DJ NOBUが語る、新作『Nuit Noire』とDJ哲学。

by Mastered編集部

DJ NOBUのストイックなDJへの姿勢、それを知らしめるのは、当たり前ではあるが、実はこうしたインタヴューよりも現場であり、ミックスCDであり、そのサウンドである。これまでもさまざまなインタヴューで、その哲学はさまざまな形で語られているがやはりそのプレイを前にしたときに最もダイレクトに感じることができるはずだ。

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Photo:Ryu Kasai
Text:Yusuke Kawamura

DJ NOBUのストイックなDJへの姿勢、それを知らしめるのは、当たり前ではあるが、実はこうしたインタヴューよりも現場であり、ミックスCDであり、そのサウンドである。これまでもさまざまなインタヴューで、その哲学はさまざまな形で語られているがやはりそのプレイを前にしたときに最もダイレクトに感じることができるはずだ。

そんな彼が2年ぶりとなるミックスCD『Nuit Noire』をリリースした。作品に関しては、この原稿の後半で触れようと思っているのだが、もちろんここにも彼のDJ哲学はしっかりと刻み混まれ、そのサウンドの迫力たるや凄まじい。

ご存知のようにdommuneやBoiler Room、MixcloudやSoundcloud、各種Podcastなどなど、DJミックスは、過去のアーカイヴなど時間軸すら横断してほぼ「無料」で聴ける時代である。この時代、ただでさえCDが売れないという時代に、そうした強豪の多いミックスCDというプロダクトを、さまざまなコストをかけてリリースするというのはなかなか狭き門である。そのコストに見合うだけのものをコンスタントにリリース”できる”というのは、それだけである種の人気、それ以上に作品として残すべき”表現”があると、本人以外の多くの人々がジャッジした結果でもある。

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もちろん、『Nuit Noire』はそのジャッジをしっかりと通り抜けたミックスだ。こうした作品へと直接的に結びつくのは、やはりそれを裏打ちするそのDJ哲学と言えるだろう。

「DJって人を踊らせるっていうのはもちろんありだけど、音楽的な表現として意識しているDJって実は日本は本当に少ないと思う。DJを長い間やってたら、表現としての意識に到達するところってあると思うんだけど、なぜかそうならない人も多い。みんなを楽しませるっていうのは大前提だけどね、そのなかでより深く掘り下げた表現とかそういうことを自分が目指してる」(DJ NOBU、以下「」内は本稿のために行ったインタヴューでの発言より)

こうした言葉は、少なくともここ5~6年は彼がたびだびミックスCDのリリースやその他のタイミングでのインタヴューで、自身のDJプレイの核心 / 確信としてつねに語っている言葉だ。

こうした言葉に裏打ちされたDJへの表現欲求は絶えず自身をストイックに追い立て、「悩むよ、悩まない人がうらやましいと思うもん」と自身でいうほど現在でも試行錯誤を繰り返しさらなる表現の高みを目指している。

こうしたストイックな態度、例えば、ここ数年、その表現の直接のコントローラーとなる、DJプレイ時の音楽再生方法の変化、そこへの態度にも表れている。ここ最近、彼のプレイはターンテーブル+ヴァイナルという、バック・トゥ・ベーシックなDJミックスのスタイルはもちろんのこと、CDJ+データ(もちろんMP3などではない、ロスレス・データ)というスタイル、もしくはそれらの混在というセットでのプレイが圧倒的に多くなっている。

「レコードでしか出せないグルーヴって、もちろんいまでもあると思うんだけど、最初はデジタルっていうフォーマットを使うことによって、自分が納得するグルーヴがCDJでは作れなかった。それはすごく悩んだ。馴染むまで時間がかかったけど。たぶん聴いてる人たちはあまり気づかないと思うんだけど、自分のなかで納得がいくかいかないかっていうフィーリング、なじませ方は違う」

ここ数年、さながら狂想曲となっているアナログ・バブルとは違ったアナログ・レコードの美学というものはDJカルチャーにはあると思うのだが、もちろんそこへのリスペクトはそのままに、彼は音楽、そのものへの追求のためデジタル・データでのDJにも柔軟に、貪欲に手を広げたのだ。

「デジタルの良さは、まずたくさん曲を管理できるっていうことだよね。やっぱりレコードだけだと一度に持ち運べる絶対量がデータに比べて減るし、いますごいお金もかかるし、ある程度選択肢が限定されてしまうものが、データの場合だとプレイの伸びしろがすごく増えるじゃん。デジタルのデータだと、たぶん5倍くらい増えていると思う」

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こうした表現への欲求に根ざしたデジタル・データでのDJは、2年前に、ある種、ミックスCDとしては少々風変わりなミックスCD『Crustal Movement Volume 01 – Dream Into Dream』を生むことになる。

