ。彼らの創り出したカラフルな音楽や装い、ファッションへの真摯な眼差しから大きな影響を受けた今季のコレクションには、宮下自身が捕らえようとしても捕らえることのできない、今この時代への複雑な想いが表現されている。
「洋服に着る順序なんてあるのだろうか?」。以前から宮下が持ち続けていたそんな疑問と対峙することから、多くの新しい洋服が誕生。通常はバックにくるものがフロントへと配置された、バックリバース仕様に見立てた洋服が数多くラインナップされている。1960年代を強く意識したブラックスーツ、オッドベスト、ラッフルシャツ、多様なセーター、パファーベストや6ポケットジーンズ。黒と白をベースにしながらも、黒人たちのフェイバリットカラーの数々が、コレクション全体を鮮やかに彩る。「物凄くカラフルなメロディーでした。ブラックスーツでさえも、どこかカラフルに映るように創ったのかもしれません」と宮下は語る。
歩いている姿だけではなく、自転車に乗っている前傾姿勢の姿をも考慮することから生まれたバルーンシルエットの洋服もまた、今シーズンを代表するもの。フロントの丈は短く、バックの丈は長く設定することにより、球体のようなシルエットを創出。MA-1、B-3、ブレザーやダッフルコートなど、見る角度によって大きく景色が変容するものに仕上がっている。また、バックを対角線状に横切るジップや、右腰の裏側に潜む大きなポケットも特筆すべきディテール。
2021年秋冬コレクション以来の映像作品での発表となった今シーズン。ライブをやめてしまった後、編集を駆使してアルバムを創り上げていた頃のThe Beatlesの姿になぞらえて、同様の手法を映像制作へと取り入れた。ヴォーカルを入れた歌もオリジナルで制作しており、こちらには宮下が書き留めた散文やワードを紡ぎ合わせることによって誕生した歌詞も組み込まれている。
「洋服にはある程度の無駄は必要」と語る宮下。「必要ないものが必要ない」という昨今の考えに対しての懐疑的な姿勢は、人種、性別、年齢などを超越し、全ての”カラー”の人たちに向けた宮下なりの服作りへと帰結している。
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