2010年代に入ってから、テクノとそれを取り巻く、インダストリアル・リヴァイヴァルやロウ・ハウス、レフトフィールドな電子音響、そこへと接続する電子実験音楽の再評価がある。それをいち早くまとめたミックスCDと言えるだろう。いわゆる「ダンスフロアの実況録音」から、数歩その外へと歩み出し、まさにDJとして音楽表現することを前面に打ち出したミックスCDはそれなりに賛否を分けた内容だったという。しかし、こうした作品を出したことで、海外を含めて音楽表現に関して志を同じくするDJやアーティストたちとの交流も増えたのだという。

こうした変化のなかで自身のその活動の根源でもある、地元、千葉でスタートし、いまや日本を代表するアンダーグラウンド・パーティになった『Future Terror』の意義も多少ならずも変わってきているという。

「なんにも予備知識のなさそうな子たちがイベントに来て、その子達が、あのチャールズ・コーエン(※注)のライヴ観て「かっこいい!」ってなっていて。そういうのがすごい大事じゃん。なにもわけわからなくても、そこに連れてきてなにかを感じてくれたら、こっちは最高なわけで。いろんな人が体験を共有できるっていうのはやっぱりいいことだと思うじゃないですか」

こうした感覚は、もちろん前述のミックスCD『Dream Into Dream』にも同様のものを感じるところだ。積極的に音楽の楽しみ方をプレゼンする、それを自らの表現とすること。それこそが彼にとってのDJなのだ。

「”DJの意味ってなんだろう?”ってなるじゃん、人の曲をただかけるだけじゃ意味がないわけじゃん。素材をよりいっそうよく楽しませる人がDJだし、それは料理とかと一緒だと思うんだけど。素材の持っている良さ以上のものを引き出さないとDJって意味がないじゃん」

さて、話は戻るがこうした強い意志の下で鍛錬されたミックスCD『Nuit Noire』は、ダンスから少々離れた『Dream Into Dream』からはもう少しダンス寄りに振り戻した作品で、やはりここ数年のロウ・ハウス~インダストリアル系のディープ・エレクトロニクスから、ミニマルへと展開していく。

「CDを出すこと自体が”拡げる”っていう行為……自分のプレイを知らなかった人たち、自分のプレイが好きじゃなかった人たちの手にも渡るように”拡げる”という作業でもあると思うんですよ。だから、そういったCDの存在意義を考えて、自分が普段DJでやっていることから、ダンス寄りのスタイルのなかで、それでいてパーソナルな表現の部分というのを素直に出せた感じかな」

本作は聴けば聴くほど不思議なCDで、まるでさまざまな食材が合わさったスープのような感触。さらっと食べるのであればさらっと食べたことがない味だが美味い。しかしよくよく注意すると味わうと、それぞれの個別の食材の妙が滲み出てくる。

音楽的にはエレクトロニック・ミュージックの現在、そのレフトフィールドをダンス・フロアやDJカルチャーという視座から切り取ったもの。言ってしまえば『Dream Into Dream』をアップデートさせ、若干軸足をダンサブルに移動させたといった感覚だろうか。

「テクノーーいま自分がこれだと思う、世界の現場で起っている事をやろうと。もちろん、テクノって言っても人によってアンテナをどこに張るかで違ってると思うから」

特に中盤から後半へと至る、マシン・グルーヴの変容ーーその変化のタイミングを知らせるように配置された楽曲とその後キープされるグルーヴは絶妙なものがある。レイヤーの奥底から聴こえる次なる楽曲の芽吹きがいつしか大木となり、他の楽曲とともに森になり、その壮大なグルーヴを奏でる様はまさに圧巻としか言いようがない。「俺のなかでこういう使い方しかない」という自身の言葉に嘘はない。まさにDJというフォーマットで表現するという彼の哲学に嘘はない。

本作について、苦労した部分を聞いたところ即答で「ない」との答えが返ってきた。答えはつねに悩んで、考えているからだそうで、選曲に関しても同様のようだ。

「そこのコンセプトは”なにも意識せずに”だよね。でも、目の前に人がいないわけだから、自分が好きにDJをやるとこうなるっていうか」

まさに「DJ NOBU、恐るべし」である。

(※注)活動暦40年超の米フィラデルフィアの電子音楽家。ラビ・ビアイニ(akaモルフォシス)によってその音源が発掘され、彼のレーベルから リイシューされた作品集などで、突如現在のテクノ・シーンで注目を集めた。1973年に25台程度しか生産されなかったという、まさに幻のシンセサイザーのみを駆使して楽曲を作成、ライヴを行う。2014年9月の『Future Terror』で来日ライヴを行った。

【DJ NOBU『Nuit Noire』】
発売中
レーベル:Bitta / Octave-Lab
フォーマット:CD(デジパック仕様)
収録曲目:全18曲
品番:BITTA10002
定価:2,400円 + 税
http://www.futureterror.net/news/dj_nobu/dj_nobu_nuit_noir_mix_cd.html

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